192 / 430
第7章 レース編
第192話 相談と提案
しおりを挟む
(あなた。相談したい事が有るから来て)
この様なロザリーの呼び出しは真面目なモノだ。
女性を相手にしていなければ直ぐに飛んで行く。
(急ぐ?)
(出来れば早く)
(分かった。もうしばらくして向うよ)
(待っているわ)
たまたまペロ族とドラコ族の”乱闘”に巻き込まれ、2人を昇天させてからの転移だ。
毎回の事だがリンピエサとエクステンギル・オロールを使い綺麗になって向った。
この二つの魔法を必ず使ってから妻達に会う様にしている、保身第一の夫だ。
伯爵家の自室に戻ると無言で部屋に入って来るなり鍵を掛け、膝の上に馬乗りになって唇を重ねて来た当家の主だった。
しばし、成すがままで居ると満足したのか要件を言ってきた。
「あなた、相談したい事が有るの」
知ってるから早く言えば良いのにと思いながら優しく訊ねた。
「何だい?」
「あのね、フリオがナタリーをお嫁さんに欲しいって言うの」
「へぇフリオもやるなぁ」
そして前日にあった王宮での出来事を説明した。
「なるほど。じゃナタリー次第だね」
「だから問題は歳の差なのよ」
「分かっているよ。だからナタリー次第だよ」
「何が?」
「その覚悟が有るのかってね。他人の目や建前を気にするなら、それも仕方が無いよ。可哀想だがフリオには諦めてもらう」
「そうねぇ」
「だが、ナタリーがフリオを選ぶのであれば、俺も条件付だが協力しよう」
「なんであなたが条件を付けるの?」
「別に俺じゃ無くても良いよ。ロザリーが言う方が良いかな?」
「何なのよ」
「ロザリー。君の再現だよ」
キョトンとする女神。
「要はスプレモ・デセオ・マヒアを使うのさ。ただし、条件が有る」
ハッとして気づくロザリー。
「フリオに合わせるのであれば200歳位だろう。そうなれば対外的にナタリーが怪しまれる」
「そうね。今の年齢から200歳となると、おばさんと子供だわ」
「だからナタリーには暇を出す」
「えっ、そんなっ、辞めさせる必要は無いわ」
「確かにね。だけど2人の幸せとメイド達に、もっと責任を持たせるためにもナタリーを卒業させる方が良いと思うよ」
「でもっ・・・」
「そう言えば王宮からメイドの紹介も有るから、入れれば補充がきくから良いだろ?」
「・・・」
黙っている2人。
「ねぇ、それってもしかして・・・」
「ああ、名前は変えた方が良いよな」
飛び付いて来たロザリーに、そのまま蹂躙されてしまった。
要するに魔法で若くなったナタリーがメイドを辞めて、名前を変えて王宮からの紹介で伯爵家に勤めだす。と言う計画だ。
そのまま結婚しても構わないが2人の事を考えた方法だ。
ロザリーは早速行動に出た。
一方のナタリーは普段通りの仕事をしているが、どことなくうわの空だった。
昨夜は感動の余り我を忘れてフリオを求めてしまったが、冷静になって考えれば自ずと答えは出てくる。
”あの子の為にも身を引こう”と強く考えを改めていた。
「ナタリー!」
「ハイ」
「私の部屋に」
「畏まりました」
(来た! ロザリー様からの呼び出しだ。フリオとの事を聞かれるに決まっている)
決めた事を伝えると心に強く念じロザリーの執務室へ紅茶セットを持って向うナタリーだった。
ソファに座り目の前の主と対自しているメイド長。
「ナタリー。あなたに確認したい事が有るの」
ビクンッとしたナタリー。
まるで何か失敗して怒られているな錯覚さえあった。
「フリオの申し出を受けるの?」
聞かなければいけない事と答えなければいけない返事
ハイかイイエだが今回のナタリーは
「・・・私は、お断りしようと思います」
ロザリーは知っていた。
自分の事よりもフリオの将来を考えて身を引くだろうと。
「そうですか。あなたが決めたのなら何も言いません」
沈黙になる。
