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第3章 獣王国編

第90話 2回目の結婚式当日3

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エルヴィーノは婚儀と戴冠を終え、ロリが聖女としての式典を済ませるまでフェブレロ、マルソ、リアムと入り婿4人で待機中だった。
軽く昼食を取りながら時折聞こえてくる歓声で盛り上がっている様子が見なくても分かった。

「しかし凄い事になった物だ」
「何がですか?」
「サンクタ・フェミナ(神聖女)だぞ! 流石は我が娘だ」
「それは我が孫も同じだ」
「じゃワシも我が曾孫は流石よのぉ」
「まぁ皆さんの子孫ですからそうですけどね」
「全ての聖女の頂点だ!」
「サント・アルマドゥラ(神聖魔闘鎧)を見たか!」
「フスティシア・ディオス(神の正義)だぞ!」
「「「とにかくロリは凄い!」」」
「そっ、そうですね」

入り婿3人が交互に自慢されてしまった。
(俺もこんな風になるのかな?)

エルヴィーノは事前にマルソとリアムに来賓や国賓で要注意人物もしくは敵対関係のリストを出してもらっていた。
理由を聞かれ”我らの為に尽くす様に交渉してみる”と言うと、2人共いくら国王でもそれは難しいと言われたので”頑張ってみます”と答えたが、謁見中に魅力出力最大で配下にしようと考えていた。
リストには様々な業種に携わる有力者に国賓達が主にしるしが付いていた。
すると印の無いリストに獣王国の使者を見つけた。

「リアム殿この獣王国の使者と言うのは?」
「ん? そのままの意味だが?」
「誰が来るのか分かりますか?」
「確かお祝いの参列なので女子供と聞いているぞ」

エルヴィーノは一抹の不安が過ぎったので確認した。

「リアム殿、獣王国の使者は一番最後にしてもらえますか?」
「どうしてだ?」

エルヴィーノはマルソの顔をチラッと見て本音をこぼす。

「出来れば会いたくないのですが・・・」
エルヴィーノが困った顔をしているとマルソが助けてくれた。

「実は国王が獣王国で変化の魔法を入手するにあたってチョツトしたトラブルがあってな、棘王との戦いで戦死した事になっているのだよ」

「それはもう手遅れだ、既に3日前から国賓として滞在しているからな」
「本当ですか! 参ったなぁもうバレテるよなぁ」

ゲンナリしたエルヴィーノを見るリアム。
「そんなに厄介な事か? 」
「ハァ」
「私に何でも言ってみろ! 獣王とは無名時代に冒険者として一緒に腕を鳴らした仲だ。久しぶりに会えるかと思ったが使者でガッカリだがな」
「そうですか」

そのやり取りを見ていたマルソが打ち明ける。

「それが棘王から長年連れ去られていた姫を救い出した勇者に姫が結婚したいと言われてな、棘王と共倒れになった事にしたのだが、情報が漏れたようだな」
「そんな事が有りましたか?」
「あぁロリに心配させまいと私に連絡があったよ」
「とにかく今はその事をロリに聞かせたくありません。俺の身勝手ですが協力してください」
「何を言う国王、向こうがそう言っているだけだろう?」
「いえ、それが・・・その場の事情で、返事してしまいました」

“はぁ”と溜息をつくリアムとマルソ。

「まぁ国王の人と成りを見聞きしてきたから、よっぽどの事情だと思うが・・・さて、どうしたモノか」
「お前たちの後ろで、その時だけ獣人語の垂れ幕を持たせたら良いだろう。国王と獣王の友人で元国王が別室で話が有るとな」
「おぉ流石はフェブレロ殿、早速手配しましょう」

エルヴィーノは立ちあがり、”ありがとうございます”と皆に礼を言う。

「余計な礼はいらん。そなたは我々にとっても我らが国にとっても重要な人物で今は国王なのだからな。当然の事じゃ」
「そうだぞ、国王!」

マルソが励ますと頷くリアム。
かなり照れ臭かったが、これでロリの前では無難に対処出来そうだ。
(しかし、国王と言う呼び名は照れくさい)

今日は朝から儀式があり疲労が溜まったが食事をしながら”新しい家族”と獣人の打ち合わせが出来て、幾分安心していた。
午後からは国賓と有力者の謁見が有り、その後は夕食会だ。
それで今日の日程は終わりで、明日は国内の来賓と選ばれた国民との謁見だ。
フォーレも呼んであるしビックリする顔が楽しみだ。


