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第12章 戻ってから四度目の儀式

第323話 龍人達の無茶ぶり

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「水面から地下深く50階ほど階層があるけどコレは何?」

水面から城の基礎たる土台まで。
そうでは無くて更に地下を掘り下げて階層が連なっている。
カスティリオ・エスピナの地下の様な逆円錐では無くて円柱だ。
各階層は均一の大きさで地下深くまで伸びている。
ご丁寧に階層ごとの見取り図まで用意されている始末だ。

“はあぁ”と溜息をついて質問する。
「それで、コラソンはここで何をしたいのかな?」
「それはモンドリアンさんと”奥様”に、一族の方々と決めてください」
「そんな事言ったって、今の俺達じゃ使いようが無いぜ?」
「ふふふ、今はでしょう?」

意味深なコラソンの返事に、無駄な問いかけは止めたエルヴィーノだ。
それは一介のダークエルフが”エンシェントドラゴン”の考えが理解できるはずも無く、深い意味が有るのだろうと察したからだ。
ここは有り難く礼を告げて話を進める事にした。

地下施設に関してはバレンティアから助言を頂いた。
それは一度に開城するのでは無くて、事有る毎に地下の通路を開けば良いとの事だ。
(なるほど。それならば、目的が出来た段階で発表すればいいか)

そして城下町の見取り図と、港町を二カ所作ると言ってきた。

「港町が二カ所も必要有るのかぁ?」
「聞いた話しによると、島の周りの”海流”が違うらしいので生息する生物が違うみたいですよ。大陸との間にある海は比較的穏やかですが、それ以外は流れの強い海流なので生息する生物の体格差が有るそうです。勿論食材としての話しですよ」

聞いた事の無い言葉が出て来たが、多分カマラダの情報を元にコラソンが食べたいから手を回したのだろうと勘ぐるエルヴィーノだ。

「大体、魚を取る技術とか俺達の種族は知らないぞぉ?」
「そこは、ほらペンタガラマから募集しましょう」
確かに獣人は魚好き派が沢山居る。
実はパウリナに一部のガトー族も魚が好きだったりする。
未開の海と食材に興味を示すかも知れない。
「でも、いきなり二カ所居るのかぁ?」
バレンティアとのやり取りにコラソンが口を挟む。
「不必要であれば、閉鎖すればどうでしょう?」
「なるほど。まずはどちらか一カ所の港町を開放するわけだな」

「そうであれば、比較的流れの穏やかな大陸側を開港すれば良いでしょうね」
とにかく早く食べたいらしく、笑顔で話しかけてくるコラソンだ。

「しかし、地下50階なんてさぁ、もしも攻められたら逃げ場が無いじゃないか」
一族が一度国を失っているので、逃げ道を作る事に余念がないエルヴィーノだ。

「心配無用ですよ、モンドリアンさん」
絵顔でコラソンが答え、バレンティアが説明してくれた。

「基本的に階段は有りますが、転移魔法での移動が主になりますね。そして特定の階層からは外部に直接転移出来る様にします。これは責任者だけに教えると良いでしょう。更に、モンドリアンさんだけでも構わないですが、それぞれの国に直接転移出来る魔法陣も設置しましょう」

非常に有り難い申し出だった。
だが、もっと現実的な諸問題が有る。
それは水回りだ。と言っても給排水と便所だ。
その事を聞いて見た。

「それはノチェ・デル・インペリオと同じ仕様で良いでは無いですか」
「転移魔法による特定座標を常時空間固定して排水排泄と新鮮な空気を出し入れする方法か?」
「その通りですモンドリアンさん。排水排泄は海流の早い海底にしましょうか。まぁカマラダに任せましょう」

海底にする事に意味が解らなかったエルヴィーノがたずねた。すると
「海洋生物が処理してくれるでしょ? 以前モンドリアンさんも餌を与えてたじゃないですか」
いつの事か思い出せずに相鎚を打つ。

「近場だと排出する場所に小魚たちが寄ってきて、それを求めて大きな魚が集まるとその場所だけ不思議と魚が多くなり、排出している秘密が暴かれる可能性が有ります。だから海底の流れが速い場所であれば小魚は寄り付きませんからね」

バレンティアの説明に納得して”全て任せる”事にしたエルヴィーノだ。
「ところでコラソン、ここにも皆が集まる場所を作るんだろ?」
監視室的な部屋かも知れないが聞いて見た。

「そうですねぇ、今回は・・・・大きな部屋で良いと思いますよ」
今回は必要無い。と言うかと思ったらやはり作るらしい。
「因みに何のために?」
「我らが一同に会する為の場所です」
“それって必要かぁ?”と思ったが聞き流す事にした。

そして本題に入る。
「じゃあさ、この前話した城下街か港町に専用の食事場所を作って欲しいけど、場所と特定の建物に秘密の会食場所と、その料理屋には大きな食糧庫が必要なんだけど・・・」

そう言った途端、2人の目が輝いた。
「その件ですがねぇ、モンドリアンさん。バレンティアとも話したのですが場所の選定が非常に難航してましてねぇ」

バレンティアとカマラダに湖に浮かぶ城を作ってもらうお礼として龍人達がいつでも立ち寄れて、食べ放題飲み放題の店を提供する件だ。
その立地でどこが難航しているのか理解出来ないエルヴィーノだ。

「私は城下町から城を眺めて食事がしたいのですがねぇ」
コラソンの言い分だ。
「私とカマラダは港町に設置したいのですよ」
なるほど。
コラソンと対立するなど余程の事だと思い聞いて見た。

