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第四章 過去の真実と未来への希望

第93話 準備

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龍国のとある会議室。
テネブリスは母であるスペレムス以外の龍族を全員集めて説明を行った。

「みんな聞いてちょうだい。昔からお母さま・・・大神様が仰っていた大きな災いが遠い未来に起きる件だけど、具体的にそれを阻止する方法の説明をします」

テネブリスが説明したのは未来へ転生して、その原因を阻止及び排除する事だ。
その選定者がテネブリスの魂を分割した者を含む眷属の末裔であり、龍人の腕輪を持つ者及び加護を持つ者だ。

一同がざわついたのは、神であるテネブリスが率先して転生する事だった。
自らが転生者である事を告知して以来、何故か神としての格が一段上になり崇め奉る同族たちなのだ。
そのテネブリスが再度、率先してしもべ達を引き連れて転生すると聞かされたから驚いたのだ。

ざわつくのは反対する意見も含まれていた。
しかし、いくら龍族と言えども直接意見は出来ない。
些細な事であれば眷属が違っても問題無いが、今は違うのだ。
龍人のラソン、インスティント、カマラダ、バレンティアはフィドキアに詰め寄る。
第2ビダのルクス、シエロ、マル、モンタはテンプスに詰め寄る。
第1ビダのオルキス、ヒラソル、ナルキッス、プリムラはロサに詰め寄る。
使徒のベルス、フォルティス、リベルタ、オラティオはベルムに詰め寄った。
同族のアルブマ、セプティモ、セプテム、スペロは事前に聞かされていたし、不本意だが納得している。

だがそれはテネブリスを案じての事なので眷属がなだめてその場をしのいだ。

「みんな聞いてちょうだい。転生魔法陣は長い時間をかけて作り上げたものよ。間違いは無いわ。それにわたくしの魂魄も少ししか移さないから大丈夫よ」

そして下界の選定者の説明になった。
担当するのはロサと龍人達。
また龍人のラソンには腕輪を持つ者とは別の1人に加護を与え龍国に連れてくる役目が言い渡される。

時系列は、ラソンが先に行動し選定者を龍国に連れてきて複製を作り保管する。
次にロサが試練を利用して下界から選定者達を連れてきて複製を作り保管する。
これは複製体を作った後で身体に魔法的な微調整を行う必要があるからだ。

本人たちは一旦下界に戻し、複製体はそのまま転生の準備に移行する。

重要なのは時期だ。
選定者に怪しまれず転生させなければならない。
強引だろうとも魅力で支配しようとも龍族に出来ない事は無いからだ。
しかし、選定者を含むテネブリスとの感情的な関係性が存在するので極秘に行う必要がある。


そして時の歯車がテネブリスとスプレムスの思惑を後押しするように、下界の監視対象者達を利用して準備が進められていった。
炎の勇者の試練で、最終的に”対峙する者”の選定には龍人たちがもめた様だ。
管轄地域であり、眷属の末裔なのでインスティントが有力視されていたが選定者からの”不敬にあたるので変更して欲しい”と要望があったからだ。

他の龍人やヒラソルまでも参加に名乗り出たが、強い意志でその場を納得させたものが居た。
「その役目、我が行おう。龍人達は既に何度もその姿を見せているし、我はあの者達に協力は惜しまない」
「「「・・・」」」
「だったら私が・・・」
ロサの提案を一同が思案する中で反応したのはヒラソルだ。
ヒラソルの意見を遮ってロサが補足する。
「我を救ってくれた者達や我が神に力を貸すのは我の本意だ。皆の意向もあると思うが我が儘だと思って欲しい」
「「「・・・」」」
「解ったわ・・・」

一同に理解してもらったロサ。
そしてロサに辿り着くまでの障害を考える担当になったのはヒラソルとインスティンだった。
何故ならヒラソルとインスティンの眷属の末裔の試練と称した種族の儀式だからだ。
他の龍人達の意見も取り入れて、場所と障害の選定が行われた。

使うのは魔石にゴーレムを発動させる魔法陣を付与した物と一部の魔物だ。
それらを段階的に数を増やして難易度を上げる事にした。

また、その儀式が行われる場所は、魔法で作り出した物体をつなげ階層にした場所と亜空間をつなげる事にした。
入口が一種の転移装置になっている物だ。

余りにも現実離れした建物の見た目なので、生物の生息しない場所に設置する事にして、その場所には誰かが連れて来る事となった。

「ではその役目は我が行こう」
それまで黙っていたフィドキアが声を上げた。
「どうしてフィドキアが行くのよ、私の眷属よ」
「父上が最終試練であれば、その場所にいざなうのは我の役目であり・・・我が儘だと思って構わん」
「でも・・・」
隣で、まだ納得しないインスの手を握り黙らせたフィドキアだった。

「ではどこから連れて来るのだ? 時間をかけても意味がないぞ」
「ではイグレシア王都の近郊にしましょう。ラソン、場所を決めて欲しい」

ロサとフィドキアが進めていたが、インスとのやり取りを見ていたフィドキアの片方から熱視線を感じていたので指示を出したのだ。
「・・・ではこの場所で」
それを見ていた周りの者はフィドキアも”配慮”が出来るようになったと感心していた。


試練の内容と場所が決まり、龍人たちには転生魔法陣の説明が行われた。
今回の転生魔法陣はかなりの魔素量が必要になる。
使徒やビダが行えば良いのになぜ龍人が行うのか?
勿論理由がある。
転生魔法陣の発動から収束までに必要な魔素は”外部から”送り込むことが可能だ。
重要なのは収束時点への精密な魔素の調整だ。
これには極小まで魔素を絞り込める龍人が最適だと判断したためだ。



龍国での会議も終わり、下界に降りてきたコラソンはさっそく念話で監視対象者に連絡した。
(やぁモンドリアンさん。皆さんの調子はどうですか?)
(あぁ、俺も含めて全員が以前より魔法の扱いが上達してるぞ)
(それは良かったですねぇ)
(所でどうした?)
(実はモンドリアンさん達が向かう目的地が決まりましたよ)
(本当か!?)

(はい。聖魔法王国アルモニアからアベストロース帝國に向う街道で国境付近にモリーノと言う村が有ります)

(村か!?)
(その村に”使者”を送りますから皆さんは村で待機していてください)
(解かった。ありがとうコラソン、みんなに知らせて来るよ)



Epílogo
龍国側の転生準備完了。
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