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蓋のない骨壷 10 会話
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五十年前の、馬の川事件の起こる前日の事だ。俺の妻、佳子の子供が川に落ちて死んだ。俺もショックだった。子供があっけなく死んだのが信じられなかったんだ。
佳子は泣き崩れて今にも壊れそうだった。
そしたら急に彼女は立ち上がって、奥から大きな壺を取り出してきた。
ーそう、それがお前の探してる壺だよ。 俺がそれはなんだと尋ねると、無表情のまま子供を助ける、なんて言ってやがった。
俺が子供は死んだんだと言っても、だから助けるんだ、と言ってくる。
そして俺が壺を見ようとすると、今までにないくらいの声で「やめろ!」って言ったんだ。これを見たら俺も死ぬってさ。じゃあなんでお前は死なないんだって言ったら、私は特殊で、中を見ても何も起こらないんだって言ってた。
それで何をするつもりだと聞くと、目を逸らして台所へ行ってた。覗いてみると、包丁を片手に壺を背負ってた。余りにも似合わない格好で茫然としてたら、佳子は走って玄関から出てった。それからだ、村に悲鳴が上がったのは。駆けつけると佳子は二人の死体から骨を取り出して削り、壺の中に入れてた。「なにをしてるんだ!」って怒鳴ると「うるさい!あんたも殺すよ!?」ってさ。初めて彼女を怖いと心の底から思った。
それから次々と家を襲っていった。小さい子まで躊躇なく、泣き叫ぶ喉を掻っ切ってた。
知ってるか?立ってるやつの腹に切り目を入れると、勢いよく飛び出すんだ。それを浴びても黙々と骨を削って壺に入れてた。一体何をするのか、理解出来なかった。
次々と運び込まれる死体、川は真っ赤に染まってた。ボロボロになった妻はそれを見下ろした後壺を見て、「足りない」と呟いた後ノコギリを持ってきて川の死体から頭を切り離して頭蓋骨を砕いてった。
見てられなかった。
佳子に近付くと、俺に気付いた佳子はにっこりと微笑んで「もう少しで生き返るよ」と言った。「これを骨で満たせばね、あの子は生き返るの。家系を途切れさせない事、その為だけにある壺だって言ってた」
カラカラと骨を詰め込んで、もう少しで満杯になりそうになった所で彼女は言った
「先祖の意思は末代まで受け継がなくてはならないの。自分を犠牲にして次に繋げる。私は死んじゃうけど、あの子をよろしくね」
遂に満杯になると、彼女は急に倒れた。それと同時に壺も倒れたが、中からは何も出てこなく、外から叩いても中は空洞だった。そして彼女は死んでいた。
俺はほかの遺体と同じ様に彼女の首を切り、その骨を壺の中に目をつぶって入れた。やっぱり壺の中には何も無かった。
血だらけの手で家に帰ると、居間で死んだはずの子供が寝息を立ててた。
涙が流れたよ。本当に生き返った。
子供が寝てる内に、俺は子供をかかえて妻の双子、朋子の所へ行って子供を渡した。
どうかこの子を育ててくれって。土下座までしてな。それからは追われる身だ。
俺の妻は和樹佳子って名前だ。
鵜川という俺の苗字は後から変えたんだ。
そしてその双子、和樹朋子は君の祖母だ。
つまり君の父親、秀徳が俺の子供だ。
君の名前を知った時、そして壺のことを話した時は驚いたさ。こんな偶然あるもんなんだなって。
それと1つ言う事がある。
お前の探してる壺は俺が先に回収してた。
今は家の裏の倉庫にある。
なあ、お前は誰を助けたいんだ?
佳子は泣き崩れて今にも壊れそうだった。
そしたら急に彼女は立ち上がって、奥から大きな壺を取り出してきた。
ーそう、それがお前の探してる壺だよ。 俺がそれはなんだと尋ねると、無表情のまま子供を助ける、なんて言ってやがった。
俺が子供は死んだんだと言っても、だから助けるんだ、と言ってくる。
そして俺が壺を見ようとすると、今までにないくらいの声で「やめろ!」って言ったんだ。これを見たら俺も死ぬってさ。じゃあなんでお前は死なないんだって言ったら、私は特殊で、中を見ても何も起こらないんだって言ってた。
それで何をするつもりだと聞くと、目を逸らして台所へ行ってた。覗いてみると、包丁を片手に壺を背負ってた。余りにも似合わない格好で茫然としてたら、佳子は走って玄関から出てった。それからだ、村に悲鳴が上がったのは。駆けつけると佳子は二人の死体から骨を取り出して削り、壺の中に入れてた。「なにをしてるんだ!」って怒鳴ると「うるさい!あんたも殺すよ!?」ってさ。初めて彼女を怖いと心の底から思った。
それから次々と家を襲っていった。小さい子まで躊躇なく、泣き叫ぶ喉を掻っ切ってた。
知ってるか?立ってるやつの腹に切り目を入れると、勢いよく飛び出すんだ。それを浴びても黙々と骨を削って壺に入れてた。一体何をするのか、理解出来なかった。
次々と運び込まれる死体、川は真っ赤に染まってた。ボロボロになった妻はそれを見下ろした後壺を見て、「足りない」と呟いた後ノコギリを持ってきて川の死体から頭を切り離して頭蓋骨を砕いてった。
見てられなかった。
佳子に近付くと、俺に気付いた佳子はにっこりと微笑んで「もう少しで生き返るよ」と言った。「これを骨で満たせばね、あの子は生き返るの。家系を途切れさせない事、その為だけにある壺だって言ってた」
カラカラと骨を詰め込んで、もう少しで満杯になりそうになった所で彼女は言った
「先祖の意思は末代まで受け継がなくてはならないの。自分を犠牲にして次に繋げる。私は死んじゃうけど、あの子をよろしくね」
遂に満杯になると、彼女は急に倒れた。それと同時に壺も倒れたが、中からは何も出てこなく、外から叩いても中は空洞だった。そして彼女は死んでいた。
俺はほかの遺体と同じ様に彼女の首を切り、その骨を壺の中に目をつぶって入れた。やっぱり壺の中には何も無かった。
血だらけの手で家に帰ると、居間で死んだはずの子供が寝息を立ててた。
涙が流れたよ。本当に生き返った。
子供が寝てる内に、俺は子供をかかえて妻の双子、朋子の所へ行って子供を渡した。
どうかこの子を育ててくれって。土下座までしてな。それからは追われる身だ。
俺の妻は和樹佳子って名前だ。
鵜川という俺の苗字は後から変えたんだ。
そしてその双子、和樹朋子は君の祖母だ。
つまり君の父親、秀徳が俺の子供だ。
君の名前を知った時、そして壺のことを話した時は驚いたさ。こんな偶然あるもんなんだなって。
それと1つ言う事がある。
お前の探してる壺は俺が先に回収してた。
今は家の裏の倉庫にある。
なあ、お前は誰を助けたいんだ?
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