「フリオは辛いでしょうが、あなたと別れて屋敷を出て行ってもらいます。でも、彼は人気者になりましたから若い女の子が沢山言い寄って来るでしょうね。フリオも結構可愛いし、アレだけの人気ですからねぇ、賞金が出て裕福にもなりましたし、どんな女性を選ぶのかしらねぇ」
プルプルと震えているナタリー。
「ナタリー。もう一度確認ですが本当に別れるつもりですか?」
「・・・ハイ」
「あなたがフリオの将来を考えての事ですね」
「・・・ハイ」
「フリオが別の女性と結婚しても良いの?」
「・・・ハイ」
「ではあなたの目からこぼれ落ちる涙は何故?」
「!・・・」
「本当に良いの? 建前では無くてナタリーの本心を聞かせて」
「わたしは・・・」
「私にとって母とも姉とも言えるあなたの為に何でも協力するわ」
すると声にならない嗚咽と共に思いを絞り出す。
「わたしは・・・フリオを・・・愛しています」
「知っているわ、それで」
溢れ出る大粒の涙と共に心の声を言葉にした。
「フリオと・・・結婚したいです」
「大丈夫よ、私に任せなさい。でもねナタリー。あなたにも覚悟が必要よ」
「・・・ハイ」
ロザリーの言う覚悟をナタリーは偏見の眼差しに耐える心と解釈した。
エルヴィーノの考えた予定を説明するロザリー。
まず暇を出す。
王の前で永遠の愛を誓う。
改めてメイドとして雇う。
まだ魔法の事は控えてあり、”王の前で永遠の愛を誓う”事が重要と認識したナタリーだ。
その為にはメイド達の引き継ぎ等も有る。
ナタリーの横に座り優しく語りかけるロザリーは立場が逆転していた。
過去はロザリーを宥めたり励ましたりするのがナタリーの役目だったのだが今回に関しては、過去のお礼を返す様に気を配って接したロザリーなのだ。
そして
「明日もう一度確認しますから、2人で話すのよ。決して1人で決めてはダメだからね」
うなづいたナタリーは深々と頭を下げお礼をする。
「ありがとうございます」
「もう止めて、私達は家族同然なのよ」
翌日の昼食時、ナタリーとフリオが2人でロザリーの前にやって来た。
「ロザリー様」
「決心は付きましたか?」
「ハイ、お受けしたいと思います」
「2人ともおめでとう」
照れるナタリーとフリオだった。
そうなると話は早い。
2人に最終確認する為にエルヴィーノを執務室に呼び寄せる。
(あなた、2人が承諾したわ。今後の打ち合わせを四人でしたいから、直ぐ来て)
いつ如何なる場合でもこの様な呼出には返事をする。
それを怠ると面倒な事になるからだ。
(直ぐに戻るよ)
たまたま、予定が無かったので駆けつけた。
実はエルヴィーノはフリオとは余り親しくは無い。
屋敷で顔を合わせるが挨拶や会釈程度だ。
フリオがどう思っているか知らないが、エルヴィーノはロザリーから教えてもらったので知っていたのだ。
お互いが性奴隷だと言う事を。
だから妙に話しづらいく疎遠になっていた。
そんな四人が一堂に向き合っていた。
ロザリーがフリオの前でもう一度説明をする。
全てはフリオの為、しいてはナタリーの為である事を確認してもらうように話した。
そして、エルヴィーノから重要な事を告げられる。
「ナタリーには屋敷をでたら、ある組織に入ってもらう」
「あなっ」
ロザリーが”あなた、聞いて無いわ”と言う前に手で止めた。
「この組織の責任者はコルト家当主ポルトン・デ・コルトだ。そして組織に入る事もブリンクス王の条件だ。更に、公爵家に再度働いたとしても組織からの執行となる。そこを理解して欲しい」
不満そうなロザリーだ。
「屋敷で働いても命令は組織が上と言う事ですね」
「その通り。理解が早くて助かるよ」
「あなた!」
(忘れたのか、あの魔法を使った者は全てゲレミオで管理する事を)
小声で耳打ちすると「あっ」と思い出したロザリー。
「一応、当家の主も納得してもらっている」
