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第13章 建国

第358話 築城開始

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エルヴィーノは急遽アルコンと同族が居る場所に転移した。

「やぁアルコン、精が出るなぁ」
「おお、モンドリアン。どうした?」

アルコンは同族の数人を引き連れて港町予定の場所で今後の建築の為に仮設住宅を作っていた。

「あのさぁ、アルコン。実は重要な懸案があって、みんなを連れて一度ノタルム国に戻って欲しいんだ」
「どうした? 何か有ったのか?」
「ああ、内容は言えないけど、至急準備して欲しい」
「・・・解かった」

何か言いたそうな顔のアルコンだったが、黙って年下の、親友の孫の指示に従ってくれた。

暫らくしてアルコン達を見送った後エルヴィーノは念話した。
(コラソ~ン! 準備出来たぞぉぉ!!)
(わかりましたぁぁぁ!!)

簡単なやり取りで全て理解する2人だ。

「お前達、準備は良いか?」
「「「はっ」」」
「ふむ。では第一段階を速やかに実行せよ」


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


翌日。

(モンドリアンさ~ん、起きてますかぁ!?)
(・・・あ、ああ、起きてるよコラソン)
(では早速ですがこちらに来れますか?)
(・・・了解、10分後に)

朝日の昇り切らない内に叩き起こされたエルヴィーノは身支度をして建国予定地に転移した。

(何もこんな朝早くから起こさなくても・・・)

声にも念話にも出さない心の声で文句を言い眠い目を擦りながら転移したエルヴィーノだ。
するとどうだろう、昨日まで見ていた風景と違う景色が視界に入った。

「あれっ? もう城の土台は作ったのか?」
「ええ、”地味な作業”なので先に済ませましたよモンドリアンさん」

良く見ると、湖の先には石造りの堰堤えんていも有り、城の土台の石垣から城下町予定地に石橋が繋がっており、岸辺には公園の様な牧草地帯と石畳も出来ていた。

本当はどのようにして湖の中に城を作るのか興味が有ったが、出来てしまった物は仕方がないとあきらめたエルヴィーノだった。

後でコラソンに聞くと、カマラダとバレンティアが大活躍し、魔法で水面を割り石垣の空間を確保してから土を掘り土台となる石積みを重ねていったらしい。
湖面から20m上を城の一階に設定にして陸地からは石橋を組み上げる。
石垣の一角には螺旋状に階段を作り船での往来も可能とした。

と、説明したコラソンだが本当は、湖の水を全部抜き底も石畳にして水質に微生物から魚や水草に至るまで全てを作り替えたのだった。

そこに聞き覚えのある声がした。
「あら、お兄ちゃん早いのね」
「メルヴィ!! どうしたんだ?」
「私達のお城でしょ!? 一緒に見ようよ」
「ああ、そうだな」

どうしてこの場にメルヴィが現れたのか?
龍人と仲が良いのなら知らせる事もあるだろうと、如何わしい事では無いので問題視せずにその場をやり過ごした。

エルヴィーノは長年において妻達とのやり取りで、些細な言動が命取りになると”身を持って”実感しているので、妻達に対しては細心の注意を払って言葉を選んでいるのだった。

特に気を付けるのは第一夫人と元第二夫人だ。
元第3夫人はおおらかなので、言葉だけでは不問にしてくれる優しさを持っている。
仲良しの元第4夫人も同様だ。

などと考えているとコラソンが始まりの合図を送っていた。

前回同様に、空に浮かぶ黒い雲から一本の糸のように線が湖面の石垣に続いていた。
下から徐々に作られて行く居城だ。
この光景を他の者が見たらどのように思うのだろうか?
などと考えながらも無言でその光景を見守っていた。

エルヴィーノとメルヴィとコラソンは、ラソンが用意したであろう椅子に座り、インスティントの入れた紅茶を飲みながらバレンティアの操る石塊で積み上げられていく自分達の城を見ていた。

(しかし・・・ラソンにインスティントは立ったままなのに俺達は座って紅茶を飲んでても良いのかなぁ? )

今回は何故かフィドキアがヤル気を見せていて、空に浮かぶ石塊は全てフィドキアの魔素で浮かべているらしい。
一応カマラダは補助だそうだ。

居城の作成にはエルヴィーノの感覚で前回と同様の時間がかかったと感じられた。
明らかに小さい城のはずだが、同様の時間が必要な理由は”手が込んでいる”とコッソリとコラソンが教えてくれた。

石積みの土台から先端まで出来上がるのに数時間を要し、その後細かな外装の装飾を手掛けた後、城下街に取り掛かった。

居城から続く石橋の先に大聖堂が出来て、大通りを挟んで左右に五階建ての石の建物が同じ形で並んで行く。
湖寄りに大通り、建物を挟んで大通りと並ぶように建物と路地が数列並び、路地の間にも三階建ての建物が並んで行った。

驚く事に湖の上流から引いた水が、それぞれの建物に張り巡らされて上下水道が設置してあると言う。
高層階には建物に沿った水道に設置してある水車を利用して水が汲みあげられ快適な生活が期待できる。
細かい事だが水車はインスティントで、桶や縄などはラソンが用意したらしく複製して取り付けると聞いた。
当然だが城も同様だ。

そして今回の大聖堂は様式と作りはペンタガラマと同じだが、エルヴィーノが内緒でコラソンにお願いした内容が有った。

それは事前に他の龍人達同様にカマラダとバレンティアの彫像を作り崇拝の対象として欲しいとお願いしたのだった。

「どうしてですか、モンドリアンさん」
「バレンティアにはいつもお世話になっているし、これからは食糧の面でもカマラダにお世話になるからさ、”俺がいつでも”お礼が出来る様に大聖堂に作ってくれると助かるんだけどなぁ」

エルヴィーノの理由を聞いて二つ返事で納得してくれたコラソンだ。

「モンドリアンさん彼らの石像の件ですが、それぞれの神から言付かって来た事を言いますね」
「ええっ、ちょっ、ちょっと・・・」

「まずはカマラダからですが・・・生命を司るらん龍として教えを説きなさい。生命には優しさと他者への思いやり、友愛の加護を。慈悲無き者には海の怒りを持って償いがもたらされる」

(覚えきれるのか、これは・・)

「次にバレンティアですが・・・大地を起源とするへき龍として教えを説きなさい。大地は勇気と豊作の加護を。敵に立ち向かう勇気を与え多くの実りをもたらすが、日々の信仰を怠ると天災が訪れるであろう。以上です」

(まいった。最初の半分も思い出せん)

「どうですか? 」
「う、うん。良い感じだな・・・出来れば文字にしてあると、凄く助かるんだけど・・・」
「良いでしょう。ラソン!」

コラソンはラソンを呼んだ。

「カマラダとバレンティアの信仰内容をモンドリアンさんに書面で渡してあげてくれ」
「はい、畏まりました」
「あのさ、ラソン」
「教会の方は大丈夫よ。わたくしが認知していると伝えれば良いわ」
「ありがとう、助かる」

そこに良く知る2人が現れた。

「やぁモンドリアンさん。久しぶりだねぇ」
「アルセ・ティロに・・・ヴィオレタ・・・良く来てくれた」

ニコニコと2人が近づいて来た。
この2人が来た理由は察しが付いている。
前回同様に建物の装飾だ。




今回はどんな装飾なのか?
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