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第6章 棘城編2

第167話 出産準備

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転移したエルヴイーノはネル殿の所に向った。

「そんなに慌てて、どうしたのだ黒龍王よ」
そこにはアンドレアも一緒だった。

「ネル殿、一応確認ですがプテオサウラ達が妊娠している事は知っていますか?」
「何ぃ!!!」
「あら、パウリナもプテオサウラも妊娠しているなんて驚きね」
アンドレアは冷静だ。

「どうやら全て同じ時期の出産らしいのです」
「何故そんな事が解るのだ」
当然の疑問を投げてくるネル殿だ。

「はい、黒龍から聞きました」
「何だと! ふ~む」
黒龍と言う単語はネル殿にとって特別らしい。

「ネル殿、フィドを交えて孵化や赤ちゃんの飼育の準備を相談した方が良いと思うけど」
「流石は黒龍王だ。直ぐに会議を始めよう」
2人は龍騎士隊に関係者全員と男のプテオサウラを集めて会議を始めた。

「フィド。一応確認するが、何体が出産予定だ?」
(むっ知っていたのか?)

「当たり前だろ。何故もっと早く行ってくれなかった。卵を持ったままの飛行など、させなかったのに」
(フムやはり、そう言うと思ったぞ。全員が卵を宿しているようだが、我らは女でも戦士だ。子供が出来たからと言って休まん)

「まぁそう言うな、この国の者はお前達の子が出来るのを楽しみにしていたのだからな」
(そうなのか?)

「当然だ、フィド。我らはお前達の子を育てる為にも、どのような環境にすれば良いか聞きたいのだ」
ネル殿が熱弁する。

(そうで有れば我だけの意見より、女達の意見を聞いた方が早いかも知れん)

結局は全てのプテオサウラ達を交えて話し合いになった。
女達の要望は兎に角安心して卵を孵化させる寝床が個別に欲しい。
柔らかい寝床に、美味しい食事だ。
特にプテオサウラだろうが獣人だろうが妊婦の求める物は変わらない要望だった。
ネル殿が至急個別の産卵場所作成の指示を出す。
計画では夫婦で休める広さで五か所作らせた。

それからしばらくして産卵だ。
5組から2個、3個、3個、3個、4個の合計15個の卵だ。
1回の産卵で倍以上の数になる。
この事を見聞きして嬉しくて大騒ぎしているのは他ならぬネル殿と世話係に龍騎士隊の一同だ。

エルヴイーノは再度龍騎士隊全員を集めて話した。
「聞いた話しだが、プテオサウラが産まれて大人になるまでの生存は半分以下だと言う」
ざわめく一同。

「そんな事は絶対にさせんぞ!」
いきどおり立ち上がり叫ぶネル殿だ。

(黒龍王の言った事は事実だ。卵から孵化しなかったり、小さい時に誤って潰されたり、不幸にも殺されたりだ)
フィドの説明に全員が眉間にシワを寄せて苛立っている。

「そこで提案だが、ある程度世話係に任せたらどうかと思ってさ。プテオサウラ達の意見を聞きたいのだが」
耳からはギャーギャーと聞こえるが、”大丈夫なのか?”、“それだったら楽ね”とか不安そうにしている男達と、負担が減る事に喜んでいる女達に別れた。

何分、初めてのこころみなので世話係も緊張している。
しかし、全部孵化させてある程度までの大きさになるまで世話係と龍騎士隊予備軍に担当させる事になった。
大人のプテオサウラは男が長距離の飛行で、女が周辺と近場の飛行に編成を変えて調整する。
プテオサウラの成長は早く、二年で飛行が出来ると言うが騎乗してとなると三、四年は掛るだろう。
体つきも成長によってなので騎乗する隊員の変更と募集をした。

現在の隊員はペロ族がほとんどだ。
当初の要望で小柄で軽い者だったからだ。
プテオサウラ達も成長し、城に来た時よりも随分大きくなっている。
そこで、飛行に熟知したペロ族を幼いプテオサウラの騎乗練習も兼ねて担当させると同時に予備隊員を昇格させる為に猛特訓を始め、更に募集した。
なにしろ、15体も増えるのだから。

