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第8章 魔王国編

第231話 秘密の開示

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バルバ達と食事の後、シオンを連れて旅館エスピナに有る特別な転移室からラ・ノチェ・デル・カ夜の帝國城スティリオ・インペリオに転移した。
待っていたのはフォーレ、グラナダ、ガンソ、ガルガンダだ。
親衛隊の時と同様にシオンを紹介し全員に挨拶をさせる。

フォーレとガンソはアルモニア人では無いとシオンに説明し、宗教的な制限は無いと教え、獣王国バリエンテに関しても、ここ数年でアルモニア教の教会が建ち布教が行われているが黒龍信仰が強い事を説明し、魔族と言う単語はほとんど気にしていないようだと教えた。

ここでシオンに興味を示したのはガルガンダとガンソだ。
ゴツイ体つきのシオンにどうやって身体を作ったとか、丁寧な言葉使いで陛下を称える話し方が共感を持ったのだろう。
この三人は直ぐに打ち解けたようだった。
むしろ普段は人付き合いの上手なフォーレ、グラナダが会話に入れない様だった。

「ガンソ、そろそろ」
「ハッ畏まりました。陛下は支度が有るので先に退席なされます」
そうシオンに説明する。
「どこかへ向かわれるのでしたら我も」
話しの途中でガンソが説明する。
「いやいやシオン殿違うのです。儀式の準備ですよ」
「儀式?」

「初めて帝國城に入る事を許された者は帝王の間で謁見する事を儀式と呼んでいるのです」
「おおっそれでは我は認められたと」
嬉しそうなシオンだが離れて見ていたグラナダには、人相の悪い叔父さん達が悪巧みで喜んでいるようにしか見えなかった。

グラナダ、ガンソ、ガルガンダとシオンは地下二階の帝王の間へ繋がる龍と棘の彫刻で浮き上がった巨大な両開きの扉の前に来た。
「これは魔法で開く扉で、ここに手を当てて魔素を持つ者が呪文を唱えれば開くので、今回はわたくしめが開きましょう」
扉の脇に置いてある台座に乗った玉に手を置きガンソが唱えた。

【虚言を掻き消し虚像を打ち砕け。真理は常闇と共に】

一瞬静まるが、ゴゴゴゴッと天井まである石の扉が開きだす。
すると「おおおっ」とシオンが驚いた。

中から見えて来たのは真っ白な空間に真っ赤な絨毯が敷いてあり壁際に龍の石像が何体も左右に並んでいる。
天井にも細長い龍の像が扉に向って飛んでいるように彫られていて、彫刻の周りから照明の光が輝いている。
壁面にある龍の像も同様に後ろの照明が室内を照らしている。
その奥は真紅のカーテンで覆われており、三人の後を付いて行くシオンだ。

シオンが前で三人が後ろに並んで跪く。
ガルガンダには魔石で帝王の発する魔素を三人分躱す様に指示してある。
同系等の魔素を使うシオンには通常の三倍増しで発散する予定だ。
これは前回、シオンと邂逅の時に驚いたから三倍に決めた訳だ。
ガンソからの合図でフォーレと向かう。
魔素を発散させて椅子に座りフォーレを見てうなづく。

今回からガンソが導入した自動開閉機なる物でカーテンが人の手を使わずにボタン一つで開閉するようになったのだ。
それを初めて使う。
魔素が十分に溜まった所でボタンを押すと、ササササッと見事にカーテンが両脇に開いた。
そして濃密な魔素がシオンを襲う。
(こっこれはたまらん)

自ら考えたセリフをフォーレが話す。
「ノチェ・デル・インペリオの支配者、常闇の帝王エル・モンド陛下の謁見である。そのお姿を拝見出来る事を光栄に思うが良い。皆の者、面を上げよ」

顔を上げたシオンの前にはガンソの貢物で純銀製の”常闇の帝王”に相応しい威厳と風格のある大きな装飾で飾られた椅子に腰かけていた忠誠を誓った人物が居た。
奥の左右に並べられた照明用の魔宝石が散りばめられた置物が間接的に照らし幻想空間のようにも見える玉座ぎょくざに坐するエルヴィーノだ。

初めて会った時の衣装を身に付けて座る帝王を見て歓喜に震えているシオンだった。
「レボル・シオンよ」
「はっ」
「お前は俺と同じ思いを胸に秘める者として、ノタルム国の責任者に任命すると共に帝國の武として最強の親衛隊を作って欲しい。人選は任せる。帝國の仕事はそれぞれの責任者から聞いてくれ。ゆくゆくは同様の者をノタルム国に配置する事が目標だ」
「ははっこのシオンにお任せください」
(・・・しゃべりが誰かと似ているよなぁ)
そんな事を思いながらフォーレに目配せした。

