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第7章 レース編

第199話 ドス・パラ・ドスの準備

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アンドレアとプリマベラに連絡した。
(妻達の戦い振りを2人にお見せしますので、日時を決めてください)
母娘の間では内密に話してあるそうで、事前に相談していたので簡単に視察の日が決まった。
先日と同じ場所に五人で転移して義母たちに説明した。
「そのラナ・デプレタドルと言うのは大丈夫なのですか?」
アンドレアからの質問だ。
「非常に危険です。ですが、強さでは妻達の方が遥かに危険です。因みにアギラ族の長老が大昔の口伝を知っていますから聞いてください。力説されますよ!」
「そうなの? 帰ったら呼んでみます」

アンドレアに長老にはどこまで話しても良いか説明し妻達に準備させた。
二度目の練習だが妻達にはアレグリアの闘技場を視察させ大きさを体感してもらってあった。
「じゃ始めてくれ」
義母たちは、お互いの娘が魔法で変わって行く姿を見て驚いている。
アンドレアはロリのサント・アルマドゥラを見た事は有るが遠目だったので、間近で見る姿はまさしく神々しい姿だった。

一方のプリマベラは初めて見る神獣降臨を見てロリ同様に”凄い”を連呼する。
お互いの娘達を見て互いに褒め合う母達だ。
そんな事はどうでも良いが口は出さないエルヴィーノだ。
女性の自慢話に割り込むと後々面倒なので、そのようなミスは妻達だけで十分だと思っている。

切りの良い所で「はじめてくれ」と再度指示を出す。
空を駆ける2人が闘技場を想定した巨大な防護壁サントゥアリオ・ディ神の聖域オスを展開しエルヴィーノが義母たちに説明する。
折角なので2人の義母を特等席に案内した。
特等席とは黒い毛布だ。
上空から観覧した方が良いと思ったのだ。
「じゃ、召喚するぞ!」
サントゥアリオ・ディオスの圏外から召還し、中心に現われたのは4~5mの魔物が10体だ。
「黒竜王、アレが?」
「ええ、屈強な獣人の戦士が100人居ても一体を倒せるか分からない強力な魔物です」
「ねぇ、大丈夫なの国王」
アンドレアがその大きさに驚きエルヴィーノが再度説明しプリマベラが実物を見ると不安がる。

「何度か練習しましたから、安心して見てください」
するとパウリナが鳴いて辺りが雷光で光、バチィィィン。
バババンッと魔物が破裂して行った。
「「凄い」」
2人の義母の率直な意見だ。
だが、物言いが有った。
神獣降臨したままで問いかけた。
「パウリナ、魔法を唱える時に何と言ったの?」
(しまったぁ! やはりそこを突っ込まれたか!)
パウリナは「グルグルグルにゃー!」(イラ・デ・ディオス神の怒り!) と言っているが義母たちには鳴き声だけがした。
「「・・・」」
「いいのよパウリナ。私は凄く好き。ただね、可愛すぎて威厳が無いの」
パウリナの表情が面白い。
ガーンって顔を巨大な猫が口を開けて固まっている。

「パウリナは可愛くて良いの。黒龍王! 何とかして」
あぁあ、義母からの無茶な要望が出ました。
「じゃ観客に分かりやすくロリが指示するのはどうだろう?」
「それよ!」
決まりました。
他の母娘は傍観しているが、エルヴィーノの意見を受け入れてくれたようだ。
(良かった)
「それでですね、再度お二人に相談と協力が有ります」
「「何でしょうか?」」
「では続きは応接室で」
確認を取り転移した。