場所は変わり、個室が五つになった謁見室に順番待ちの列が並んでいる。
その中に獣人の一行が居て見回りの騎士から手紙を渡された。
その手紙は前国王リアムからの物で、久しぶりに獣王国の話しをゆっくりと聞きたいから一番最後に回って欲しいと書かれてあった。

ビエルナスは考えているフリをしながら子供に変化した獣王ライオネル・モンドラゴンに見せた。
すると返事が有ったので承知したと告げて一番後ろに移動した。

謁見室には現国王になったエルヴィーノとその妃ロリが座り、エルヴィーノの隣に前国王のリアム、ロリの隣にプリマベラが座っている。
リアムの後ろに親衛隊長のリカルドが立ち、リアムの壁側に騎士が1人、プリマベラの壁側に騎士が1人立っている。

騎士は交代制で裏にも不測の事態を踏まえて10人ほど配置してある。
次々に謁見を済ませて行く。
謁見時間は一組10分だが大体超えてしまう。
そんな中、隣国の要注意人物であるアベストロース帝國のガンソ大使の番が回ってきた。
事前に分かっていたためエルヴィーノは部屋に入るなり最大魅力をぶつけた。すると

「新国王エルヴィーノ様、サンクタ・フェミナ様ご結婚おめでとうございます。わたくしアベストロース帝國の大使でガンソと申します」
「ガンソよ、これからは俺の為に働いてくれるな?」

驚いたリアム。
それは当然の事でリアムは今までこのガンソに"どれだけ煮え湯”を飲まされ来たのか思い出すのも腹立たしいヤツなのだから。
だがその言葉を聞いたとたんガンソの目は見開きポロポロと涙を流しながら言った。

「今日まで生きてきたのがあなた様にお会いするためだと分かりました」
「何故そう思う?」
「身体が、魂がそう叫んでいるのです。このガンソ全てをあなた様に捧げる所存です」

ハァ?っと声が出そうになって慌てて手でふさいだリアム。

「分かった、これからは頼んだぞ」
「ハハッ!このガンソの命を掛けてエルヴィーノ様に尽くします」
「あーそれから私が居ない時など前国王のリアム殿からの指示にも従ってくれ」

「ハハッ、リアム殿とは過去のいきさつもありますが、このガンソ、これよりエルヴィーノ様の配下として帝国の情報を全て提供致します」
「ウム、また連絡するので近いうちに会おう」
「ハッいつでも構いませんのでご連絡ください、直ぐに馳せ参じます」

呆然と見ていたリアムだった。
少なくともガンソと言う男は媚びたり、お世辞などとは無縁の男だとリアムは認識していた為あまりの変貌ぶりに、2人でリアムを騙しているのでは無いかと疑いの眼差しを向けていた。

大体、聖魔法王国に文句を言うのは同様の武力や同じく魔法国に、遠く離れた大国だったが、全てエルヴィーノの魅力で虜にして仲間に引き入れる事に成功した。
当然だ、誰も新国王がそんな事をするとは思わないからだろう。
その光景を見て、リアムは驚きを越えて放心状態だった。
残りの謁見も後わずかで休憩に入るとリアムがブツブツ言っているのでロリとプリマベラに慰めるように促す。

「私は王としての才能が無かったのかもなぁ」
なんて言いだす始末。

「リアム殿大丈夫ですか? 一種の魔法ですよ、ま・ほ・う!」
「魔法ぉ? そ、そうか魔法か、そうだな、ははっはははっ」

チョット壊れかけたが持ち直したリアムだった。

「リアム殿もう少しで最後の謁見なので、お力添えをお願いします」
少し弱気な所を見せる。

「大丈夫だ。私に任せなさい」
「宜しくお願いします」
2人のやり取りを見ていた母娘おやこは楽しそうに微笑んでいた。



そして最後の獣人達一行が謁見室に入る前に説明があった。

「お疲れ様です。これより謁見室に入って頂きますが、中にはカーテンで仕切られております。贈答品を乗せた台車3台をお運びになり、片膝をついてお待ちください。係りの者が国王様達の準備が整い次第カーテンを開きますので、皆様は奥の垂れ幕を読んでください」
「何と書かれてあるのですか?」
「私も聞いておりませんが獣人語で書かれていると聞きました。それでは宜しいですか? ではどうぞ」

案内されて謁見室に入って来た獣人達は説明の通り待っていると宣言された。

「国王陛下とサンクタ・フェミナ(神聖女)様の準備が出来ました。御開帳!」

カーテンが開かれると一同の前に獣人達が跪いていた。

「獣王国の使者の方々、面を上げられよ」

獣王含め一斉に顔を上げ、奥に有る垂れ幕を読んだ。

(新国王と獣王の友人で元国王が別室で話を聞く時間を作るので頼む)