因みにフィドの子は2個だ。
大切にしている様子を見ているネル殿も嬉しそうだった。
卵が孵化するまでは10日以上だそうだ。

「それってパウリナの出産時期と重なるな」
「フム、黒龍王はパウリナを頼むぞ。我はプテオサウラ達を見守っている」
「まずいって、後から絶対母娘に攻められるぜ? 何故側に居なかったのかってさ」
「むむっ」

考えているネル殿。
確かにネル殿のプテオサウラに対する気持ちは普段の行動を見ていれば誰しもが解る事だ。
しかし、”自分の娘の出産よりも”となると後で自分にも火の粉が飛んで来そうだったので忠告をした。
まぁ後は本人次第だけどね。
幸せの後に折檻されるのか二重の幸せになるのかは本人にゆだねよう。

パウリナにプテオサウラの近況を報告しに来た。

「パウリナ! 具合はどう?」
「あなた。何も異常は無いよ。ただ・・・運動しないから身体が重いの」
確かに以前よりは、全体的にふっくらしている。

「しょうがないだろう、”2人分”食べているのだから」
”見慣れている”お腹をさすりながらプテオサウラの事を話した。

「とうとう卵を産んだよ。幾つあったと思う?」
「え~分かんないよぉ」
「全部でぇ、15個だ!」
「凄~い! そんなに沢山!」
「ああ、ネル殿は嬉しくて喜んでいたよ」
微笑んでいるパウリナ。

一応庇っておく。
「勿論パウリナの子が産まれるのも楽しみにしているさ」
作り笑いになっていないか心配だったが続けて話した。

「それでさパウリナの出産も、もうすぐだろ? 卵が孵化するのが10日以上かかるって聞いたのさ。となると全員同じ時期に産まれるな」
「ふふふっ楽しみね」
「ああ」
手を取って優しく唇を重ねた。
エルヴイーノの首はパウリナの腕でガッチリと締め付けられて舌を蹂躙された。

「お姉様達から許可をもらっているからね。産んだ後は暫く離れないから!」
ああ、純情だったパウリナが”あの2人”の様な事を言ってきた。
悲しい様な、嬉しい様な、複雑な気持ちだ。



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



再度、コラソンの所にやって来た。
「コラソ~ン。材料持って来たぞぉ」

待っていましたとばかりにヴィオレタがラヴァ・ピエデラ溶岩石をエルヴイーノからコラソンに渡すと
「ではコラソン様」
「ああ、夕方には戻るのですよ」
「ハイ」

元気よく返事したヴィオレタはエルヴイーノの手を掴み下の転移室に連れて行かれた。
そして強制的に転移する。
行き先は秘密の部屋の転移室で、更に下の階に連れて行かれた。

「ちょっと待て、どういう事だ」
問いかけを無視してベッドに押し倒されてしまった。

「この事はコラソン様と相談して決めた”事”です」
何の”事”か解らないエルヴイーノ。

「どういう事か説明してくれ」
ヴィオレタに衣服を脱がされながら聞いていた。

「あなたが浮気をした罰です」
「ちょっ、ちょっと、待ってくれ。俺がいつ浮気したって言うのさ」

鼻先を付けられて止めを刺された。
「ちゃんと見ていましたからね」

エルヴイーノは硬直してしまった。
監視室には遠く離れた場所を見る魔導具が有る。
まさか、あそこで見ている訳では無いだろう。
となると、入った事の無いコラソン専用の部屋に有るのか? 不思議では無いさ、フィドキアの父だからな。
ヴィオレタはコラソンの世話もしているから専用の部屋に入る事が出来る。

「コラソン様から正妻の次に私が罰を与えられると許可を得ましたから。夕方までですが、タップリとあなたを折檻しますからね」

(ああ、麗しき花の妖精王が卑猥な顔で何て事を言ってるんだぁ)
と思いながら真っ裸にされ、成すがままにされて行く。
この事でコラソンを悪く思ったりはしない。
むしろ感謝するべきと思っている。
なぜならこんなに可愛く美しい妖精をくれたのだから。

