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第12章 戻ってから四度目の儀式

第342話 大魔王杯闘技大会8

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大魔王がファルソと打ち合わせをしてシーラの元に戻ったのは優勝者が決まった後だった。

「もう遅いぃぃ、決勝戦終わっちゃったよぉぉ」

特にどうでも良いので気にもしない大魔王だが一応たずねてみた。
「それでどっちが勝った?」
「ふっふ~ん。我らがクエルノ族の勝利よ!!」

想定通りの結果だ。
確かにヒラファ族の遠距離接近攻撃は脅威だが、槍自体を熟練のオスクロ・エスパーダで切る事は可能だ。
優勝した誰かの副将もかなりの手練れだろう。
激戦の果てに武器が切られて無くなり、無手で戦うも強敵には及ばなかったそうだ。

そんな優勝者の事など直ぐに消え失せ、シーラの思考は三位決定戦の事で思考が一杯で、観覧席はファルソの事で盛り上がっている。

(可哀想な優勝者・・・)
心では憐れむも周りの”親族達”に合わせる大魔王だ。

闘技場の清掃が終わり、三位決定戦が行われる。
クエルノ族の剣闘士とファルソだ。

クエルノ族の剣闘士は、同族とファルソの戦いを見ていたので勝つ気満々でいるようだった。
そこに審判からの紹介が始まった。


「・・・そんな我らが同朋の剣闘士に戦いを挑むのはぁぁぁぁぁ、先程の優勝者に魂の全てを賭けて戦いを挑み、あと一歩で力尽きた戦乙女だぁぁぁ。しかも今回の戦いは前回とは違う様だぞぉぉぉっ。闘技場の者達よぉぉ良く聞けぇぇ。双剣のファルソは力及ばずとも、聖魔法王国アルモニアの聖騎士ファルソとして刃を交える為に再び参戦するるるるぅぅぅ。同族達よぉ括目せよぉぉぉ」


紹介と共に闘技場に現れてくる剣闘士達。
ファルソの案内は観客の盛り上がりが異様だった。

しかし、聖騎士と言う割には見た目が二枚の布だけで全裸も同然だが、今回の闘技大会で一番の盛り上がりを見せる。

既に優勝者が決まったし、先のファルソの戦いで胸部の布が落ちたのも、男のクエルノ族の支持を増やした様だ。

試合開始の合図と同時に魔法が展開される。
クエルノ族の剣闘士はオスクロ・エスパーダとオスクロ・エスクードだ。
対するファルソに闘技場が注目した。
両手を横に伸ばし叫ぶファルソ。

サガラド・エスパーダ聖なる剣!!」

対戦相手も会場も驚き絶句していた。
ファルソの両手に在ったのは光り輝く剣だった。

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

対戦相手に駆けより切りつけるファルソ。
見た事も無い光り輝く武器に防御の体勢を取る対戦者。
盾と剣の両方で防御する相手に対して双剣を切りつけた。


ゆっくりと。
それらはゆっくりと落ちて行った。


「うぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!!」
対戦者の絶叫と共に審判と治療員が駆けだした。

治療員が首を横に振っている。
その時点で試合続行は不可能と判断して勝負は終わった。

既に闘技場は先ほどを上回る歓声で何も聞こえない程だった。

試合は一瞬で終わったのだ。
ファルソはクエルノ族が防御するオスクロ・エスパーダとオスクロ・エスクードを一刀のもとに”両腕ごと”切り伏せたのだ。

一瞬の出来事にクエルノ族は声が出なかった。
一瞬で勝負が決まった事では無く、オスクロ・エスパーダとオスクロ・エスクードが一刀で切られた事に対してだ。

しかし、今の戦い方をせずに前回の戦いを行なった事が戦闘種族であるクエルノ族を魅了したのだろう。
自分達の技が負けた事よりも少女が必勝の武器を隠し持っていたにも関わらず、自らの技量で挑んだ事が賛同を得たと大魔王は分析していた。


因みに隣ではシーラが号泣している。


エルヴィーノが聖騎士として、建前上の条件を付けて与えたのは、サント・マヒア神聖の魔法サガラド・エスクード聖なる盾サガラド・エスパーダ聖なる剣とエルヴィーノが考案した魔力増幅魔法陣だ。

結果的にファルソが選んだのは、身体能力を向上させ、更に速度を上げて魔力増幅させてからのサガラド・エスパーダを二本出しだ。
魔力が高まっている分、通常のサガラド・エスパーダよりも強力なのだ。

ガルガンダに下賜あたえた魔導具よりも、意識的に発動させる人族の”ファルソ”の方が、上限無く増幅できるし、増幅しすぎると魔素量が大幅に減る事や、注意する点を教えて本番で使いこなしたファルソだ。

サガラド・エスクードを使わなかったのは今回覚えた戦闘方法と違うからだろう。
控室での待ち時間で体得できたのは、やはり才能があるからだと思い、その力を”浮気”では無くゲレミオに使って欲しいと心から願う常闇の帝王だ。





取りあえず妻の面子を保ってくれたファルソでした。
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