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第7章 レース編
第187話 作戦会議とアレグリアの夜
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ロザリー率いるメディテッラネウス組は一部を除いて上機嫌だった。
「凄いわ、カミラ。カデラも頑張ったわね。ローガン、あなたは周りに気を付けて。前後にアルモニアの選手よ。後続の魔弾を避けつつ、先行者に当てる事を意識して。勿論追い越し際に当てられないようにね」
ちょっと機嫌の悪いローガンは「ウム、解っておる」と返事をした。
もっとも後ろから二番目なので他に作戦も無い。
重要なのは1位2位を如何に確保しつつゴールするかだ。
しかも、自らが考えていた事を他国も考えている様子なのでロザリーは指示を出す。
「最終戦は魔法以外に体当たり攻撃も予測されます。カミラ。貴女はカデラの盾に成りなさい」
「ハイ」
元気良く返事をしたカミラだ。
しかし内心は1位を狙いたい。
「ですが、後ろにはバリエンテの選手が3人して狙って来るわ。2人共魔弾と体当たりを意識して交わさなければならないのよ。今までの経緯を調べると、後ろから2人がかりで魔弾を撃たれると、かなりの確率で当ってしまうわ」
真剣に聞いている2人だ。
「そして、体当たりよ。カデラの機体は一番小さくて弱いわ」
そしてもしも、抜かれてしまった場合も想定して作戦を立てて行った。
「兎に角2人の内どちらかが1位でゴールする事が目的よ」
美しいエルフの顔には一切微笑みは無かった。
全員が真剣にレースに対して向き合っていた。
アンドレア率いるバリエンテ組は慎重に検討していた。
「まずはビエルナスとカニーチェで先行の2人を追い越しなさい。明日の最終戦では体当たり攻撃を許可します。これはビエルナスがお願いね」
「ハイ」
勿論理由は解っている。
機体の耐久性だ。
先行のビエルナスが体当たりで敵を翻弄し、後ろからカニーチェが魔弾で攻撃するのだ。
そして問題の人物だ。
「あなた。後ろにアルモニアの選手が2人居るのよ。大丈夫なの?」
アンドレアは理解している。
このレースが始まった理由を。
「何、心配は要らん。優勝はこの2人のどちらかで良い。我は1人にだけ勝てば良いからな。ガハハハハッ」
(それが心配だから聞いているのに)と思いながら確認する。
「後ろから2人がかりの攻撃よ」
「クククッ我に策有だ」
溜息をつくアンドレアに「後で話す」と言って濁した。
プリマベラ率いるアルモニア組は更に慎重だった。
「明日の最終戦は体当たりを許可しますが、バスティアンは注意して頂戴」
「ハッ」
何を言いたいかは理解しているバスティアンだ。
「あなた。2つ前よ。大丈夫なの?」
「心配無用だ。バスティアンと2人がかりであればネルも先行者も狙い撃ちにしてくれる」
「でも、今日までは」
「力を隠すのも作戦だ」
不安そうにしているプリマベラをよそに自信満々のリアムだった。
そして同じタイミングで、ロザリー、アンドレア、プリマベラが話し出す。
「「「三人とも勝負はペンタガラマに入ってからよ」」」
そう、最終戦は距離が短いのでペンタガラマを一周してから第二城壁を潜り街中の城壁沿いを一周して、大通りを進むとゴールが有る。
そして城壁沿いに街中を角っと曲がる凹みコースを入れたのだ。
しかも2か所だ。
これは公平を記す為に翌朝に連絡する予定だ。
別室でエルヴィーノとマルソは今日までの反省会をしていた。
「もっと順位が入れ替わると思っていたけどなぁ」
「まぁ、ある程度入れ替わっただろう」
「そうだけど、後ろの2人がほぼ変わらなかったからなぁ」
「ふむ。走る事も今後の課題にしよう」
「そうですね。走って順位が変わるのは本来のレースとは違うからなぁ。でもそれも面白いのかなぁ?」
