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第10章 冒険編

第284話 目的地

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毎日の練習に明け暮れた日々のエルヴィーノ達は充実していた。
魔素と神経を使う修行なので肉体的には力が有り余っている。
だから夜になると妻達は獣になるのだ。
勿論一匹づつ仕留めてやるが、たまに睡魔に勝てず途中で寝てしまう事も有った。
当然だが起こされて搾り取られる事になる。

そんな充実したある日の事、コラソンから念話で連絡が有った。
(やぁモンドリアンさん。皆さんの調子はどうですか?)
(あぁ、俺も含めて全員が以前より魔法の扱いが上達してるぞ)
(それは良かったですねぇ)
(所でどうした?)
(実はモンドリアンさん達の目的地が決まりましたよ)
(本当か!?)

(はい。聖魔法王国アルモニアからアベストロース帝國に向う街道で国境付近にモリーノと言う村が有ります)

(村か!?)
エルヴィーノは迷宮の類いだと思っていた。
(その村に使者を送りますから皆さんは村で待機していてください)
(解かった。ありがとうコラソン、みんなに知らせて来るよ)

妻達がそれぞれ魔法の鍛練をしている最中に説明した。
「みんな、聞いてくれ。目的地が決まったぞ」
「本当に!」
「何処になったの?」
「遠いの?」
それぞれが思い思いに問いかけて来た。

「意外と近い場所だよ」
「解かったから早く言ってよ」
せっかちなロリは自分の事のようにまくし立てる。

「聖魔法王国アルモニアからアベストロース帝國に向う街道で国境付近にあるモリーノと言う村があるだろう?」

「・・・!!」
頭を傾げ思い出そうとするロリが思い出した。
「そんな近いのぉ!?」
「どこなのお姉様」
シーラは気になって仕方が無いようだ。
「イグレシアから馬車で20日位かな?」

ロリは地の果ての迷宮を戦いの場と思っていたのに、自国にある辺境の村だと言われてガックリしたようだった。

「聞いてくれロリ。その村で龍人の使者が来るらしいから話を聞けば良いと思うけど」
「そうよね。いくらなんでも村が戦いの場じゃねぇ・・・」
地理感が有るのはロリだけなので、パウリナとシーラが細かく場所を聞いている。

(しかし、馬車で20日かぁ。飛んで行けば1日だよなぁ・・・折角の冒険が1日じゃつまらないし、もっとこう、冒険感を味わいたいよなぁ。歩いて行くことにするか。良し聞いて見よう)

以前の冒険を思いだし徒歩での移動を提案するエルヴィーノだ。

「・・・と言う訳で、徒歩での旅はどうだろう?」
「賛成ぃ!」
まずはパウリナが仲間になった。

身体を動かく事が大好きなパウリナは馬車の移動は退屈だと考えていた。
シーラはロリを意識している。
女三人の中で一番体力が無さそうだからだ。
その事を察したのかロリから声をかけた。

「大丈夫よ、シーラ」
「でもお姉様、馬車で20日では徒歩だと三倍は掛ると思うけど」
「へっちゃらよぉその位。それに夜はあの人に足を揉みほぐしてもらうから」
本人の確認無しに決めつける妻達だ。

「それで、いつ出発するの?」
「いや、何も決めて無いし村にいつまで来いとも聞いて無いから、こっちの都合で良いんじゃないか?」

するとロリとパウリナが話をしている。
2人は王妃であり、政務の三割を担っている。
留守の間の手配に時間が掛って当然だろう。
シーラも同様で自国の一部門を管轄しているのだ。
それと重要な人物に説明しなくてはならない。
第一夫人に関してはエルヴィーノ抜きで説明してくれると言う。
難題を代わりに三人が説明してくれることに肩の力が抜けたエルヴィーノだ。

「そのかわりにあなた、解っているでしょうね!?」
ロリを中心に三人に凄まれた。
「ハイ・・・」


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


そしてブリンクス公爵の屋敷の応接室では。
「・・・と言う訳なのお姉様」
「・・・解かったわ。毎晩帰ってくることは、あなた達の安全を確認する意味でも重要な事ね」
帰ってさえ来ればエマスコの連絡も必要ないし安心するロザリー。
「でも親衛隊はどうするの? それとクエルノ族の従者の人も居たでしょ?」

