能力者は現在に

わまり

文字の大きさ
上 下
48 / 56

蓋のない骨壷 3

しおりを挟む
小川刑事は現場を見た瞬間、
脳裏に妻の顔が過ぎった。妻の時と全く同じ死に方。犯人は同じだろう。
捜査に進展はなく、ただ他殺だということは明らかである。

のけぞって倒れたような状態で目を見開き、足からは骨がなくなり肉と皮だけだ。
なんとしても犯人を見つけ出したい。
それは刑事としての思い出もあるが、妻を殺した犯人を何より憎んでいる。
私は犯人を殺すつもりでいる。

本部からは自由な捜査を許可された。
あの家に住んでいたのは和樹朋子と和樹勇太、和樹朋子は殺害され、和樹勇太はいない。昨日までは確かにいたと隣人が証言している、そして異臭がしたとも。
遺体と一緒に暮らしていたわけだ。
「動機が無いな」

「そうですね、仲が良かったらしいですし、相当な理由じゃないと殺害なんてしませんよ」
首を傾げながら太田言う

「相続人は誰だ?」

「えーと、和樹朋子の息子、和樹秀徳ですね、しかし和樹秀徳は二年前に他界、それから相続人は和樹秀徳の妻、和樹佳代になっています。しかし彼女は丁度三十日前、変死しています。その場合の相続人はその孫となります」

「じゃあ相続人は丁度和樹勇太か…」
「遺産目当てが動機の可能性があるな」
「しかし、それなら何故いないんだ?やっぱり和樹勇太が殺したからか?」

「まあ和樹勇太が犯人なのは間違え無いでしょうね」

「和樹勇太が犯人かはまだ確定できんが、死体を放置していたのは確かだ。」

和樹勇太が犯人だとすると、連続殺人犯となる。全国に捜査網が敷かれた。

駅での防犯カメラから和樹勇太らしき人物を発見した。大きな荷物を抱え、白いシャツに黒のジーパン、ラフな格好だ。
その電車は終点まで行き、そこで和樹勇太が降りていた。

そしてその券売機からは青森への切符が購入されていた。直ちに捜査員を青森に向かわせ、終点の土地にも配備された。

青森の近隣の住民が大きな荷物を持った男を見たと証言しており、その後駅の防犯カメラからは和樹勇太の姿は見えなかった為、青森に居ることはほぼ確定である、全ての駅には捜査員が派遣され、四六時中和樹勇太が現れるのを待った。
逃げ場はないと誰もが思っていた。


しかし操作開始から三十日、未だに進展は無く、いくら聞いても和樹勇太らしき人物はいなかった。追い詰めたはずだが、全く進展がないのは不自然である。


そして遂に事件が起こった
港近くに住んでいる70代の男性が、手首の骨が無い状態で発見された。
血は飛び散っていなく、手際よく骨が取り出された事がうかがえる。
しかし手に付いた血痕に1部不自然な所が。これは和樹勇太が腕を抑えた時に血が勇太の手に付着した為だろう。しかし指紋は無く、手袋をはめたのだ。

「遂にやりやがりましたね…」
現場に残された足跡を見ながら太田が言う。しかしその足跡の靴は庭に捨てられていた。

「ああ、このままでは被害者が増えるだけかもしれん。早急に逮捕しなくてはな」

未だに凶器も分かっていない。刃渡りからメスで骨を取られたのは確実なのだが。和樹勇太は医学校を卒業している。
しかしメスで殺害されていない。皆ショック死しているのだ。相当な痛みを与えるなどしなくてはショック死はしないはずなのだが…一体何をした?
和樹勇太はただの狂人か、それとも何か目的があるのか…
「早く見つかってくれよ…」
空を仰ぎながら呟く。

「小川さん、殺害された男性は漁師でした」「そしてこれが重要、男性の船が港から消えました」

「ならば和樹勇太は男性を殺害した上で船を奪い、逃走したと」

「はい…まずいですね、遠くに行かれる可能性があります、推定して8時間前にはもう船は出発したとなります。」
「昼になると漁師はほぼ居ませんから、海を見てる人も限られます。それに、ここは漁師が少ない」