相槌を打つロザリー。
「ナタリーは特に心配する事は無いよ。基本的に伯爵家の仕事が中心だ、ただしロザリーへの報告もあるからゲレミオの会議には参加して欲しいな」
「ゲレミオと仰いますと? ロザリー様はご存じなのでしょうか?」
「それは後々仲間から説明させよう。勿論ロザリーは知っているがゲレミオには参加していない。あと、今話している事も絶対に他言無用だぞ、フリオ!」
「ハイ」
「ふむ、例え親兄弟友人に屋敷の者、王宮だろうが全てだ。この4人以外は話す事は禁止だ」
「ハイ」
そして、ゲレミオから使者が来た。
ナタリーは後に続き、城下街アルバにある事務所へ向かった。
フリオにはエルヴィーノとロザリーから最後の確認があった。
「フリオ、お前は人が死ぬところを見た事があるか?」
「ハイ」
「あら、その若さで? いつなの?」
「ハイ、黒龍襲来事件の時です」
「あぁ」と納得した2人だ。
「では、これから話す内容を聞いて返事次第では、お前も同じ運命を辿る事になる」
真剣な眼差しに身震いしたフリオ。
「ナタリーはお前の為に何もかも捨てるつもりで居る」
「えっ」
「だからお前の気持ちが知りたい」
「ハイ」
「ナタリーのどこが好きだ?」
「全部です」
笑顔のロザリーと、想定した返事だったので続けるエルヴィーノ。
「ナタリーが今よりも年を取ったらどうする?」
「今までよりも尽くします」
ヤレヤレだ。
「では、今よりも若返ったとしたらどうする」
「空想の話しであれば、今までよりも愛します」
(なんか、つまらない返事だと思うのは俺だけか?)
「では、どんな姿になったとしてもお前の愛は変わらないのだな?」
「勿論です。僕は一生ナタリーだけを愛します」
ドンとエルヴィーノに肘打ちが当った。
「素晴らしいわ、フリオ。それでこそ当家の騎士です」
なぜ肘打ちが来たのか全く理解出来なかったエルヴィーノだ。
浮気は完璧に隠してあるし、妻が増えたのは不可抗力で自分は一切悪くないと思っている。
大体その話を持ち出すのも、いまさらだ。
だから何も無かったようにその場をしのいだ。
一方のナタリーはゲレミオの事務所で打ち合わせをしていた。
3人の男性でオセアノ、プライヤ、イスラと2人の女性でネブリナとカリマが相手をしてくれた。
5人は見るからにナタリーよりも若く仲間が増える事を嬉々として喜んでいた。
一通りの説明を聞いてからオセアノが最後に告げる。
「それではナタリーさんが正式に一員となられるのは儀式を済ませた後に成りますので、その時に最も重要な事をお話しします」
「まだ、ゲレミオの一員では無いと?」
「今は候補です」
「はぁ」
「あなたは”陛下”から特別に儀式を許されたお方です。それまではネブリナとカリマがあなたのお世話をしますので何なりと聞いてください」
王、国王、陛下など国やしきたりによって様々な呼び方があるので聞き流したナタリー。
今回の場合はブリンクス王の事だと思っていたナタリーだった。
ロザリーからブリンクス王への報告を済ませ、ナタリーの決意の日を決めるだけだった。
「ロザリー様」
「何かしら」
「次の月一杯で区切らせて頂きます」
「そうですか、分かりました。そのように段取りしましょう」
翌日屋敷の者全員が集められナタリーの退職が告げられた。
辞めないでと泣きながら懇願するメイド達。
次のメイド長を指名したアメリアを励ますナタリー。
「これからはあなたがメイド長よ。精進しなさい」
「ハイ」
「今後、私は一切奉仕の仕事は行いません。私が居なくとも皆さんで対応できるか、しばらくの間検査します。良いですね皆さん」
「「「ハイ、畏まりました」」」
☆
ナタリーが退職します。
この様なロザリーの呼び出しは真面目なモノだ。
女性を相手にしていなければ直ぐに飛んで行く。
(急ぐ?)
