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第12章 戻ってから四度目の儀式

第350話 大魔王杯闘技大会その後8

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「じゃピラタ、二つ質問しよう」
「は、何なりと」
「ファルは”あの施設”に入り、まだ日が浅いらしい。今までの”教育費”など支払いがかなりの金額だと聞いているが・・・それはどうするつもりだ?」

即座に答えるピラタ。
「全額我が支払います」
「そうか。ではお前の事・・・話したのか?」

「・・・いいえ。まだです」
「今回はお前自身の事で拒まれる可能性があるが・・・」
「構いません!!」

真剣な表情のピラタだ。
「そうか。次は俺の援助は無いぞ」
「は!!」

エルヴィーノはシオンの顔を見た。
意を汲んでくれたのだろうシオンがキツイ制約を求めて来た。

「ピラタよ、我はともかく陛下に同じ過ちを見せる事など断じてあってはならん。そこで、もしもお前が以前の様な無様な醜態を晒したならば、陛下の許可を得ずとも我の判断でお前を四天王から除名し、ゲレミオからも除名するとしよう・・・良いな」

「・・・は、そのような結果にはならないと信じております」


その場は勢いで返事をしたピラタだったが、時が経つにつれ不安で一杯になっていた。
だが、今回は以前とは違った様だ。
人族の”ファル”に何度も”癒して”もらい、話しをする中で相談できる友達に頼るべきだと助言を受けていたからだ。

しかし内容は恋バナで、しかも相手は人族となれば同族で頼りになる者など居る訳も無く、数少ない人族の知り合いで割と打ち解けている者に相談したのだった。

それはアルモニア教の国王の親衛隊だ。
陛下から即死するような魔法のしごきに耐えて生還した異種族の同朋だ。
とは言え、ブオ、ポヨォ、ファイサンは管轄が決まっており、自国には簡単に来る事は出来ない事も承知のピラタだ。

そうなると答えは1つ。
自らが動くのみ。
(我も陛下を見習って単身で動けば済む事だ)

ピラタは”病気養生中”で、角を隠し属性魔素の制約を受けているので特別に教会の服を着て転移魔法陣を使いイグレシアに転移する許可を貰っている。

流石にいつも顔を出す教会関係者とは会話出来る程度の親近感を得ていると勝手に思っている。
いつもならば、ノタルム国に新設された教会から手順を追って転移魔法陣に入るが、顔見知りの司祭に声をかけた。

「司祭様、中央教会で親衛隊のブオ様はどちらにいらっしゃるかご存知でしょうか?」

普段は一言二言、もしくは会釈しかしない”強面の同朋”から声をかけられて驚くが無難に対応して転移させた司祭。
(おおぉビックリしたぁぁ。いきなり声かけるなよなぁ、あんな怖い顔で・・・)

イグレシアの中央教会と呼称されている大聖堂でブオと会い相談を持ちかけた。
最初は角が無かったので胡散臭い人物に絡まれたと思ったが、自ら名乗り出た事でピラタだと認識し態度がコロッと変わったブオだった。

「あっ・・・いやぁ、ご無沙汰しております。それで、今日はどうされました?」

無表情だったブオがニコニコと話しかけて来るので、自分の人相の悪さを再認識し多少落ち込むピラタだった。

懺悔室ではファルの素性は隠し、魔族だが人族の娘を嫁に迎えたい事を打ち明けるピラタに、ブオは沈黙したままだった。
流石のブオもピラタの熱意を察し確認の言葉を投げかけた。

「ピラタ殿、お相手の女性とはどこまでのお付き合いでしょうか?」
「我らは心も体も通じ合っている」
「それは既に一線を越えている訳ですな」
「そうだ」
「失礼ですが、それは貴男が力で・・・」
「違う!! それは・・・我が心の病を患っていて彼女に救ってもらった際にそのような関係になったのだ。しかもこの事は陛下もご存知だ」
「そうでしたか・・・貴男の心とお考えは解かりました。ただ、今回の件は私の裁量を越えますので一旦あずからせて下さい」
「・・・そうですか・・・」
「大丈夫ですよ、ピラタさん。陛下が味方に付いておられれば誰もが貴男に助力するでしょうから」
「宜しくお願いします!!ブオさん!!」