階段を下りてシオンに話しかけるフォーレ。
「この城には出入口が無く、この場所に行き来する為には”帝國の証し”と言う魔道具を所持した者しか使う事が出来ない専用の転移魔法陣を使わなければならない」
そして手渡される首飾りだ。
「陛下より下賜されし”帝國の証し”は我が魂も同義。死んでも話さぬよう肌身離さず括りつけて置きましょう」
うんうんとガンソがうなづくのが見えた。

「ではシオンよ。期待しているぞ」
「ははっ」
ボタンを押しカーテンが閉じて控室に戻る。
「では戻りますか皆さん」
ガンソの掛け声で先ほどまで居た会議室に戻った。すると
「ねえねえ、陛下ぁ今日は凄かったよねぇ。私、震えちゃったよぉ」
フォーレの前で大胆な事を言うグラナダだ。
「確かに今日の陛下は凄まじかったなぁ」
同意するガルガンダにうなづくガンソだ。
「ああ、すまん。みんな。シオンは俺と同系の魔素だから普段通りだと解らないんだよ」
「おおっそうでしたか」
納得のガンソだ。

「陛下から指示の有ったノタルム国での五人の意味が分かりました」
わずかな会話から読み取るシオンはたいしたものだ。
「人選は任す。だが、研修はここで行ないたいから」
「はっ、我と同様に変化する訳ですな」

話しが早くて助かる。
「ああ、その五人にもこちらの事情を説明しなくてはダメだし、抵抗したり反論する者が居れば教えてくれ」
「はっ、畏まりました。陛下、角の事はどうしますか?」
とりあえず魅力の儀式をする予定と全員の前で角と言っても何の事か解らなくてエルヴィーノに視線が集まる。

「そうだなぁフォーレ、グラナダ、ガンソ、ガルガンダは先発隊として選んだ訳だから説明するか」
嬉しそうなガンソと不安そうなグラナダだ。
「みんな聞いてくれ、シオンと話してどう感じたか?」
「とても知性が豊かで、経験と自信に裏付けされた立ち振る舞いに信頼が伴われます」
べた褒めのガンソだ。
「同じく」
ガルガンダも肌で感じたのだろう。
「確かに目を瞑って聞いていれば、年季の入った執事の様に聞こえる」
「まぁ見た目は仕方ないよねぇ」
フォーレとグラナダだ。

性格や人柄を読み取るなんて高度な技術を会話だけで判断するとは、みんな凄いと思った常闇の帝王だった。
「分かった。シオンが信頼に値する男だと評価してもらって嬉しいよ。では、隠していた事を四人に教えるとしよう」
みんなの視線の中、変化の魔法を解除した。

すると
「おおおっ」
「カッコイィ!」
直ぐに反応したのはガルガンダとグラナダだ。
(何故この2人に?)
獣人に”ウケた”のか解らないが年甲斐も無くはしゃいでいる2人だ。
残りの2人は驚きはしたが普通だ。
「以前、角の生えた種族が居ると聞いたような気がしたが、まさか本当に居たとは驚きだ」
確かに以前は自称冒険家兼作家だったフォーレ。

「私も昔、聞いた事が有りますが本に出てくるような空想の存在だと思っておりました」
やはり、現物を見ると人族に流れている噂を思い出したのか2人共話してくれた。
そして、アルモニア教の魔族とクエルノ族が似ているからアルモニア人は外したと説明した。

「なるほど、それでリカルド殿は外されたのですな」
ガンソの言った元司教は周知の事実だ。
「では、転移の次期は今後決めるが出向く際には全員にクエルノ族に変化してもらうからな」
そう言って四人に変化の魔法を使った。

「おおっ、みんなクエルノ族になったぞ」
嬉しそうなシオン。
「ガルガンダかっこいいよ」
「2人共なかなか似合ってるぜ」
「ガンソは本当にクエルノ族っぽいよな」
何故か楽しそうな四人。
しかし、リカルドは無理だろうと心で思い、ある事を思い出した。

(あれっリアム殿が変化した時に角が有ったよな。フォーレが変化した女の魔族”双剣使いのファルソ”も角が有っても求婚されていたからなぁ。王城の兵士の問題かぁ? 現代のアルモニア人が変なのか理解出来ないけど、魔族自体を見た事無いのが問題なのかなぁ。相手を知る事で打ち解ける事が可能なのは立証できたが・・・相手次第だな)
自問自答するエルヴィーノだ。





シオンは心のわだかまりが晴れた様に微笑んでいた。
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