(出来れば早く)
(分かった。もうしばらくして向うよ)
(待っているわ)
たまたまペロ族とドラコ族の”乱闘”に巻き込まれ、2人を昇天させてからの転移だ。
毎回の事だがリンピエサとエクステンギル・オロールを使い綺麗になって向った。
この二つの魔法を必ず使ってから妻達に会う様にしている、保身第一の夫だ。
伯爵家の自室に戻ると無言で部屋に入って来るなり鍵を掛け、膝の上に馬乗りになって唇を重ねて来た当家の主だった。
しばし、成すがままで居ると満足したのか要件を言ってきた。
「あなた、相談したい事が有るの」
知ってるから早く言えば良いのにと思いながら優しく訊ねた。
「何だい?」
「あのね、フリオがナタリーをお嫁さんに欲しいって言うの」
「へぇフリオもやるなぁ」
そして前日にあった王宮での出来事を説明した。
「なるほど。じゃナタリー次第だね」
「だから問題は歳の差なのよ」
「分かっているよ。だからナタリー次第だよ」
「何が?」
「その覚悟が有るのかってね。他人の目や建前を気にするなら、それも仕方が無いよ。可哀想だがフリオには諦めてもらう」
「そうねぇ」
「だが、ナタリーがフリオを選ぶのであれば、俺も条件付だが協力しよう」
「なんであなたが条件を付けるの?」
「別に俺じゃ無くても良いよ。ロザリーが言う方が良いかな?」
「何なのよ」
「ロザリー。君の再現だよ」
キョトンとする女神。
「要はスプレモ・デセオ・マヒアを使うのさ。ただし、条件が有る」
ハッとして気づくロザリー。
「フリオに合わせるのであれば200歳位だろう。そうなれば対外的にナタリーが怪しまれる」
「そうね。今の年齢から200歳となると、おばさんと子供だわ」
「だからナタリーには暇を出す」
「えっ、そんなっ、辞めさせる必要は無いわ」
「確かにね。だけど2人の幸せとメイド達に、もっと責任を持たせるためにもナタリーを卒業させる方が良いと思うよ」
「でもっ・・・」
「そう言えば王宮からメイドの紹介も有るから、入れれば補充がきくから良いだろ?」
「・・・」
黙っている2人。
「ねぇ、それってもしかして・・・」
「ああ、名前は変えた方が良いよな」
飛び付いて来たロザリーに、そのまま蹂躙されてしまった。
要するに魔法で若くなったナタリーがメイドを辞めて、名前を変えて王宮からの紹介で伯爵家に勤めだす。と言う計画だ。
そのまま結婚しても構わないが2人の事を考えた方法だ。
ロザリーは早速行動に出た。
一方のナタリーは普段通りの仕事をしているが、どことなくうわの空だった。
昨夜は感動の余り我を忘れてフリオを求めてしまったが、冷静になって考えれば自ずと答えは出てくる。
”あの子の為にも身を引こう”と強く考えを改めていた。
「ナタリー!」
「ハイ」
「私の部屋に」
「畏まりました」
(来た! ロザリー様からの呼び出しだ。フリオとの事を聞かれるに決まっている)
決めた事を伝えると心に強く念じロザリーの執務室へ紅茶セットを持って向うナタリーだった。
ソファに座り目の前の主と対自しているメイド長。
「ナタリー。あなたに確認したい事が有るの」
ビクンッとしたナタリー。
まるで何か失敗して怒られているな錯覚さえあった。
「フリオの申し出を受けるの?」
聞かなければいけない事と答えなければいけない返事
ハイかイイエだが今回のナタリーは
「・・・私は、お断りしようと思います」
ロザリーは知っていた。
自分の事よりもフリオの将来を考えて身を引くだろうと。
「そうですか。あなたが決めたのなら何も言いません」
沈黙になる。
「フリオは辛いでしょうが、あなたと別れて屋敷を出て行ってもらいます。でも、彼は人気者になりましたから若い女の子が沢山言い寄って来るでしょうね。フリオも結構可愛いし、アレだけの人気ですからねぇ、賞金が出て裕福にもなりましたし、どんな女性を選ぶのかしらねぇ」