ビエルナスは”男の子”の獣人を見ると指を三つ出したので計画3で進める事にした。



「この度は新国王モンドリアン様、サンクタ・フェミナ様ご結婚おめでとうございます。獣王国を代表しまして、わたくしビエルナスがお祝い申し上げます」
「あっありがとうビエルナス。長旅ご苦労であったな」
「いいえ私どもの旅など国王様の偉業に比べたら些細な物です」

エルヴィーノはこの時、脈拍が上がり嫌な汗が流れ時間の流れが遅く感じていた。
これまでと同じく貢物の説明を聞いて一通り終わるとビエルナスが導火線に火を付けた。

「それでは最後になりますが新国王様とサンクタ・フェミナ様と前国王様に我らが獣王様からのお祝いの言葉を送りたいと思います。宜しいですか?」

エルヴィーノは時間よ止まれと思っていたし、リアムは額に汗があった。
すると男女の子供が前に出てきて変化を解いた。

「ガッ――ハハハハハッ久しいのぉリアムよ! 覚えておるか? モンドリアンも中々似合っとるぞ、その衣装! ガッ――ハハハッ」

エルヴィーノとリアムは椅子から滑り落ちそうになり後ろを見ろと指で合図している。

「分かっていますよ、モンドリアンさん、それにサンクタ・フェミナ様、ご結婚おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます。リカルド! ご紹介を」
「ハッ」

リカルドが獣王ライオネル・モンドラゴンと妃のアンドレアを紹介して、ロリ事サンクタ・フェミナと新国王のエルヴィーノ、前国王のリアムとプリマベラを紹介した。
アンドレアが抱いている子猫がパウリナだと直ぐに分かったが平静を装っていたエルヴィーノだ。

そして最後に獣王からの申し出があった。
エルヴィーノとリアムはドキドキしていたが獣王たちは何故か笑っていた。

「過去はいろいろと有ったが改めて聖魔法王国アルモニアと正式に国交を深め同盟を結びたい」

そう言って差し出して来た獣王の右手。
考える間を取ってもダメだし、断るなど論外だ。
エルヴィーノは瞬時に右手を出した。

「宜しくお願いします」

そう言ったとたん獣人達は拍手しだすので”こちら側”も拍手しだした。

友好的に終わり、場を引き上げようとした時にロリがとんでもない事を言ってくれた! 

「アンドレア様の腕に居るのは子猫ですか? 凄く可愛いですねぇ」

エルヴィーノはドキッとして微動だに出来なかった。

「あらこの子に気づかれましたか?」
「えぇ気品が有ってとても御利口そうですわ」
「この種族は男性の運勢を凄く上げる幸運の子猫なんですよぉ、今回の貢物の中にあったのですが窮屈なので出しましたの」
「ではその子猫も頂けるのですか?」
「そうなのですが幸運の子猫は男性にしか懐かないし一度気に入ったら二度と離れないのよ。でも幸運が訪れるから力の有る獣人は競って欲しがるの」
「本当ですか? エルヴィーノ良かったわね。でも気に入ってくれるかしら?」

そう言うと”タッ”とアンドレアの腕から飛び立ちエルヴィーノの胸に飛び付いて来た。

「あらぁ良かったわねぇエルヴィーノ。気に入られたみたいよ」

何も知らないロリが無邪気にエルヴィーノの心を切り刻んでくれた。
引き攣りながらリアムを見ると知らん顔だった。

「今は子猫用の設備が無いので一旦お返ししますから後日改めて伺います」
苦しい言い訳じみた返事だった。

視界にはビエルナスがククスクスと笑いをこらえているのが分かった。
いつかお礼はすると思いながら獣王を見たら口元が緩んでいるしアンドレアも同様だっだ。

(こいつ等俺が困っているのを見て楽しんでやがる)
必ず復讐すると小さな誓いを立ててその日の謁見は”無事に”終わった。
謁見室から一行が出て行った後に指令を出す。

「リカルド」
「ハッ」
「食事会の席順をリアム殿と相談して獣王一行の席を大至急変えろ」
「畏まりました」




因みに獣王が考えた計画で
計画1はチクチクとエルヴィーノの女の影を突いて、からかった後に獣王の登場。
計画2は棘王を倒してくれたお礼を褒めて煽てた後に女の影を突いてから獣王の登場。
計画3は普通に挨拶した後に獣王の登場でした。










あとがき
大きな局面を乗り切ったのか?
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