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第8章 魔王国編

第212話 魔王との会談3

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「その前に俺から質問しても良いですか?」
「構わんが」
アルコンが一族の復讐をしたい事は理解出来る。
だが気になる事が有った。
「どうしてダークエルフが滅んだ事をジャンドール王、もしくはクエルノ族が知りたいのですか?」
「ふ~む」
しばしの沈黙のジャンドール王が話しだす。
「これはここに居る者にも話していない事だが良いだろう、折角の機会だ」

そう言って語ったのは昔話しだった。
「遥か以前、クエルノ族とダークエルフ族は一緒だったと古い魔導書には書かれて有る」
「何ですと!」
「本当ですか!」
驚く息子たちとアルコンだ。
「まぁ待て、どう一緒かは記されてはいない。種族を辿れば繋がるのか、単に一緒に生活していたのかもしれん。しかし、オスクロ・マヒアを使えるのは我ら二つの種族だけだ。それが意味するのは、皆の頭の中に有るはずだ」

全員で同じ答え先祖は同一を出していた。
「とはいえ、仮にそうだとしても現代では遠い親戚のような存在だ。繋がりはオスクロ・マヒアと言語だ」
「言語?」
「ふむ。その良い例がモンドリアンだ」
「えっ俺の名前?」
いきなり名前を呼ばれたので驚いたエルヴィーノだ。
「アルコンは名の由来を知っているか?」
「いいえ知りません」
「では古い言葉の意味を教えよう」
全員がジャンドール王を見ている。

「モンドリアンとは二つの意味が有り、モンとドリアンだ」
(あれっ何処かで聞いたぞ)
「モンとは古き言葉で、真の、本当の、と言う意味が有る」
(モンドラゴンと同じだ)
「そしてドリアンとは・・・王だ」
「「「なっ!」」」
全員が驚いた。
勿論エルヴィーノもだ。
「真の王であるモンドリアンがダークエルフの王である事は紛れもない事実だ。過去は兎も角、これからの未来を”真の王”がどのように切り開くのか儂も見て見たいのだ」

(ちょっと待ってくれよぉ、俺って王様だって言いふらしてたのか? 恥ずかしいぃ)
幼少期の隔離された生活と性奴隷として引き篭もりしていた生活が身に染みているエルヴィーノは、些細な事を気にするのだった。それで良いのか真の王よ。

するとジャンドール王が問題発言をした。
「もしかすると昔、我らの真の王が新天地を目指して旅だった先が、かの地だったかも知れないぞ」
それはクエルノ族の王も意味する事でもあるが息子達は否定的に思っていた。

まずはその復讐の相手をどの様にしたいか聞いて見ようと、場の不穏な雰囲気を察してエルヴィーノが発言した。
「解かりました。ではアルコンさんとジャンドール王に聞きますが、ダークエルフの国を殲滅した者を知ってどうされますか?」
「一族の無念を復讐し皆殺しにしてやる」
直ぐに答えたのは襲う気満々のアルコンだ。
「敵国を調べ然るべき対応をしよう」
慎重な返事をしたジャンドール王だ。
「それは戦争ですか?」
「そうなる可能性も有る」
「他種族なのに?」
「可能性の話しだ」
しつこく聞くが断言しないジャンドール王だ。

「では、もしも戦争でアルコンさんが勝ちました。その後はどうしますか?」
「どうとは?」
「戦後処理ですよ」
「勿論生き残りは奴隷として扱い、その国を奪う」
「奪うとは?」
「奪うは奪うだ」
憎しみを返すだけで何も考えて無いと思ったエルヴィーノだ。
「ジャンドール王はどのように考えていますか?」
「過去の例で例えるならば、滅ぼされた国は属国や支配下になるのが通例だな」
「では支配下にしたいと」
「仮の話しだ。我が国とダークエルフの国は国交が有った記録が無い。今は存在しない縁も無かった国にどこまで加担するかは別の話しだ」

実際、戦争となって勝てば属国や支配下に出来る。
負ければノタルム族の損害も有るだろう。
誰も死なない戦争は無いのだから。
ではアルコンの場合はどうだろう。
一族が何人存在するかは聞いていないが、仮に100人居たとしても全滅に近い結果になるだろう。
そうとなれば。

「2人の最終目的は敵対国をどのような方法を取ってでも我らダークエルフの血族が支配下にすると考えて良いですか?」

「勿論だ!」
「モンドリアンの具体的な考えを聞きたいのぉ」
間髪入れずに返事をしたアルコンに対してジャンドール王は慎重だ。

「解かりました。俺がダークエルフとしてオスクロ・マヒアを使う事。そしてシーラ嬢と戦いに勝って戦争の原因と顛末を説明し、その国を支配する方法を話せば良い訳ですね」

「その通りだ」
「では説明は明日の戦いの後にします」
「何故だ」
「報酬ですよ」
「シーラを嫁にする事か?」
「モンドリアンさん。シーラはアレで結構強いですよ」
国王同士の話しに入って来たのはブスカドールだ。
「後で弱点とか教えてください」
「高いぞ」
「ええっお金取るの?」
「そりゃもう」
冗談を言っていると「ブスカドールッ!」雷が落ちます。
「もしも、シーラ嬢と結婚するならば俺達は親戚関係となります」
「うむ」
「お話ししますよ、俺の秘密を。だから今は話せません」

”知りたい、教えろ”