その香りたるや類が無く、全身から溢れる分泌液は何もかも甘露の様な甘さなのだ。
本当に何もかも忘れて虜になりそうなのだ。
しかし、いつもの事だが調子に乗っているヴィオレタの顔が歪むのが溜まらないのだ。
どちらが良いとは選べない。
だからいつも、前半は蹂躙され後半は攻める。
それの繰り返しだが飽きないのだ。
やはりこの匂いと味は別格だ。

“カンカンカンカンッ”と変な音が鳴った。

「はぁ~もう時間かぁ~」
(なるほど、もう夕方なのか)

時間を知らせる魔導具が鳴ったので最後の追い込みを掛ける。
終わるまで止まらない腰が止まり、激しい息づかいが2人を包む。
何とか許してもらいトレ・デ・エスピナスに戻る準備をした。

コラソンの所に手を繋いで戻ると全てお見通しのコラソンが笑顔で答えてくれた。
「お疲れだったね、モンドリアンさん」
「ああ、いろいろと気を遣わせて悪いね」
「気にしなくても良いですよモンドリアンさん。それよりも、完成しましたよ”石化防止のお守り”」
「ありがとうコラソン」

石化防止のお守りは全部で20個有り前回の倍だ。
「こんなに沢山!?」
「ええ、最初のは失敗しましたからねぇ、ついでに多めに作りました」
「ありがとうコラソン」



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



ネル殿は龍騎士隊を引き連れて故郷の街メレナを訪れていた。
セルビエンテ族の報告をする為だ。

「おおっ良く来てくれた、ライオネルよ」
出迎えてくれた族長達と会合が始まる。

「まずは皆に朗報が有る。ガトー族の者よ、我らは今後一切セルビエンテ族に出会う事は無くなったから安心しろ」
「「「おおっ」」」
喜ぶ一同に物言いを付ける長老が居た。

「それは確かなのか? お前が討伐したのか?」
自分の言葉だけでは説得力が無いと思っていたので自信満々に話した。

「黒龍様と黒龍王が対応してくれたのだ。これ以上の説明は要らんだろう」
「「「おおおおっ」」」
先ほどよりも歓喜する一族だ。

ざわざわと話しが聞こえて来た。
”やはり、あの朝の影はそうだったんだ”、”あの男の言ってた事は本当だったな”、”やっと安心して暮らせる”、”しかし、噂を残せとはな”。
ネル殿が不思議に思い側に居た族長の1人に聞いてみた。

「何か問題でも有るのか?」
「ふむ、実はな、少し前に行方不明だった男が川の上流から現れてな、おかしな事を言っていたのだ。そうだ、その男を呼ぶから聞いてやってほしい」

呼ばれて駆けつけた男がネル殿に説明した。
「大分前、ある日の昼近くに猛烈な嵐に会って吹き飛ばされたようで、いくつも山を飛ばされて運良く海に落ちたのです。そこからずっと歩いて帰って来たのですが疲労と空腹で”河原で倒れていた”らしく、たまたま通りかかった人族の男に助けられ、何とか帰る事が出来ました。その方は私を見て”セルビエンテ族は居なくなるが怖い話として”悪い事をすると、セルビエンテ族が現れて石にするぞ”とガトー族に根付かせるのだ”と言われ、この短剣を頂きました。私は助けてくれたお礼にその事を族長に話しましたが信じてくれませんでした」

見せられたその短剣は宝石が散りばめられて見るからに高そうだった。そして黒い龍の紋様が入っていた。それを見てネル殿は一瞬で理解した。

「こっ、これは!」
「ライオネルよ、知っているのか?」
「勿論だ。我が即位した証しにやった黒龍王の短剣だからな」
「ええええええっ!」
驚いたのは助けてもらった男だ。

「あっあの方が黒龍王様!」
ネル殿は短剣を男に手渡した。

「私などにこのような大事な物を!」
「構わぬ。黒龍王はその事を承知の上、お前に渡したのだろう」
そう言われ思い出したのは”この短剣は見る者が見れば解るだろう”と言っていた事だ。

「なるほど、これで益々信憑性が出て来たぞ」
「ああ、そうだな」
「黒龍王がセルビエンテ族を退治してくれたのだ」
「うむ、しかも我ら一族が増長せぬ様に”昔話”まで用意してくれるとはのぉ」
族長達が都合の良い解釈をしてくれているようだ。






あとがき
あとは、お守りの臨床実験です。
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