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


その後、ブオはサンクタ・フェミナの予定を確認し面談を求めていた。

「ブオ、今日は改まって何かしら?」
「はい、実は・・・」

この時初めてファルソの件が燻ぶっていた事を知り、事態の収拾させる為に考えるロリだった。

「それで、その子はピラタと”やっちゃってる”訳?」
「は、そのように聞き及んでおります」
「なるほどねぇ、身体は許したけど結婚出来るか不安なのねピラタは?」
「仰る通りでございます」
「良いわ、私が直接会いましょう」
「ハァ!? いや、お待ちください。何もサンクタ・フェミナ様が平民の婦女子に会って・・」
「ブオ、わたくしが決めた事です。至急中央教会でその子と会って直接話をします。手配しなさい」
「・・・は、畏まりました」

急に舞い降りた他人の恋愛話しが楽しくて仕方のないロリだった。
一方のブオは不安で一杯になったので、極秘に国王へエマスコする決意をした。

(大丈夫だ、ロリに任せておけ。何か有った時は頼むぞ。報告も忘れるな)
事態を長文で送ったが、直ぐに届いた返信の内容を見て身が引き締まる思いになったブオだった。

ブオは関与しているはずのブルデールの事務所を訪ねて確認した。
何故ならばピラタの口からゲレミオのトラバオンに世話になったと聞いていたからだ。
トラバオンと言う人物が何をしているか親衛隊で有れば知っているので、今回の件で余計な勘ぐりも脳裏をよぎるが、国王が関与しているのであれば不敬だと心に言い聞かせて平然を装い事務所に入って行ったブオだ。

ブルデールの事務所に教会関係者が訪問する事は無い。
来訪した教会関係者が責任者の名を告げたので、順序だてて案内された。
ゲレミオの中でもブルデールは異質な存在なので、親衛隊との面識も有る訳も無かった。
挨拶を済ませてブオから説明を聞き、トラバオンとの情報交換も終わり本題に入るブオ。

「それでですなぁトラバオン殿、我らのサンクタ・フェミナ様が直にその娘と会って真意を確かめたいと仰られるのですよ」
「はぁ、そう言われましても、私共としては特に何も出来る事は無いと思いますが・・・」
「いえいえ、確認ですよ、確認」
「はぁ・・・私共は陛下の指示であればどのようにでも致しますが・・・」
「了解しました」

長々と世間話も交えてトラバオンから得たのは、”陛下の指示が有れば全て良し”と言う事だ。
親衛隊は国王とゲレミオの支配者が同一人物だと知っているが、教会とゲレミオは管轄が違うので横の繋がりは有っても協力体制は無いし指示系統が違うのだ。
しかし、親衛隊に限っては唯一の抜け道が用意されていた。
それは・・・

「サンクタ・フェミナ様、全て準備が整いました」
「それで、何時会えるの?」
「は、その前に一手間エマスコを使いお願いしたい件が御座います」
「何かしら?」
「実は・・・」

愛する妻からお願いされれば、大概の要求は応える”優しい夫”なのだ。
トラバオンには”親衛隊のブオの指示に協力しろ”と連絡するだけで終わる事だ。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


日時を指定して中央教会で待ち合わせる事となったファルは緊張していた。
それはトラバオンからの説明が大げさだったからだ。

「良く聞けファル。明日中央教会でお前は試される事になる」
「ええっ!!」
「教会の偉い方が直接お前に質問されるそうだ。勿論お前の本当の気持ちをお話しろ」
「いったい何が有ったのでしょうか?」
「まぁ、お前の心を知りたいらしいから正直に話せば直ぐに終わる事だ」
「私の心・・・?」

訳も分からないまま、決められた時間に訪れると巨漢の司祭が入口で待ち構えていた。

「貴女がファル殿でしょうか?」
「はい、そうですが・・・」
「ではこちらへ」

案内された部屋で待つファルとブオは立ったままだ。
部屋には椅子が一脚しか置いて無かった。
ブオからは簡単な作法が教えられ、何度か練習するファル。
そしてブオが”尊き御方”に準備が出来たと伝えに行くと言う。
平伏へいふくして待つ様に命じられたファル。

足音と椅子に腰かける服の音がファルに聞こえた直後ブオの声が聞こえた。

「ファルとこルカリよ、サンクタ・フェミナ様の御前である。面を上げよ」

(えぇっ・・・)
ファルは何が聞こえたのが理解出来なかった。
トラバオンから与えられたファルと言う新しい名前と本当の名前は教えていなかったはずなのに。
そして王国の者で有れば知らない者はいない人物の呼称を大きな声で告げられたのだ。