「まぁ、明後日の全体会議で意見を出してもらおう」
「そうですね。選手たちの意見も重要だし」
明日のレース終了には祝賀会を用意してある。
そして、明後日には選手に関係者を集めての会議を予定している。
実際にレースを行なって不都合などを出してもらう予定だ。
これは今後開催される各国のレースで役立つようにする為だ。
アレグリアの旧王城では食事会が用意されており、会場には沢山の獣人が選手達を待ちわびていた。
旧王城は一部を除いて解放されており、一般獣人も自由に出入り出来るのだ。
その熱気はアルモニア以上で会場は盛り上がっていた。
やはり勝負事が好きな種族なのだろう。
会場にネル、ビエルナス、カニーチェが現れると歓声が巻き起こった。
祖国の選手たちだから当然だろう。
前獣王として一着で辿り着いたのだから。
しかし、最後に現れた三人の方が、より歓声が大きかった。
三人と言うよりも1人の女性に集中している様だ。
名指しで呼ぶ声が多い。
実の所、人族の男性と同様に獣人の男性も美しいエルフの女性が好きなのだ。
だからカミラの人気は凄かった。
見た目もさることながら常にトップグループに居て今日は総合得点で一位だから、なおさらなのだ。
カミラの単券を買っている獣人は意外と多いのだ。
これは集計で分かっている。
これは極秘だが、バリアンテでは単券の売り上げはカミラが一番だ。
選手の情報は出してはいないが、性別は教えてある。
カミラの実年齢は伏せてあるがビエルナスと同じ位だとベルデボラに教えたので、民衆には”うまく”説明したのだろう。
その結果が券の売上に直結しているのだから。
そしてアンドレアからロザリーに依頼が有った。
「カミラでも良いし、別の方でも構いませんが、今後のレースにもエルフ国メディテッラネウスからは女性選手の出場をお願いしますね」
ニコニコと微笑んで返していたロザリーだ。
明日は1位のカミラ、フリオ・カデラ、ビエルナス、カニーチェ。2位のネル、バスティアン。3位のリアム、ローガン、ブオの順で一斉にスタートだ。
☆
よいよ、最終レースです。
「凄いわ、カミラ。カデラも頑張ったわね。ローガン、あなたは周りに気を付けて。前後にアルモニアの選手よ。後続の魔弾を避けつつ、先行者に当てる事を意識して。勿論追い越し際に当てられないようにね」
ちょっと機嫌の悪いローガンは「ウム、解っておる」と返事をした。
もっとも後ろから二番目なので他に作戦も無い。
重要なのは1位2位を如何に確保しつつゴールするかだ。
しかも、自らが考えていた事を他国も考えている様子なのでロザリーは指示を出す。
「最終戦は魔法以外に体当たり攻撃も予測されます。カミラ。貴女はカデラの盾に成りなさい」
「ハイ」
元気良く返事をしたカミラだ。
しかし内心は1位を狙いたい。
「ですが、後ろにはバリエンテの選手が3人して狙って来るわ。2人共魔弾と体当たりを意識して交わさなければならないのよ。今までの経緯を調べると、後ろから2人がかりで魔弾を撃たれると、かなりの確率で当ってしまうわ」
真剣に聞いている2人だ。
「そして、体当たりよ。カデラの機体は一番小さくて弱いわ」
そしてもしも、抜かれてしまった場合も想定して作戦を立てて行った。
「兎に角2人の内どちらかが1位でゴールする事が目的よ」
美しいエルフの顔には一切微笑みは無かった。
全員が真剣にレースに対して向き合っていた。
アンドレア率いるバリエンテ組は慎重に検討していた。
「まずはビエルナスとカニーチェで先行の2人を追い越しなさい。明日の最終戦では体当たり攻撃を許可します。これはビエルナスがお願いね」
「ハイ」
勿論理由は解っている。
機体の耐久性だ。
先行のビエルナスが体当たりで敵を翻弄し、後ろからカニーチェが魔弾で攻撃するのだ。
そして問題の人物だ。
「あなた。後ろにアルモニアの選手が2人居るのよ。大丈夫なの?」
アンドレアは理解している。
