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第3章 獣王国編

第74話 棘の森3

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「さてと、ここからは#橙__だいだい__)の棘だ、リカルド!」
「賜りました、エスクード・サガラド(聖なる盾)」

各自の周りに聖なる盾が顕現し身体を中心に回り出す。
フォーレは最初からエスパーダ・フエゴ(炎の剣)とエスパーダ・グラキエース(氷結の剣)の二刀流だ。
俺はオスクロ・エスパーダ(暗黒剣)とオスクロ・エスクード(暗黒盾)だ。
(二重の盾に守られた俺は撃たれ弱いです)

そして足を踏み入れる。
途中で2人にも”二重の盾”を作ってやり、初心者の棘よりは歯ごたえが有るが、防御が完璧なので時間は多少かかったが次の安全地帯に着いたのは暗くなる前だった。
前回同様に転移で村に戻る。
そして宿屋の親父と話す。


「ほぉ、橙の棘を越えたか。だが次は厳しいぞ、棘と魔物は似ているが倍倍で強くなっているからな、気を抜くなよ」
「何かアドバイスは無いですか?」
エルヴィーノが訊ねる。

「黄色い棘までは攻撃力と防御力だ。だが青い棘は速さが半端無い。俺が一瞬でやられたからな、行かない方が身のためだぞ」




「では反省会です。二重の盾は効果があったが次は更に強くなるらしい。何か対策はあるか?」
エルヴィーノが2人に聞く。

「アウクシリアル・デ・コンバッテ(戦闘補助魔法)を多用するしかないのでは?」
「そうだな」

「ロサ・アタッケ・フィジコ・スベン(物理攻撃上昇)と、リセ・アタッケ・マヒコ(魔法攻撃上昇) に、アタッケ・フィジィコ・デサティバド(物理攻撃無効化)と、マヒア・デ・アタッケ・デサティバド(魔法攻撃無効化)を最低でもこの四つの魔法を使って入りましょう」

「解った」
「明日からが実質の討伐と考えた方が良いですね」
エルヴィーノとリカルドは気を引き締めてその夜は寝た。




次の朝、昨日と同じく転移して昨夜考えていた魔法を次々に付与させていく。
目の前には黄色の棘だ。
昨日の攻略までは、ゆっくりと歩いていたが、今日は早いペースで進む事にしたのは昨日の調子では夜になる可能性があるからだ。
夜になると危険度が更に上がるからでエルヴィーノ達は急ぎ足で進んだ。
結論から言うと、敵も強化、エルヴィーノ達も強化、昨日と変わらない、以上。

急いで進んだ割には似たような時間になったのは敵の強化された上昇率の方が上だった為で、明日はこちらの攻撃力を更に強化する必要があるだろうとフォーレの分析だった。

またまた、宿屋の親父と話す。
「凄いなお前達、黄色の棘を越えたのか!」
「えぇ」
「まぁ」と自慢げなフォーレとリカルド。

「だが次は本当にヤバいからな、出来りゃ行くなと言いたいが、行くんだろうな・・・」
頷くエルヴィーノ達。

「じゃ良いか、誰かが重傷を折ったら直ぐに撤退しろ。良いな、無茶はするな」
「あぁ解ったよ」

エルヴィーノ達は各自冷たくした酒を飲んでいた。
リカルドも、この数日でグラキエース・マヒア(氷の魔法)の操作は出来るようになっていた。
多分、夜練習したのだろう・・・

フォーレが仕切り直し再度質問する。

「じゃ反省会だけど、黄色の棘までは順調に来られました。次は問題の青い棘です。何か意見は有りますか?」
「今日の魔法に俺からはベロシダ・スビール(速度上昇)とカパシダ・フィジィカ・メホラ(身体能力向上魔法)を2人に施そう」
「ありがとうございます」
嬉しそうなリカルド。

「そうですね、親父さんもスピードでやられた感はあったのでしょう。速さを何度も言っていましたから」
速さには速さで。
(あのロリも物凄く速く走れるようになったからなぁ)

「一応聞くけど魔石の予備は持っているの?」
エルヴィーノはフォーレに尋ねた。

「魔法剣士にとつて魔素は死活問題ですからね。エスパシオ・ボルサ(空間バック)に入れていますよ」
「そうか、良かった」
計画は万全なので各自安心して就寝したのだった。
勿論ここ数日は寝る前に二刀流の練習は怠らない。

翌朝、さんざんエルヴィーノ達をビビらせていた親父さんの言う青い棘の前に来た。
前日と同じく魔法を付与させていく。
エルヴィーノは体感させる為にフォーレとリカルドを森に入る前に原っぱを一周させた。
すると物凄い速さで走り出す2人が一周のはずが止まらない・・・
エルヴィーノが両手を振って止まれと叫ぶと笑顔の2人が目の前に立ち止まる。


「いゃー凄いですね。こんなに早く走れるなんて驚きです」
「全くです」
「楽しいのは解ったけど、これから青い棘だからな。敵も同じかそれ以上の速さだから気を付けろよ」
「「了解」」
「さぁ準備万端だ、行くぞ」
「「おう」」