「視察はどうでしたか?」
「「凄かったわ」」
そして交互に話し出す。
自分の娘を褒めちぎるのだ。
しかし、話しを折るようにして割って入る。
「だが、魔物がどの位強いのか解らないでしょ?」
「「それは・・・」」
口を閉ざした2人の義母。
「俺が説明した魔物一体で獣人100人を簡単に倒すと言うのは冗談で無いのです」
難しい顔するアンドレア。
「だから、一般獣人達にも分かりやすく実演する事でどうでしょうか?」
「どうやって?」
ニヤリと笑う黒龍王。
「それぞれの街には死刑囚や囚人たちが居ますよねぇ。奴らを使うのですよ」
「あぁ、解かったわ。死刑囚に戦わせるのね」
「仰る通りです」
「囚人が沢山居ると国の財源が無駄になりますからねぇ。彼らには戦って勝利すれば釈放と言えばやる気が出るでしょう」
「国王も人が悪いわねぇ」
(プリマベラに言われたけど俺、人じゃ無いし)
「全て妻達と国庫の為です!」
「「それで行きましょう!」」
間髪入れずに義母たちの快諾を得た。

2人の義母が承認したら、怖いものなしだ。
全て滞りなく進んでゆく。
誰に何を言われても義母の指示と言えば問題無かった。
国王に力が無いのではなく、実務は義母たちが裏で糸を引いているからだ。
妻達もまだ若いので、実際の王国運営は義母だと言っても過言では無い。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


アンドレアがアギラ族の長老を王宮に呼び出した。
黒龍王や前獣王であれば分かるが前王妃なので真意が解らなかった長老だ。
例え部族長でも国の運営を王妃の母が舵を取っているとは本人アンドレアも言えないのだ。
だから全部黒龍王の指示になっている。
「長老、これが何か分かりますか?」
対面でソファに腰かける長老は、誰が書いたのか解らない下手くそな絵(アンドレア作)を見た。
「こっ、これは!」
下手くそでも理解してしまった長老。
「知っているのね」
うなずく長老。
「一体これは誰が書いたのですか!」

「何故そんな事を知りたいの?」
「これは我が種族に伝わる口伝でのみ知る事が出来る魔物です」
「そうですか。ですが、私はデプレタドルが成す統べも無く無残に殺されて行く様をこの目で見ました」
「そっ、それは! 黒龍王様が処理されたのですか?」
「いいえ違います。この国最強の獣人にです」
「おおおおっ!」
「ですが、あの魔物がそんなに恐ろしい魔物に見えないのです」
「そのような事は有りません。あの魔物は本当に恐ろしいヤツらです」
「それでね、族長。あなたに協力して欲しい事が有るの」
余り良い流れでは無いと察した長老だが、最初から逃げ場は無くアンドレアの計画に組み込まれて行った。

アンドレアとプリマベラにエルヴィーノが密かに計画したのは、黒龍杯闘技大会で優勝した2人と黒龍王が召喚する大陸最強の2人の戦いでお仕置きを実行。
成す統べも無く痺れて退場させてから、アギラ族の長老に昔話をしてもらう。
そして、囚人達を入場させ強さを証明すれば解放と言う特典を目指し戦わせる。
対戦相手は召喚された古代の魔物達だ。

囚人達には本人の防具に武器を持たせ魔法も許可する。
だから先の戦いで使用したサントゥアリオ・ディ神の聖域オスはそのまま使い、国民に危害が出無い様に配慮する。
ここでロリの事を褒めてもらう。
そして古代の魔物を召喚する。
予定は10体だ。
囚人は50人から100人を予定している。
獣人だけでは無く、アルモニアからも掻き集める予定だ。
武器も持たないし魔法も使わない魔物に大勢の囚人が抵抗も虚しく食い殺されれば、国民の恐怖を煽る事が出来るだろう。

そこに現れる先程の2人だ。
囚人は全員喰われても構わないが、後の宣伝の為に1人か2人程度は生きていた方が使えるかもと3人で考えていた。
勿論、使えるとはロリとパウリナの為に”悔い改めて”信者となり2人を称える事だ。
入場者は成人以上で、高齢もダメだろう。
招待は一般獣人と人族(主に教会関係者)を予定している。
特に獣人は全ての族長に観覧させて、パウリナの強さを見せつける事が重要だ。

空を駆け、直接攻撃するのはパウリナだが、全ての観客を守る強大な魔法防御壁を随時展開するロリも称えられるだろう。
全てがそれを目的にしているからだ。







ドス・パラ・ドス(2対2)
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