その欲求はジャンドール王、アルコン、デセオ、レスペト、ブスカドールの三兄弟に室内に居た数人の戦士までそう思っていた。だが
「良かろう。そこまで言うのであれば見事シーラに勝って娶り、我らに教えて欲しい」
「ええっと、アルコンさんとジャンドール王だけで良いよね?」
「どうしてですかモンドリアンさん」
ブスカドールが文句を言ってきた。
「そうだシーラの婿ならば我らの兄弟だぞ」
憤る長兄まで口を挟む。
「たとえ義理でも家族の事は知りたいものだ」
眉間にシワを寄せ、静かに語りかけた次兄の言葉に諦めて「解かりました」と返事をしたエルヴィーノだった。

「良し、話しは終わりだ。宴の用意をしろ」
そう言って部屋から出て行ったジャンドール王。
(まだ日の高い内から宴だなんて)と思っていたが三兄弟はここで全員が笑顔になった。
(アルコンさん)
(なんだ)
(昼から宴ですが皆さん酒飲みなんですか? とても嬉しそうですが)
(くくくっそれはお前のせいだ)
(ええっオレェ!)
(ああ。国王は滅多に宴を開かない。こんな昼からなど俺も初めてだ)
(それって俺が原因ですか?)
(そうだ。それだけお前を気に入ったと言う事だ)
(マジで!?)
(それにあの気難しい三兄弟も楽しそうだ)
(そんな兄弟が俺を受け入れると?)
(何故かは解らん。だが妹が原因だろう)
アルコンとのヒソヒソ話に入って来たのが長兄だ。

「アルコン。聞こえたぞ。誰が気難しだとぉ?!」
「いや、繊細な方々で」
「俺も聞こえたよぉ。もう女紹介するの止めようかなぁ」
ブスカドールが爆弾発言をする。
「なっ何もそれを今言わなくも!」
「明日には我ら義兄弟となるのだ。余計な入れ知恵は困りますねぇ」
次兄も参入。
「いや、それは、その」
「大丈夫ですよ皆さん。俺はもっと酷い義父達を相手していますから」
「ほぉ」
「何何!」
「どんな方達ですか?」
例の2人組の義父に三兄弟が食いついた。

「その話はいずれ話すとして、妹さんの事ですが」
「シーラがどうかした?」
ブスカドールが返事をした。
「はい。俺は余り戦うのが得意では無いので、彼女の得意な攻撃や魔法が有れば教えてもらえれば助かります」
「因みにモンドリアンさんはどの程度の強さですか?」
全員が興味深々で見ている。
「いやぁ全然弱いですよ。妻にも勝てませんから」
「またまたぁ」
全く信じてくれない三兄弟は笑顔で見ていた。
「本当ですよ。あっ!」
エルヴィーノは思い出した。
自らの力の証明となる証しだ。
「冒険者ギルドの認識票持っていますよ」
エスパシオ・ボルザから出した認識票を見せた。

オスクロ・エチセロ暗黒魔法師アルジェントゥム19銀19等級グラドス”

これは更新していないので登録時の等級だ。
「「「ふ~む」」」
三兄弟は困っていた。
(本当にアルジェントゥムなのか?)
(このままではシーラに勝てないぞ!)
(ふ~む。どうするか) 
どうやら冒険者ギルドはこの国にも有るらしく、困っている表情の三兄弟だ。

「あのぉシーラ嬢はどの位強いのですか?」
エルヴィーノの質問に「兎に角死ぬな」と長兄の助言。
「逃げろ」
次兄の助言。
「・・・まぁグラキエース・マヒア氷の魔法フエゴ・マヒア火の魔法アグア・マヒア水の魔法ティエラ・マヒア土の魔法の攻撃は上位魔法を使えるかなぁ」
ボソリとブスカドールが教えてくれた。
「そりゃ凄いや。上位魔法を使えるなんて参ったなぁ」
全く参って無い表情で明るく受け応えするエルヴィーノだ。

「大丈夫なのか?」
心配そうなブスカドール。
「えっオスクロ・エスクード暗黒盾で防げるでしょ」
「確かにそうだが熟練度で違うぞ」
エスパシオ・モダンザ近距離空間移動で逃げつつ・・・どうしよう。傷つけると不味いし」
「大丈夫だ」
この場合大丈夫はアルジェントゥムでは傷付ける事も出来ないと言う意味だった。
「ええっオスクロ・エスパーダ暗黒剣で切り合いになったら大変ですよ」
「大丈夫だ」
同じ魔法剣でも熟練度はシーラの方が上だと思っている三兄弟だ。
「まぁ傷くらい直ぐに治すと思いますが・・・」
「あの全身鎧を着こんで戦うのかな?」
「だろうな」
心配する三兄弟が交互に返事をしてくるが「何とかします」と言い切ったので不安な表情だが何も言わなくなった。
エルヴィーノは意識を失わせて勝とうと思っているが問題はその方法だった。
その場では手段が思い浮かばず、宴の用意が出来たと案内が来て移動する事となった。

会場は小ぢんまりとした一室でジャンドール王と三兄弟にアルコンとエルヴィーノだけだった。
「まずは我らだけでの宴だ」
そしてダラダラと夜まで飲んで食べる中、他国の事情を問いかける三兄弟に、城下街オリゾンの話しを聞いて盛り上がった。








何故か”魔族”に受け入れられた。
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