プルプルと震えているナタリー。
「ナタリー。もう一度確認ですが本当に別れるつもりですか?」
「・・・ハイ」
「あなたがフリオの将来を考えての事ですね」
「・・・ハイ」
「フリオが別の女性と結婚しても良いの?」
「・・・ハイ」
「ではあなたの目からこぼれ落ちる涙は何故?」
「!・・・」
「本当に良いの? 建前では無くてナタリーの本心を聞かせて」
「わたしは・・・」
「私にとって母とも姉とも言えるあなたの為に何でも協力するわ」
すると声にならない嗚咽と共に思いを絞り出す。
「わたしは・・・フリオを・・・愛しています」
「知っているわ、それで」
溢れ出る大粒の涙と共に心の声を言葉にした。
「フリオと・・・結婚したいです」
「大丈夫よ、私に任せなさい。でもねナタリー。あなたにも覚悟が必要よ」
「・・・ハイ」
ロザリーの言う覚悟をナタリーは偏見の眼差しに耐える心と解釈した。
エルヴィーノの考えた予定を説明するロザリー。
まず暇を出す。
王の前で永遠の愛を誓う。
改めてメイドとして雇う。
まだ魔法の事は控えてあり、”王の前で永遠の愛を誓う”事が重要と認識したナタリーだ。
その為にはメイド達の引き継ぎ等も有る。
ナタリーの横に座り優しく語りかけるロザリーは立場が逆転していた。
過去はロザリーを宥めたり励ましたりするのがナタリーの役目だったのだが今回に関しては、過去のお礼を返す様に気を配って接したロザリーなのだ。
そして
「明日もう一度確認しますから、2人で話すのよ。決して1人で決めてはダメだからね」
うなづいたナタリーは深々と頭を下げお礼をする。
「ありがとうございます」
「もう止めて、私達は家族同然なのよ」
翌日の昼食時、ナタリーとフリオが2人でロザリーの前にやって来た。
「ロザリー様」
「決心は付きましたか?」
「ハイ、お受けしたいと思います」
「2人ともおめでとう」
照れるナタリーとフリオだった。
そうなると話は早い。
2人に最終確認する為にエルヴィーノを執務室に呼び寄せる。
(あなた、2人が承諾したわ。今後の打ち合わせを四人でしたいから、直ぐ来て)
いつ如何なる場合でもこの様な呼出には返事をする。
それを怠ると面倒な事になるからだ。
(直ぐに戻るよ)
たまたま、予定が無かったので駆けつけた。
実はエルヴィーノはフリオとは余り親しくは無い。
屋敷で顔を合わせるが挨拶や会釈程度だ。
フリオがどう思っているか知らないが、エルヴィーノはロザリーから教えてもらったので知っていたのだ。
お互いが性奴隷だと言う事を。
だから妙に話しづらいく疎遠になっていた。
そんな四人が一堂に向き合っていた。
ロザリーがフリオの前でもう一度説明をする。
全てはフリオの為、しいてはナタリーの為である事を確認してもらうように話した。
そして、エルヴィーノから重要な事を告げられる。
「ナタリーには屋敷をでたら、ある組織に入ってもらう」
「あなっ」
ロザリーが”あなた、聞いて無いわ”と言う前に手で止めた。
「この組織の責任者はコルト家当主ポルトン・デ・コルトだ。そして組織に入る事もブリンクス王の条件だ。更に、公爵家に再度働いたとしても組織からの執行となる。そこを理解して欲しい」
不満そうなロザリーだ。
「屋敷で働いても命令は組織が上と言う事ですね」
「その通り。理解が早くて助かるよ」
「あなた!」
(忘れたのか、あの魔法を使った者は全てゲレミオで管理する事を)
小声で耳打ちすると「あっ」と思い出したロザリー。
「一応、当家の主も納得してもらっている」
相槌を打つロザリー。
