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第12章 戻ってから四度目の儀式

第346話 大魔王杯闘技大会その後4

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大会の二日後にアルモニアで教会関係者だけの祝賀会。
三日後にバリアンテで参加種族を招いての祝賀会だ。
大会の順位と祝賀会の順番が違うのは単にバリアンテの招待客が遠くから呼び寄せる為だ。

エルヴィーノは悩んでいた。
それはピラタの事だ。
大会当日にピラタの告白と言う優勝の褒美を強請られて、面倒なので放置していたら状況が悪化してしまったのだ。
ピラタ本人のことはともかく、フォーレに相談する事も躊躇する内容だ。
何故なら男が変化して女になり、勝負で負けたうえ求婚されると言うのだから。
本来はそんな話しになる訳も無く、”ファルソにとっては”まさに青天の霹靂だろう。
もしも本当の女性だとしても断るだろうと、自分こそが常識ある者だと自負しているエルヴィーノだ。

更にロリの事だから今後別の機会にもフォーレに依頼するに決まっていると確信している夫だ。
そうなるとファルソの出番が増え、ピラタと鉢合わせする機会が多くなる可能性が有る。
だとすればロリも交えて説明した方が責任回避して今後の立ち回りも容易になると考えたからだ。

ノタルム国から王都イグレシアに戻り、行きつけの喫茶店で思考するエルヴィーノは手紙をしたためた。
ロリとフォーレにエマスコして返事を待つ。
アルモニアでの祝賀会はこぢんまりとしたものを予定していると聞いていた。
対外的に国内には”魔族”の事は伏せてあるので、王族と一部の教会関係者だけでの祝賀会だ。
例え三位でも国家としてロリの面子は保たれ一族に報告できるのでフォーレはロリの依頼を完遂し信頼を得た事になる。
ましてやリアム殿も現地にてファルソの活躍ぶりを見たのだから。
剣舞の師匠として鼻が高いはずだ。


王城の晩餐室を使い20人程の関係者が集まっていた。
内輪だけの宴会なので堅苦しい挨拶は抜きで始まった。
一族にはロリからの報告でフォーレに国王の一存で勝手に聖騎士に任命し、サント・マヒア神聖の魔法サガラド・エスクード聖なる盾サガラド・エスパーダ聖なる剣を与えた事を報告してもらってある。
試合の経過もリアム殿から説明が有ったらしくフォーレの健闘が称えられた。

そして祝賀会の為に、わざわざフォーレに来てもらっていたのだ。
しかも明らかに場違いな衣服でだ。
例えゲレミオのフォーレだとしても普通の服装で十分なのだが、何故か貫頭衣を着ているのだ。

これはロリの発案で本当にフォーレがファルソだと言う事を目の前で変化させる為だった。
その際に衣服を決める時悩んだ挙句、現在の貫頭衣になったらしい。
フォーレの服であればファルソはブカブカで、ファルソの服はフォーレが着れないし着たくないだろう。

「いやぁぁ、ファルソは実に良く戦った!!」
「本当、凄かったわぁ」
リアム殿とロリが親子でファルソを褒めちぎり、照れるフォーレだ。

「全くですなぁ、あのファルソがフォーレ殿だなんて未だに信じられませんよ」
親衛隊も警備の一環として同行していたのでブオがまだ、疑いの眼差しでフォーレを見ていた。

「フォーレさん、そろそろ変化して下さるかしら」
プリマベラがフォーレに催促した。
この場に居る者でファルソに変化する瞬間を見ている者は、エルヴィーノとロリとプリマベラにアブリルだけだ。

「それでは・・・僭越ながら変化します」

そう言って魔法を発動させたフォーレが姿を変えていった。

「「「おおおおおっ!!」」」
「ファルソだ!!」
「凄い!!」

「大したものよフォーレ。しかしアルモニア人で無いのが残念じゃ」
「お母様、人種はともかく同じ人族よ。フォーレさんは本当に偉業を成し遂げたわ」

教祖も認めるフォーレの強さだが不満が有ったらしい。
自国民では無いが同じ人族として魔王国の大会に単身で勝利する偉業をたたえる次期教祖のアブリルが援護する。

「次は私も出て見るか・・・」
「はぁ? 駄目に決まってるでしょう!」

弟子が出場した大会で活躍したのなら、師匠である自分が出ても上位入賞、うまく行けば優勝する可能性も有ると嬉しそうに発言したが、娘にバッサリと切り捨てられたリアム殿だった。

「良いじゃないか他国の大会なんだから」
「他国だから問題でしょ!! 王族に何か有ったらどうするつもりよ」
「いやそれは国王に・・・」
「あなた、いい加減にして」
「・・・」

母娘に言いくるめられ沈黙するリアム殿だ。
その姿を見て出過ぎた事は止めようと肝に命じたエルヴィーノだった。

そんな宴会も終わり、エルヴィーノはロリとフォーレの三人で応接室にて密談をする。

「私達に重要な話って何かあったの?」
知りたがりのロリが直ぐに本題に入った。

「ああ、良く聞いてくれ。クエルノ族からファルソに求婚の申し入れが後を絶たない」
「はぁぁぁ!? 私は惨敗したんだぜぇ」
「だが、その戦い振りをあの種族が気に入ったらしい」

“何言ってんだよ、意味が解らん”
って顔をするフォーレだ。

「それで、どうするつもりなの?」
冷静なロリが問いただした。

「勿論、ほとんどの申し出は断ったさ。だけど、どうしてもファルソ本人から断わりの意思を聞きたいと言う奴が居てさ、困ってんだ」

「どうして国王が困るのよ」
「まぁ・・・その・・・アレだ。ゲレミオの仲間なんだ」
「ええええっ!!」

驚いたのはフォーレだった。

「ゲレミオの誰なんだ? でも一体どうして・・・」
「フォーレ。試合の対戦者の名前は覚えているか?」
「全員は覚えて無いなぁ」
「じゃピラタは?」
「ピラタ? 私が負けたあと優勝したクエルノ族だな」
「ああ、その名前に聞き覚えは無いか?」
「・・・ピラタ、ピラタねぇ・・・」

ゲレミオ内で面識も有り本当に忘れているのか不安になったエルヴィーノ。

「あああああっ!! ピラタってまさかっ・・・」
「そうだ。そのピラタがお前に求婚しているんだよ」






青ざめて、たじろぐフォーレだった。
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