「男性の船が発進する所を近隣の住民が目撃したそうだ。いつも男性は5時~10時まで漁をし帰ってくるそうだから珍しく思ったとか」

「方向はわからんが和樹は船にいる、海上は確認されているか?」

「はい、今ヘリコプターが離陸したそうです」

日本海から遠くへ向かうのなら、必ず海の上に今はいるはずだ。操作開始から50日、早くも逮捕となるかもしれん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

R.I.P ∞ 章間の事

乃南羽緒
ミステリー
R.I.PシリーズⅠ、Ⅱ、Ⅲ……それらのシリーズ間で起きた出来事短編集や後日談など。 シリーズ読後に読んでいただくことをおすすめします。

孤島の洋館と死者の証言

葉羽
ミステリー
高校2年生の神藤葉羽は、学年トップの成績を誇る天才だが、恋愛には奥手な少年。彼の平穏な日常は、幼馴染の望月彩由美と過ごす時間によって色付けされていた。しかし、ある日、彼が大好きな推理小説のイベントに参加するため、二人は不気味な孤島にある古びた洋館に向かうことになる。 その洋館で、参加者の一人が不審死を遂げ、事件は急速に混沌と化す。葉羽は推理の腕を振るい、彩由美と共に事件の真相を追い求めるが、彼らは次第に精神的な恐怖に巻き込まれていく。死者の霊が語る過去の真実、参加者たちの隠された秘密、そして自らの心の中に潜む恐怖。果たして彼らは、事件の謎を解き明かし、無事にこの恐ろしい洋館から脱出できるのか?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

時雨荘

葉羽
ミステリー
時雨荘という静かな山間の別荘で、著名な作家・鳴海陽介が刺殺される事件が発生する。高校生の天才探偵、葉羽は幼馴染の彩由美と共に事件の謎を解明するために動き出す。警察の捜査官である白石涼と協力し、葉羽は容疑者として、鳴海の部下桐生蓮、元恋人水無月花音、ビジネスパートナー九条蒼士の三人に注目する。 調査を進める中で、葉羽はそれぞれの容疑者が抱える嫉妬や未練、過去の関係が事件にどのように影響しているのかを探る。特に、鳴海が残した暗号が事件の鍵になる可能性があることに気づいた葉羽は、容疑者たちの言動や行動を鋭く観察し、彼らの心の奥に隠された感情を読み解く。 やがて、葉羽は九条が鳴海を守るつもりで殺害したことを突き止める。嫉妬心と恐怖が交錯し、事件を引き起こしたのだった。九条は告白し、鳴海の死の背後にある複雑な人間関係と感情の絡まりを明らかにする。 事件が解決した後、葉羽はそれぞれの登場人物が抱える痛みや後悔を受け止めながら、自らの探偵としての成長を誓う。鳴海の思いを胸に、彼は新たな旅立ちを迎えるのだった。

VR花子さんの怪

マイきぃ
ミステリー
 世界はメタバースに熱狂する時代となった。  そんな中、メタバースで不思議な事象が起こり始めた。  それは──VR花子さんと呼ばれるものだった。  VR花子さんを見たものは、リアルでもなんらかの影響をうけると言われている。  その事象を経験したことのあるメタバース住人たちはVR花子さんの謎を解明するため、その日、百物語形式座談会に集まった。  果たして、VR花子さんの謎を解明することはできるのだろうか。  ホラー的な事象を百物語形式の座談会で話し、主人公がVR花子さんの事象を情報を元に謎を紐解いていくミステリーとなっております。  この話はフィクションです。実在の人物や団体等とは一切関係ありません  専門分野的な事柄に関しては、勝手な想像で書いていますので、ご了承ください。  誤字や誤記等発生する場合がありますが、その場合は脳内補正、脳内補間でお願いします。

【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ

ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。 【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】 なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。 【登場人物】 エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。 ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。 マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。 アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。 アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。 クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。

処理中です...