無敵の妻達が居るとは言え、身体を張って守る者達が存在するのに使わないのも間違っていると三人を説き伏せて提案するロザリー。
一行の二日前に先発隊が移動し、エルヴィーノ達が後を追うように出発する。
ただし、そのような事を嫌う夫には秘密にするのだ。

「そうね。いくら自国と言っても通った事の無い街道だし、行った事の無い街や村もあるから、その方が安心だわ」
ロリも納得してくれたようだ。

「じゃ先発隊は誰にするの?」
ロザリーの質問には主にロリとシーラが話したが、先発隊は強面で巨漢のシオンが人族に変化して潜入し、同じく巨漢のブオと細かな気づかいが出来るポヨゥに連絡係のファイサンが同行する。
定番の四人だ。
諸問題をシオンが引き付けて未然に解決する計画だ。
ファイサンから連絡があれば教会から必要な物資に人の手配はブロエ・マルシベーゴォで遠回りしてでも早く送れるからだ。

勿論、危険人物が発見された場合は、状況を判断して駆除する事も必須条件とした。
今回の旅はシーラの試練だが妻達はそれぞれの思いが有った。

ロリは初めての旅に続いて余計な二人も同行だが、二度目の旅を2人で楽しみたかったのだ。

一方のパウリナは、ロリから聞いていた旅に憧れを抱いていたのだ。
しかも最愛の夫と2人と”おまけ2人付き”で夫婦の旅行をしたかったのだ。

当然だがシーラも婚約者と2人と”おまけ2人付き”で婚前旅行を楽しみにしていた。

一瞬、三人の視線が交差する。
「2人に相談したい事が有りますわ」
「あら、お姉様も? 私も有ります」
ロリとシーラの考える事は同じだった。
エルヴィーノと2人の旅を楽しみたいので、女2人は後ろから付いて来るのだ。
だから順番を決めようと言う話しである。

「私の試練だから、まずは私からよねぇ」
「シーラ。やはり序列で有るべきよ。第二夫人たる私からに決まっているでしょ!」
どちらからでも自分は二番目なのでロザリーの側に逃げてきたパウリナだった。

「まぁまぁ2人共」
なだめるロザリー。
「「お姉様はどっちの味方なの!?」」
溜息を付いて説明する。

「あの人が言ってたでしょ、試練はシーラが自分で決めるべきだと。だから今回はシーラで良いと思うのよ」

「お姉様ぁ!」
勝ち誇った顔で姉嫁を見るシーラに、ロリがロザリーに詰め寄る。
2人が抱きしめ合うと2人の霊峰が押しつぶされるがお構いなしだ。

「今回は仕方ないでしょロリ」
「だってぇ」
「その代り、前日の夜は一緒にお仕置きしましょう」

微笑んで話すロザリーは一緒に行けない分、お仕置きと称して魔精を吸い取る事を考えていた。

ロザリーの案で妥協したロリ。
満足のシーラ。
その日までは毎日乱入しようと考えているパウリナ。
四人の思惑など露とも知らず子供達の相手をしていたエルヴィーノ。

その日を境に各国では準備が始まった。
それぞれが留守にする間の調整で、国政に子供達の世話だ。
夕方からは子供達を全員別荘に呼び寄せる手配はロリからの提案だ。
幼い乳飲み子を預けて旅をする訳なので毎日顔を見たいと思うのが道理だ。

別荘もエルフ族の長男エアハルトと次男スフィーダに、人族の長女クララと次女ベルダーに、獣人族で双子の兄妹長男セサルと次女アナに、ダークエルフのアロンソと子供達だけでも7人で、エアハルトとアロンソ以外は幼いので専用の従者に乳母が付くから、それらの部屋も拡張しなければならない。
まして、各国の王子王女が一同に会するので別荘近隣にも見回りの兵士詰所も新設する。

兄妹の序列はエアハルト、アロンソ、クララ、セサル、アナ、スフィーダ、ベルダーだ。その次にシーラとの子供が末子として名を連ねる予定である。





いよいよ、旅の始まりか!?
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