「新しい国は海の食べ物多くなるはずです」
うなづくエルヴィーノは八本も十本も好きだしハンペーンも大好きだ。
「肉と比べると海の食べ物は保存が効かないのですよ」
うなづくエルヴィーノ。
「そこでカマラダと相談したのですが、生きた魚を店内に保管できないものかと」
「はあぁ!?」
これには驚いたエルヴィーノだ。
しかし、龍人の発想を聞く事にした。

「室内に魚を保管できる場所を作る必要が有ります」
言いたい事は解かる。
だが、魚の種類や龍人達の食べる量を保管できる場所とは大量の海水が必要だ。
これも転移魔法の要領で可能だろう。
しかしコラソンから文句が出ている。

「そもそも魚の料理がそれほど種類は無いだろう? そこに折角モンドリアンさんが、いつでも肉を好きなだけ食べれる店を作ってくれるのに勿体ない」
コラソンは肉食派だった。

エルヴィーノの思考は巨大なエンシェントドラゴンであるコラソンが満腹する肉の量に、いやな汗が危険信号となって教えてくれていた。
(どうにかしなければ・・・)

ハッと閃いたエルヴィーノ。
島の海岸線を回った時に見つけた光景を思い出した。

「あのさぁ、海岸線に幾つか洞窟みたいな場所が有ったんだよ。洞窟を店の地下につなげる事は可能かな? そうすれば海水の手入れも必要無いし、カマラダの眷族が必要な分を捕まえて持ってくるのも可能じゃないかなぁ?」

「それだぁ、モンドリアンさん!」
バレンティアの絶叫でした。
コラソンは直ぐに理解したようだ。

海岸の洞窟。
もしくは海中に直接通路を作り、港町に作る料理店の地下に浅瀬で生捕る場所を作る。
潮の流れを生かす様に入口と出口を作る。
出口には柵を作り魚が逃げないようにする。

「完璧ですよモンドリアンさん。早速設計しますが宜しいでしょうかコラソン様」
興奮しているバレンティアに諦めた様子のコラソンが首を縦にふった。
エルヴィーノも内心ホッとしていた。
それはカマラダが魚を集めてくれれば費用が掛からないからだ。
その代りゲレミオの腕の立つ料理人を配置しようと思案していた。

取りあえず方向性が決まったのでバレンティアはカマラダの意見を聞くと言って転移した。
「モンドリアンさん。私からのお願いも聞いてもらえますかねぇ」
「コラソンの願いを聞かないなんて、よっぽどの事だよ。それでどんな事だ?」
満面の笑みを浮かべて話したコラソンの秘めたる思いだ。
「モンドリアンさんの提案する料理店も美味しいのですが、高級店の食事も食べてみたいのですよ。勿論龍人には秘密にしますし、一般的な量だけを食べますから」

(いつか誰かがその事を口走るとは思っていたが、ここで要望してきたかぁコラソン)
もちろん微笑んで答える。
「解かったよ。城下町に作る高級店限定で特別室を作れば良い訳だな」
すっと立ち上がったコラソンが握手を求めて来た。
「流石はモンドリアンさん。お願いしますね」


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


新しい国には種族別にゲレミオから入植したい者を募集するつもりだ。
元々移民はゲレミオに活躍してもらうつもりだった。
勿論、国の推薦も有りだ。

だがエルフ国メディテッラネウスからは入植は出来ないだろう。
何故なら”例の問題”が有る。
秘密結社はエルフ王が撲滅したと聞いたが、自分とロザリーの場合も有る。
それは偶発的な場合だ。

(効果を知らずに純粋に恋愛において効果が出た場合は・・・そんな事無いか)
何かしらの目的が無い限り”男児の初めて”を摂取するなど有りえないと”犠牲者”は考えた。

必然的にエルフの入植に入国も禁止にする予定だ。
もっとも、例外は有る。
ポルトンのように魅力で嘘を付かず、裏切らないゲレミオの者達だ。
(後、親父とジャックたちはいいか・・・あ、公爵家の一部の者達もかぁ)

ブツブツと独り言をつぶやきながら歩いていた。
(まてよ、アルモニア人の入植はどうなんだぁ? クエルノ族が有る程度入って来るのは良いが・・・あ、教会関係者は必要か。必然的に漁師は一部の獣人とアルモニア人だけか・・・)

アルモニア人が魔族と恐れる存在が居る為に、初期段階での共存は難しいと考えた。
自分達の認識が間違っている事を受け入れるにはかなりの抵抗が有るのは立証済みで、一般国民にその認識を変えさせるのが面倒だと思ったエルヴィーノだ。

そこで閃いた。と言うよりも思い出したエルヴィーノ。
(そう言えばフォーレの故郷って漁師が多いんだったよなぁ。良し、決まりだ。優先的に入植させよう。あ、ガンソの祖国も魔族の認識が無いのか)

エルヴィーノの心底では、シーラの結婚式と建国が終わればアベストロース帝國へのゲレミオを進出させる事を決定した瞬間だった。
もっとも、事前に幹部達には”隣接する国に潜入する”と話した記憶が有る。





龍族は食べる事が好きと言うよりも、今の流行が美味しい物を食べる事だ。
ただし一部の者達に限定される。


二つの物語を作ろうとすると思考が偏りがちになっています。
関係性は大いに有るのですが、時代性とか主人公目線とか未経験の世界感に四苦八苦しながら、”向こう側”もゆっくりペースで進めます。
今後ともつたない妄想にお付き合い下さい。
宜しくお願い致します。流転小石
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