このレースが始まった理由を。
「何、心配は要らん。優勝はこの2人のどちらかで良い。我は1人にだけ勝てば良いからな。ガハハハハッ」
(それが心配だから聞いているのに)と思いながら確認する。
「後ろから2人がかりの攻撃よ」
「クククッ我に策有だ」
溜息をつくアンドレアに「後で話す」と言って濁した。
プリマベラ率いるアルモニア組は更に慎重だった。
「明日の最終戦は体当たりを許可しますが、バスティアンは注意して頂戴」
「ハッ」
何を言いたいかは理解しているバスティアンだ。
「あなた。2つ前よ。大丈夫なの?」
「心配無用だ。バスティアンと2人がかりであればネルも先行者も狙い撃ちにしてくれる」
「でも、今日までは」
「力を隠すのも作戦だ」
不安そうにしているプリマベラをよそに自信満々のリアムだった。
そして同じタイミングで、ロザリー、アンドレア、プリマベラが話し出す。
「「「三人とも勝負はペンタガラマに入ってからよ」」」
そう、最終戦は距離が短いのでペンタガラマを一周してから第二城壁を潜り街中の城壁沿いを一周して、大通りを進むとゴールが有る。
そして城壁沿いに街中を角っと曲がる凹みコースを入れたのだ。
しかも2か所だ。
これは公平を記す為に翌朝に連絡する予定だ。
別室でエルヴィーノとマルソは今日までの反省会をしていた。
「もっと順位が入れ替わると思っていたけどなぁ」
「まぁ、ある程度入れ替わっただろう」
「そうだけど、後ろの2人がほぼ変わらなかったからなぁ」
「ふむ。走る事も今後の課題にしよう」
「そうですね。走って順位が変わるのは本来のレースとは違うからなぁ。でもそれも面白いのかなぁ?」
「まぁ、明後日の全体会議で意見を出してもらおう」
「そうですね。選手たちの意見も重要だし」
明日のレース終了には祝賀会を用意してある。
そして、明後日には選手に関係者を集めての会議を予定している。
実際にレースを行なって不都合などを出してもらう予定だ。
これは今後開催される各国のレースで役立つようにする為だ。
アレグリアの旧王城では食事会が用意されており、会場には沢山の獣人が選手達を待ちわびていた。
旧王城は一部を除いて解放されており、一般獣人も自由に出入り出来るのだ。
その熱気はアルモニア以上で会場は盛り上がっていた。
やはり勝負事が好きな種族なのだろう。
会場にネル、ビエルナス、カニーチェが現れると歓声が巻き起こった。
祖国の選手たちだから当然だろう。
前獣王として一着で辿り着いたのだから。
しかし、最後に現れた三人の方が、より歓声が大きかった。
三人と言うよりも1人の女性に集中している様だ。
名指しで呼ぶ声が多い。
実の所、人族の男性と同様に獣人の男性も美しいエルフの女性が好きなのだ。
だからカミラの人気は凄かった。
見た目もさることながら常にトップグループに居て今日は総合得点で一位だから、なおさらなのだ。
カミラの単券を買っている獣人は意外と多いのだ。
これは集計で分かっている。
これは極秘だが、バリアンテでは単券の売り上げはカミラが一番だ。
選手の情報は出してはいないが、性別は教えてある。
カミラの実年齢は伏せてあるがビエルナスと同じ位だとベルデボラに教えたので、民衆には”うまく”説明したのだろう。
その結果が券の売上に直結しているのだから。
そしてアンドレアからロザリーに依頼が有った。
「カミラでも良いし、別の方でも構いませんが、今後のレースにもエルフ国メディテッラネウスからは女性選手の出場をお願いしますね」
ニコニコと微笑んで返していたロザリーだ。
明日は1位のカミラ、フリオ・カデラ、ビエルナス、カニーチェ。2位のネル、バスティアン。3位のリアム、ローガン、ブオの順で一斉にスタートだ。
☆
よいよ、最終レースです。
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