駆け出す三人は勢いよく青い棘の森に入って行く。
入るなり視界に棘が入った。

「避けろ!」と叫び、エルヴィーノとフォーレは次から次へと襲い掛かる棘の幹を切り落としながら未だかつて無い勢いで走って行く。

それは出来るだけ攻撃を避けて最小限の動きで敵を倒しながらだ。
リカルドもちゃんと付いて来ている。
と安心していたら、リカルドが棘の幹に足を引っ掛けて転んだ。
ズザザザーッと転がりながら止まる。
直ぐに気が付き2人は引き替えし声をかけた。

「リカルド大丈夫か?」
「ハイ、申し訳ありません」
「怪我は無いか?」
「ハイ」
「よし、行くぞ!」

改めて走り出す三人。
攻撃はかなり魔法の盾で防いでいるが、その攻撃数が今まで以上だ。
これじゃ食事休憩も出来ないとあきらめていた3人だったが、そうなれば開き直ってとにかく早く森を抜ける事が先決になってくる。
3人のスピードと触手や魔物の速さは同じ位なので数をこなそうとすれば体力も消耗してしまうので適度に回復薬を飲んだりしてカバーしていた。



どれくらい経っただろうか思考は魔物の攻撃を動体視力で見切りかわして切る。
一連の動作に集中するエルヴィーノとフォーレ。
リカルドは全体を見ながら傷を癒してくれている。
暫くするとパッと明るくなって視界が開けた。

「止まれー」
エルヴィーノは叫んだ。

「あれ?」
「ここは?」
「原っぱだ」
何とか青い棘を抜けたようだった。

「あぁー走った走った」
「お腹すいたなぁ」
「そうですね、お昼にしますか?」
「ここで食べるのか?」
「どうせなら宿で食べませんか?」
「「賛成」」
エルヴィーノはいつものように中央の石の欠片をポケットに入れて転移魔法を唱える。

昼過ぎに宿に戻った3人を見て親父さんが聞いてきた。
「どうした流石に青い棘はダメだったか!」

自分がダメだったから当然の様に聞いて来た。
「えっなんで? あんな”楽な森”だとは思わなかったよ」

そう言って3人は食堂に向うと親父さんがカウンターから身を乗り出して叫んだ。

「何―――! チョット待てぃ!」
「何、煩いな、俺達腹減ってんだよ」
「飯ならいくらでもタダで食べさせてやるから教えろ!」
「ラッキー」
「それで本当に抜けたのか?」

エルヴィーノは溜息をついて2人は成す。
「チョット行って来る」
親父さんを連れて外に出て転移した先で見た親父さんはチョット涙目だった。
周りを見回し黒い棘も確認して、エルヴィーノと同じように中央の石積みから小石を持ってきた。
「ありがとよ、戻ったら旨いもん食わせてやるぞ」

「早かったですね」
フォーレの顔はお腹が空いてイラついているようだった。

「ゴメンゴメン。その代りに親父さんが美味しい物をタダで食べさせてくれるって!」
「本当ですか!」
「嘘言っても仕方ないだろ、料理が出てくるのを待とう」

すると運ばれて来た料理の数々。
(昨日も一昨日も同じ物を食べたけどね、美味しいよ・・・まっ、いっか)
3人は美味しく頂いた。
酒も飲みながらだ。
暫くして親父さんが出てきて問いかけた。

「どうだ? 足りなかったら言ってくれ」
「でも何でご馳走してくれるの?」
「俺が青の棘で負傷したのは教えたな?」
「あぁ」
「俺は冒険者を引退してここで宿屋をしながら青の棘を抜けるヤツを待っていたのさ。俺達獣人族は他の種族と比べて体力や速さが勝っている代わりに魔法がほとんど使えん」

(なるほど、そうだったのか)
「当時、俺達は速さと腕力重視の仲間でな魔法使いが居なかった訳だ。その結果がコレだ」
(義手を見せる)
「自分の夢だったから?」
「まぁ、それもあるが俺が居た一団は俺が抜けてから再度挑んだのさ」
「それで?」
「誰も帰って来なかった・・・」

しんみりとなる。
「それしたらお前らが青の棘を貫けたって言うからよ、驚いた訳だ」
「俺達そんなに子供っぽく見えるかな?」
「そんな事は無ぇが”全く”強そうには見えなかったからな」
強調して言われました。

「まぁ今日は喰って飲め、お前たちは明日の朝まで俺の奢りだ」
3人は顔を見て叫んだ。

「やったー食べますよー」
「飲むぞー」
「喰って飲む」

笑っている宿屋の親父だった。
エルヴィーノは酔う前に2人に言った。
明日は休みにしようと。
すると快諾かいだくをもらった。

明日はロザリーへみそぎの日だ。
最近はリカルドからの報告が有るせいかエルヴィーノが連絡を忘れても、とやかく言われない。
重要なのは帰る日だ。
大体3日前から状況を聞いて来る。
そして返事が無いと怒る・・・
戻れば何事も無かったように過ごすが、そんなメンドクサイ事もその夜の快楽で忘れさせてくれるロザリーは凄いと思う今日この頃。














あとがき
次回は前人未到の黒い棘の森へ。
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