「どうされたルカリよ。それとも今までの様にファルと呼んだ方が宜しいかな?」
恐る恐る顔を上げると・・・目に映った人物は黄金の甲冑を身に纏った神々しい女性が光り輝く杖を携えて座っていた。

「貴女様は・・・サ、サ、サ・・・」
「サンクタ・フェミナ様の御前で有る」
「はひぃ!!」

一気にファルの緊張が高まり、全身が震えていた。

「ルカリ、貴女に聞きたい事が有ります」
「はひぃ・・・何なりと」
「ピラタと言う男を知っていますね?」
「はい・・・」
「ピラタは貴女のお蔭で心の病を癒してもらい貴女の事をとても大切に思っているようです。聞くところによるとずっと側を離れたくない程だとか・・・」
耳まで赤くなるファル。

「ピラタの人相は悪いですが心は真っ直ぐな男です。貴女は彼の事をどう思っていますか?」
「・・・最初はお仕事だと思っていました。でも今では・・・」
「今では?」
「とても男らしく頼りがいのある方です。ですが、私の様な女を側に置きたいなどとは・・・」
ファルは娼館の女だと暗に訴え、ロリは理解した上で答えた。

「貴女はそのように思っていても相手は違うようですよ。では質問を変えましょう。貴女はピラタの事が好きですか? それとも愛していますか?」

またもや顔が真っ赤になったファル。
「わ、解かりません!」
娼婦に負い目があるファルソは、ピラタが一時の迷いで自分を選んでいると思った。

「そう。では、ピラタが貴女以外の女性と”同じ事”をしたと考えなさい。貴女だったらどうする?」
「・・・」

しばしの沈黙のあと小さな声で話し出すファル。
「悲しいです・・・胸が苦しくなります」
顔を上げると大粒の涙が溢れていた。

「ごめんなさいね、試すような事を言って。貴女の本当の気持ちが知りたかったの」
ブオがハンカチをファルに渡した。

「貴女の気持ちは解かりました。ファル、貴女はピラタを愛していますね?」
「・・・はい」
「ではピラタが貴女を欲しいと言ったらどうしますか?」
「ええっ・・・でも・・・」
「大丈夫よ、貴女が考えている不安は全部解決するでしょう」
ニッコリと微笑み聖女の威厳を見せるロリ。
だが本題はこれからだ。

「貴女がピラタの愛を受け入れるのであれば、わたくしが責任を持って貴女を開放してあげるわ」

それは娼館に金を払い契約を解除して身請けしてくれると言う物だ。
好きな男と教会の新勢力から保護されている実感がファルに込み上げてきた。
教会内でのロリは教祖に次ぐ大きな勢力になっている。

「受け入れ・・・」
「その前にもう1つ、貴女に確認する事があるの」
ファルの返事に割り込むロリだ。

「貴女が本当にピラタを愛しているか試される事になるわ」
「それは一体どう言う意味でしょうか?」
「それはね・・・ピラタは人族では無いの」
「えっ!?」

ファルの脳裏をよぎるのは娼館にも何人か居る獣人だった。

「私はピラタが獣人でも構いません!!」
それはファルの明確な意思がロリに伝わった。
例え姿が多少変わろうとも、想いは変わらないと。

「ううぅん、獣人では無いけどねぇ、違う種族の人族なのよ」
ちょっと困った表情のロリとブオだった。

「サンクタ・フェミナ様はピラタの本当の姿をご存知なのでしょうか?」
「ええっ知っているわ」
「私も同じ苦行を乗り越えた者として尊敬している御仁ですよ」
目の前の2人から自分の知らないピラタを教えられ、嫉妬するが教会の責任者達が知っている事で安心したようだった。

「では教えましょう、ピラタの種族名はクエルノ族と言います」
「知りません。聞いた事も無いです」
「そうでしょうね。この王国からは遠い国ですから・・・貴女はそんな遠い国に行く勇気が有りますか?」
「・・・正直言うと怖いです。でもあの人が居てくれたら心強いです」

「そう解かったわ。全部私に任せて頂戴!!」
「はい、サンクタ・フェミナ様」






お任せします、ロリ様ぁ。
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