「ナタリーは特に心配する事は無いよ。基本的に伯爵家の仕事が中心だ、ただしロザリーへの報告もあるからゲレミオの会議には参加して欲しいな」
「ゲレミオと仰いますと? ロザリー様はご存じなのでしょうか?」
「それは後々仲間から説明させよう。勿論ロザリーは知っているがゲレミオには参加していない。あと、今話している事も絶対に他言無用だぞ、フリオ!」
「ハイ」
「ふむ、例え親兄弟友人に屋敷の者、王宮だろうが全てだ。この4人以外は話す事は禁止だ」
「ハイ」
そして、ゲレミオから使者が来た。
ナタリーは後に続き、城下街アルバにある事務所へ向かった。
フリオにはエルヴィーノとロザリーから最後の確認があった。
「フリオ、お前は人が死ぬところを見た事があるか?」
「ハイ」
「あら、その若さで? いつなの?」
「ハイ、黒龍襲来事件の時です」
「あぁ」と納得した2人だ。
「では、これから話す内容を聞いて返事次第では、お前も同じ運命を辿る事になる」
真剣な眼差しに身震いしたフリオ。
「ナタリーはお前の為に何もかも捨てるつもりで居る」
「えっ」
「だからお前の気持ちが知りたい」
「ハイ」
「ナタリーのどこが好きだ?」
「全部です」
笑顔のロザリーと、想定した返事だったので続けるエルヴィーノ。
「ナタリーが今よりも年を取ったらどうする?」
「今までよりも尽くします」
ヤレヤレだ。
「では、今よりも若返ったとしたらどうする」
「空想の話しであれば、今までよりも愛します」
(なんか、つまらない返事だと思うのは俺だけか?)
「では、どんな姿になったとしてもお前の愛は変わらないのだな?」
「勿論です。僕は一生ナタリーだけを愛します」
ドンとエルヴィーノに肘打ちが当った。
「素晴らしいわ、フリオ。それでこそ当家の騎士です」
なぜ肘打ちが来たのか全く理解出来なかったエルヴィーノだ。
浮気は完璧に隠してあるし、妻が増えたのは不可抗力で自分は一切悪くないと思っている。
大体その話を持ち出すのも、いまさらだ。
だから何も無かったようにその場をしのいだ。
一方のナタリーはゲレミオの事務所で打ち合わせをしていた。
3人の男性でオセアノ、プライヤ、イスラと2人の女性でネブリナとカリマが相手をしてくれた。
5人は見るからにナタリーよりも若く仲間が増える事を嬉々として喜んでいた。
一通りの説明を聞いてからオセアノが最後に告げる。
「それではナタリーさんが正式に一員となられるのは儀式を済ませた後に成りますので、その時に最も重要な事をお話しします」
「まだ、ゲレミオの一員では無いと?」
「今は候補です」
「はぁ」
「あなたは”陛下”から特別に儀式を許されたお方です。それまではネブリナとカリマがあなたのお世話をしますので何なりと聞いてください」
王、国王、陛下など国やしきたりによって様々な呼び方があるので聞き流したナタリー。
今回の場合はブリンクス王の事だと思っていたナタリーだった。
ロザリーからブリンクス王への報告を済ませ、ナタリーの決意の日を決めるだけだった。
「ロザリー様」
「何かしら」
「次の月一杯で区切らせて頂きます」
「そうですか、分かりました。そのように段取りしましょう」
翌日屋敷の者全員が集められナタリーの退職が告げられた。
辞めないでと泣きながら懇願するメイド達。
次のメイド長を指名したアメリアを励ますナタリー。
「これからはあなたがメイド長よ。精進しなさい」
「ハイ」
「今後、私は一切奉仕の仕事は行いません。私が居なくとも皆さんで対応できるか、しばらくの間検査します。良いですね皆さん」
「「「ハイ、畏まりました」」」
☆
ナタリーが退職します。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる