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第一章 龍国と地上世界

第37話 それぞれの日常

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「お母様ぁぁ!!」

嬉しそうにオルキスに呼びかけるラソン。
フィドキアと事の顛末を説明すると一緒に聖白龍アルブマ・クリスタの元へ向かっていのだ。

「良かったわねぇラソン」
「はい。全て我らが神から頂いた魔法の賜物です」
「ふふふっ、他の神々には伝えておくから安心しなさい」
「あ、ありがとうございます」


アルブマの問いかけに、まるで全ての幸せを手にしたかのような錯覚に陥るラソンだった。
そしてその通達はインスティントの耳にも入る。


「どういう事よ!! 私はフィドキアの子を産んだのよ。それなのに何でぇ!?」
「フィドキアが認めたそうよ」
「そんなぁ嘘よ・・・本当なの、お母様」

インスティントに直接教えたのは母であるヒラソルだった。

ラソンが一方的に口走るなら既成事実を持って撃退するつもりだった。
しかしフィドキアが認めたのであれば自分が口出ししても意味が無い。



それからと言う物、ラソンとインスは互いに牽制しあい直接対自する事を避けていた。
正式な場面では顔を見る事は有ったがお互いに声を掛ける事は無かった。
お互いに言いたい事が山ほどあり過ぎて、激情すると取り返しのつかない事になるのが目に見えるからだ。互いに目線を反らし、陰から睨むような態度をとっていれば周りの者達も敬遠しだす。

そんな雰囲気をカマラダとバレンティアは察して、なるべくその事には触れない様にしていた。
下手に首を突っ込むと面倒な事に巻き込まれるからである。
もっとも原因であるフィドキアはラソンとインスの嫉妬の炎には無関心だった。
何故ならば2人の願いをかなえ、解決したと思っているからだ。

そして一部に不協和音が存在するも龍国の時間は流れていった。



※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero



龍人達のやりとりも大神の考えの大きな流れの1つとして知れ渡っており、龍国内ではそれぞれの眷族が日々役目を果たしている。

魔法や魔法陣の開発はそれぞれの眷族が属性に合った研究開発を行ない、また共同研究として魔法科学も開発されている。その研究もしもべの数が増える事で多岐にわたる事となっていた。もっとも、それぞれの神々が極秘に研究させている部隊もそんざいするのだから。


そんな中、アルブマは自らの役目を眷族に采配して、ほとんどの時間を”ある場所”で籠もっている。

手に持つのは下界から植樹した龍国内で栽培した果物だ。
勿論自分が食す為では無い。
そして同族は食べ物を摂取しない。
必要なのは魔素だけなのだ。

そんな事は解かっている。
しかし、どうしても食べさせたい者が居るからだ。

昔、地上に居た時に果物を教えてくれた者。
食べる必要は無いけれど、食感や味覚を教えてくれた。
何事も経験だと・・・


龍国内の移動は基本的に徒歩だ。
しかし、聖白龍アルブマ・クリスタの部屋からは扉1つで別の場所に移動できる事が出来る。
自室の奥に小部屋が有り、中に入るとまた扉が有る。
その扉を開けると、又小部屋だ。
小部屋同士で転移の扉を挟んでいる状態になっている。
一応秘密になっているが、周知の事実として他言無用になっている。



そして
“コンコン”
「お姉様。入りますわ」

返事を確認せず転移先の扉を開けて、部屋に入って行くアルブマ。
アルブマが訪れたのはテネブリスの部屋だ。

テネブリスの部屋は比較的に簡素だ。
大きな寝台に横になっている黒髪の女性。
傍らには椅子と小さな机がポツンと置いて有る。

アルブマはいつもの様に寝ているテネブリスの手を握りしめて頬ずりをしている。
静かに寝ているテネブリスの寝顔をずっと見つめるアルブマ。
どれだけ見ていても飽きないのだ。
そして、誰も居ないと解っているが回りをキョロキョロ見回して、ゆっくりと唇を押し付ける。

テネブリスの世話はアルブマとテネブリスの使徒ベルム・プリムが交代で行なっている。
世話と言っても子供であるベルムは何もしないし出来ないのだ。
たまに起きるテネブリスに眷族の報告をして眷族の神たる母から指示を仰ぐのだ。

むしろ世話をしているのはアルブマの方だろう。
それは定期的にリビドー・ボールをテネブリスに打ち込むのだから。
しかもそれが現在唯一の”治療方法”なので、母である大神や同族達も納得しての行ないなのだから。


ではテネブリスに何が起こったのか?
一体いつからこの様な状態になったのか?
それは・・・










Epílogo
あああぁぁテネブリス、どうしちゃったのぉ
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