45 / 58
幕間3
幕間 ~『歓喜に震える ★ケビン視点』~
しおりを挟む『ケビン視点』
自室に戻ったケビンは歓喜に震えていた。声が外に漏れないように必死に我慢しながらも、笑みを完全には抑えきれていなかった。
(まさかエリスが回復魔術を使いこなせる日がくるなんて! まるで夢みたいだ!)
回復魔術を使えると神託を受けた時から、エリスは教会の神父たちの間で注目の的だった。
伝説の聖女の生まれ変わりではと噂する者もいた。だがエリスが魔力に目覚めないと分かると、ほとんどの者は見限ってしまった。
だがケビンは、エリスがいずれ魔力に目覚め、聖女の力を得ると信じ続けた。そしてそれは現実となったのだ。
(計画に歪みは生じたが、それ以上の収穫だ。もし僕が聖女の夫となれば、教会での地位は盤石なものとなるはずだからね)
ケビンの教会での役職は上級神父だ。これは法皇に限りなく近い地位であり、大勢の下級神父を束ねる立場である。
だがケビンは現状に満足していなかった。さらに上の法皇の地位も虎視眈々と狙っていた。
法皇になるためには試練があり、上級神父たちで選挙が行われる。投票の結果、最も優秀だと評価された者が法皇として、次世代の教会を率いる立場となる仕組みだ。
ケビンは次期法皇の最有力候補というわけではない。甘く見積もって、三番手だ。十分に法皇を狙える地位ではあるが、確実に投票で勝つには心許ない序列だ。
だが聖女の威光があれば、次期法皇はケビンでほぼ決まりになる。教会には聖女を信仰する者が多く、無条件に票が手に入るためだ。
(もし僕が法皇になれば、王国で最強の権力者にだってなれる)
公爵領と伯爵領を支配し、法皇の地位を手に入れる。さらに聖女の生まれ変わりのエリスを妻とするのだ。
王国での地盤は盤石となり、王家でさえ太刀打ちできない存在となるだろう。
(僕は幸運な男だ)
エリスを手に入れた後の妄想で笑みが止まらない。そして、計画を進める重要性を改めて実感する。
(アルフレッド公爵はやはり邪魔だね)
支配者となる未来のためにも、呪い殺さなければならない。だがそれは簡単ではない。呪いを予防されているため、命を奪うなら、正体判明のリスクを背負わなければならないからだ。
(ただ僕ならやり方はいくらでもあるさ)
エリスとの婚約を破棄したため、普通なら門前払いにあうだけだが、幸いにもケビンは教会の神父を兼任している。
おかげで、オルレアン公爵家を訪れることに言い訳が立つ。アルフレッドが無理にケビンを追い返せば、教会との争いの火種となるため、それもできないはずだ。
(エリスと愛を育む日が訪れるのも近いね)
ケビンはエリスと幼馴染であり、彼女の性格はよく知っている。婚約破棄での印象のマイナスもすぐに取り返せる算段があった。
(待っていてよ。僕が必ず愛してあげるからね)
ケビンは喉を鳴らして笑みを零す。その邪悪な笑い声は我慢しても部屋の外にまで響くほど大きかった。
23
お気に入りに追加
2,256
あなたにおすすめの小説
辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する
鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】
余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。
いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。
一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。
しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。
俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
転生した平凡顔な捨て子が公爵家の姫君?平民のままがいいので逃げてもいいですか
青波明来
恋愛
覚えているのは乱立するビルと車の波そして沢山の人
これってなんだろう前世の記憶・・・・・?
気が付くと赤ん坊になっていたあたし
いったいどうなったんだろ?
っていうか・・・・・あたしを抱いて息も絶え絶えに走っているこの女性は誰?
お母さんなのかな?でも今なんて言った?
「お嬢様、申し訳ありません!!もうすぐですよ」
誰かから逃れるかのように走ることを辞めない彼女は一軒の孤児院に赤ん坊を置いた
・・・・・えっ?!どうしたの?待って!!
雨も降ってるし寒いんだけど?!
こんなところに置いてかれたら赤ん坊のあたしなんて下手すると死んじゃうし!!
奇跡的に孤児院のシスターに拾われたあたし
高熱が出て一時は大変だったみたいだけどなんとか持ち直した
そんなあたしが公爵家の娘?
なんかの間違いです!!あたしはみなしごの平凡な女の子なんです
自由気ままな平民がいいのに周りが許してくれません
なので・・・・・・逃げます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる