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トーマス編
2-6 諸悪の根源・アサセル
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これは夢なのか現実か、灰色の空間には見覚えがある。
「坊ちゃん、諸悪の根源を連れて来たぞ」
ルシアンの隣には黒く見えて実は深紅の羽を生やした堕天使がいた。
「やぁ坊ちゃん、僕は深紅の堕天使アサセル。宜しくね!」
軽そうなヤツだ。
「諸悪の根源、彼が?」
「そうだ、アサセルはカストル公爵家の契約者だ。支配の指輪と隷属の指輪を管理する者だ」
契約した者は他にもいるのか・・・寄りによってカストル公爵家だなんて最悪だな。
「リアリスの指輪は隷属の指輪だったの?」
「うん、公爵が大切に管理していると思ったら、次女が持ち出したみたいなんだ」
「貴様が管理しておかないからだ!」
「ルシアンみたいに執事になって人間に仕えるなんて御免だね~」
「待って、ちゃんとわかるように説明してくれ!」
カストル公爵家には言い伝えがある。二つの指輪が幸運を運んでくれるのだ。
長女のミネルバはフランシェ国の王太子殿下に恋をしたが全く相手にされなかった。
王太子は悪評が高いカストル公爵家を嫌っていたのだ。
長女に泣きつかれて公爵は遂に指輪を使った。
<王太子を魅了してミネルバを王太子妃にするのだ>
支配の指輪を填めて公爵はアサセルに祈った。
「あ、僕はルシアンみたいに人前に姿を現さないからね。今だけは特別~」
頼まれたアサセルは隷属の指輪を王太子が眠っている間に填めて『アサセルの祝福』という名の呪いを掛けた。
翌朝目覚めた王太子はすっかりミネルバの虜になって求婚したのだった。
アサセルが祝福すれば隷属の指輪を回収しても王太子殿下の呪いは解けない。
王太子とミネルバは婚約を果たし2年後に結婚した。今でも王太子の寵愛は有名だ。
「ルシアン・・・あれって悪事に使ってもいいの?」
「それが侯爵家の発展の為なら構わない」
「ヘェ、ソウナンダ」
願いが叶って公爵は2つの指輪を元の保管場所に戻した。それを次女のエヴリンがこっそり見ていたのに気づかずに。
『お父様が指輪のおまじないを掛けてくれたのよ!』
口の軽いミネルバが妹に指輪の存在を喋って秘密を暴露していたのだ。
エヴリンは指輪を持ち出して悪友のファーレン殿下に秘密を話した。が、二人とも『おまじない』など半分も信じていなかったのだ。
『リアリスに試してみない?魅了出来たら面白そう!』
二人は成功したら残酷な遊びでリアリスを虐めようと話し合った。
どんなにリアリスがファーレンに恋焦がれても相手にしない。侯爵令嬢を奴隷の様に扱ってやるのは面白そうだ。
そうしてリアリスの指には隷属の指輪が填められた。
「でもそれだとアサセルの祝福は受けられないよね?」
「そうだよ~でも指輪には僕の力が宿ってる。ファーレン殿下がリアリス嬢を支配するのは可能だったんだ。でも僕の祝福は受けてないからね、<堕天使の魔道具>を長期間身に着けて彼女は狂っていったんだ」
「支配の指輪はファーレン殿下を狂わせなかったの?」
「彼には良心が無いから大丈夫だったみたい。でも不幸を呼んで最後は二人とも悲惨な結末を迎えた」
「指輪を持ち出したエヴリンは助かった。なるほど、諸悪の根源は間違いなくアサセルだ」
「勝手に指輪を使用した公爵は<誓い>を破ったから契約は解除。指輪も回収したからもうリアリスは大丈夫」
「魅了の影響は?」
「残さないようにしておいた。ルシアン様のご命令でね~」
「リアリス嬢を救うのは坊ちゃんの願いでもあるからな」
「でね、トーマス様に相談なんだけど僕と契約しない?そうすれば<指輪>はルシアン様が管理してくれそうだし、願い事が2つになってお得だよ?」
「坊ちゃん、そんな面倒なヤツを引き受けるなよ!不幸になるぞ」
「断ったら?」
「僕はどっちかというと、カストル公爵のような悪人が好きなんだよね~」
「っ!野放しに出来ないな・・願い事が2つ・・・いいよ契約しよう」
「あ゛後悔するぞ!」
「OK!これでまだまだ人間界で楽しめそうだ。トーマス様~愛してるよ~」
「早速だけどアサセルに頼みたい。リアリスの前回の記憶を消して欲しい。出来る?」
「出来ると思うよ。君が強く願えば・・・ね」
「アサセル・・・」
夜明け前に目が覚めるとボーゲン侯爵家の僕の部屋のベッドの上だった。
「夢?いや違う」
僕の指には深紅の指輪があった。
「<リアリスの前回の悪い記憶を消して欲しい。で、僕と結婚して欲しい>お願いだ!アサセルどうか叶えてくれ!」
朝にはいつの間にかアサセルの指輪は消えていた。回収されてルシアンの元で保管されるんだろう。
「トーマスおはよう!」
「おはようリア!」
リアリスがいつもより明るい。アサセルは成功したんだろうか。
学園に向かう馬車の中で思い切って尋ねてみた。
「リア、僕と結婚してくれる?」
「え!私は婚約を解消したばかりで・・・えっと・・なんで急に⁈」
「ごめん、今度もう1回やり直すよ」
「・・・いいけど、本当に私でいいの?」
真っ赤になっているリアが可愛い。アサセルは大成功だな!
「うん、リアがいい。リアが好きだ」
「私もね、ずっとトーマスが好きだったの。嬉しい!」
僕達はそっと触れるだけのキスを交わした。
この幸福の見返りで別の幸福が逃げるかもしれない。それでも僕はリアを愛し続ける。
不幸がやって来ても二人で乗り越えて見せるよ。
.:。+゚.:。†゚.:。+゚.:。†゚.:。+゚.:。†゚.:。+゚..:。+゚.:。†゚.:。+゚
アサセル「なんで見返りに不幸になるのさ?」
ルシアン「手に入れた幸福だけで人間は満足しないからな<警告>だ」
アサセル「幸福を恐れろって事?幸福も不幸も人によって違うと思うけど」
ルシアン「そうだ他人から見ればコーネリアは不幸だが、あれで本人は幸せなんだ」
アサセル「トーマスの不幸は?」
ルシアン「間違いなく嫁の尻に敷かれる。コートバルを名乗る女性は強くなる」
アサセル「ぎゃはははは」
「坊ちゃん、諸悪の根源を連れて来たぞ」
ルシアンの隣には黒く見えて実は深紅の羽を生やした堕天使がいた。
「やぁ坊ちゃん、僕は深紅の堕天使アサセル。宜しくね!」
軽そうなヤツだ。
「諸悪の根源、彼が?」
「そうだ、アサセルはカストル公爵家の契約者だ。支配の指輪と隷属の指輪を管理する者だ」
契約した者は他にもいるのか・・・寄りによってカストル公爵家だなんて最悪だな。
「リアリスの指輪は隷属の指輪だったの?」
「うん、公爵が大切に管理していると思ったら、次女が持ち出したみたいなんだ」
「貴様が管理しておかないからだ!」
「ルシアンみたいに執事になって人間に仕えるなんて御免だね~」
「待って、ちゃんとわかるように説明してくれ!」
カストル公爵家には言い伝えがある。二つの指輪が幸運を運んでくれるのだ。
長女のミネルバはフランシェ国の王太子殿下に恋をしたが全く相手にされなかった。
王太子は悪評が高いカストル公爵家を嫌っていたのだ。
長女に泣きつかれて公爵は遂に指輪を使った。
<王太子を魅了してミネルバを王太子妃にするのだ>
支配の指輪を填めて公爵はアサセルに祈った。
「あ、僕はルシアンみたいに人前に姿を現さないからね。今だけは特別~」
頼まれたアサセルは隷属の指輪を王太子が眠っている間に填めて『アサセルの祝福』という名の呪いを掛けた。
翌朝目覚めた王太子はすっかりミネルバの虜になって求婚したのだった。
アサセルが祝福すれば隷属の指輪を回収しても王太子殿下の呪いは解けない。
王太子とミネルバは婚約を果たし2年後に結婚した。今でも王太子の寵愛は有名だ。
「ルシアン・・・あれって悪事に使ってもいいの?」
「それが侯爵家の発展の為なら構わない」
「ヘェ、ソウナンダ」
願いが叶って公爵は2つの指輪を元の保管場所に戻した。それを次女のエヴリンがこっそり見ていたのに気づかずに。
『お父様が指輪のおまじないを掛けてくれたのよ!』
口の軽いミネルバが妹に指輪の存在を喋って秘密を暴露していたのだ。
エヴリンは指輪を持ち出して悪友のファーレン殿下に秘密を話した。が、二人とも『おまじない』など半分も信じていなかったのだ。
『リアリスに試してみない?魅了出来たら面白そう!』
二人は成功したら残酷な遊びでリアリスを虐めようと話し合った。
どんなにリアリスがファーレンに恋焦がれても相手にしない。侯爵令嬢を奴隷の様に扱ってやるのは面白そうだ。
そうしてリアリスの指には隷属の指輪が填められた。
「でもそれだとアサセルの祝福は受けられないよね?」
「そうだよ~でも指輪には僕の力が宿ってる。ファーレン殿下がリアリス嬢を支配するのは可能だったんだ。でも僕の祝福は受けてないからね、<堕天使の魔道具>を長期間身に着けて彼女は狂っていったんだ」
「支配の指輪はファーレン殿下を狂わせなかったの?」
「彼には良心が無いから大丈夫だったみたい。でも不幸を呼んで最後は二人とも悲惨な結末を迎えた」
「指輪を持ち出したエヴリンは助かった。なるほど、諸悪の根源は間違いなくアサセルだ」
「勝手に指輪を使用した公爵は<誓い>を破ったから契約は解除。指輪も回収したからもうリアリスは大丈夫」
「魅了の影響は?」
「残さないようにしておいた。ルシアン様のご命令でね~」
「リアリス嬢を救うのは坊ちゃんの願いでもあるからな」
「でね、トーマス様に相談なんだけど僕と契約しない?そうすれば<指輪>はルシアン様が管理してくれそうだし、願い事が2つになってお得だよ?」
「坊ちゃん、そんな面倒なヤツを引き受けるなよ!不幸になるぞ」
「断ったら?」
「僕はどっちかというと、カストル公爵のような悪人が好きなんだよね~」
「っ!野放しに出来ないな・・願い事が2つ・・・いいよ契約しよう」
「あ゛後悔するぞ!」
「OK!これでまだまだ人間界で楽しめそうだ。トーマス様~愛してるよ~」
「早速だけどアサセルに頼みたい。リアリスの前回の記憶を消して欲しい。出来る?」
「出来ると思うよ。君が強く願えば・・・ね」
「アサセル・・・」
夜明け前に目が覚めるとボーゲン侯爵家の僕の部屋のベッドの上だった。
「夢?いや違う」
僕の指には深紅の指輪があった。
「<リアリスの前回の悪い記憶を消して欲しい。で、僕と結婚して欲しい>お願いだ!アサセルどうか叶えてくれ!」
朝にはいつの間にかアサセルの指輪は消えていた。回収されてルシアンの元で保管されるんだろう。
「トーマスおはよう!」
「おはようリア!」
リアリスがいつもより明るい。アサセルは成功したんだろうか。
学園に向かう馬車の中で思い切って尋ねてみた。
「リア、僕と結婚してくれる?」
「え!私は婚約を解消したばかりで・・・えっと・・なんで急に⁈」
「ごめん、今度もう1回やり直すよ」
「・・・いいけど、本当に私でいいの?」
真っ赤になっているリアが可愛い。アサセルは大成功だな!
「うん、リアがいい。リアが好きだ」
「私もね、ずっとトーマスが好きだったの。嬉しい!」
僕達はそっと触れるだけのキスを交わした。
この幸福の見返りで別の幸福が逃げるかもしれない。それでも僕はリアを愛し続ける。
不幸がやって来ても二人で乗り越えて見せるよ。
.:。+゚.:。†゚.:。+゚.:。†゚.:。+゚.:。†゚.:。+゚..:。+゚.:。†゚.:。+゚
アサセル「なんで見返りに不幸になるのさ?」
ルシアン「手に入れた幸福だけで人間は満足しないからな<警告>だ」
アサセル「幸福を恐れろって事?幸福も不幸も人によって違うと思うけど」
ルシアン「そうだ他人から見ればコーネリアは不幸だが、あれで本人は幸せなんだ」
アサセル「トーマスの不幸は?」
ルシアン「間違いなく嫁の尻に敷かれる。コートバルを名乗る女性は強くなる」
アサセル「ぎゃはははは」
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