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2 セフレの一人でいい★

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 冬也と再会したのは銀行の窓口に冬也が預金の申し込みに来た時だった。

 茶髪の物凄いイケメンが目の前に現れて私は見惚れてしまった。申込用紙に冬也の名前を見て「冬也君?」と声を掛けると「ケイちゃん、久しぶり」と返事した。可愛い弟は誰もが見惚れる美形になって帰ってきた。

 その日仕事が終わると銀行の裏口近くで冬也は私を待っていた。
「ケイちゃんにはお世話になったから、いつかお返ししたいと思ってたんだ」
 可愛い事を言ってくれる。夕飯を奢ってくれると言うので私は喜んで付いて行った。

 お洒落なイタリアンレストランに誘われ、冬也は女の子慣れしている感じがした。

「19歳だとお酒はまだ飲めないね。二十歳になったら乾杯しようね」
「来月だよ。お祝いしてくれるの?」
「いいよ、ご馳走するよ」
「ケイちゃんはさ、いつも『いいよ』って俺のお願いを聞いてくれたよね」
「そうだっけ?可愛い弟だったから何でもお願いを叶えてあげたかったかな」

「俺に同情してた?」
「冬也が可愛いとしか思ってなかった。ウチに連れて帰るのが嬉しくて」
「そっか、俺も優しいお姉さんが出来て嬉しかったよ。小母さんも親切にしてくれた」

 昔の思い出話をして今の近況も話し合った。
 冬也は九州の進学高校からこっちの有名大学に入ったと教えてくれた。話が尽きず、その後カフェに寄って気づけば22時になっていた。

「遅くなったから送るよ」
「近いから大丈夫。バスで直ぐだから」
 でも冬也はタクシーに私を乗せてマンションまで送ってくれた。連絡先を交換してその後は何度か週末にデートした。

 この頃は次の約束をしていたのに、今では気が向けば私を抱きに来るだけだ。


 初めて冬也と結ばれたのは彼の二十歳の誕生日。

「ケーキとフライドチキンが食べたい」と言うのでウチに招いてビールで乾杯した。冬也は未成年の時からお酒を飲んでいたようで、チキンを頬張って苦いビールをグイグイ飲んだ。

「真面目に学校に行ってる?単位は大丈夫?」
 ホールケーキを皿に分けて、母親のようなセリフを言えば「へへ、今年は危ないかも」とケーキに乗った苺を口に入れた。

「クリスマスになったら嫌でもケイちゃんを思い出すんだ」
「え~嫌でもって何よ・・・」

「あの日はパパの帰りを待ってたんだ。でもいつの間にかケイちゃんを待ってた。そしたら来てくれて俺メッチャ嬉しかった」

「結局あの日もウチに泊ったんだっけ」
「今日も泊っていい?」

「・・・いいよ」

 その夜、冬也は私を抱いた。

 二人とも酔っていたせいだ。
 初めてだと言うと「優しくするよ。俺に任せて」と深く口づけて舌を差し込んできた。

 裸にされると指と舌を使った愛撫で何度も私を絶頂に導いて、冬也のペニスが潤んだ膣の中に入って来ると裂くような激痛に体が仰け反った。
「痛‼」
「ごめんね、今だけ我慢して」

 その後はゆっくりと熱い肉棒が私の中を上下し少しづつ快感を与えられた。
 私は冬也にしがみ付き、甘い声で喘いで淫乱な女にされてしまった。

「ねぇ、俺の事すき?」
「うん・・・大好き」

「ケイちゃん今まで彼氏いなかったの?」
「いたけど、キスまでかな」
「キスはしたんだ・・・」
「冬也だってあるでしょう、慣れていたじゃない」
「ああ、俺の初体験は17の時、綺麗なお姉さんと」
「そっか。恋人は?」
「まだ特定の彼女はいないよ」

 冬也は私とは違う世界で生きている。私を抱いたのも深い意味は無いだろう。それでも初めてが冬也だったのが嬉しい。うっかり避妊を忘れたが翌月に生理がきてホッとした。


 それからは外で会わなくなり、冬也とは部屋デートになった。
 週末に食事の用意をして冬也を待つ。スマホに連絡が無いとガッカリして一人で食べる。

 私から連絡はしない。いつもスルーされるし、一度電話を掛けたら即切りされて二度としないと決めた。

 冬也と再会するまでは一人で過ごすのも苦にならなかった。好きなアイドルのDVDや雑誌テレビを見て夜を過ごせたし、週末には友人の美恵とコンサートや映画に出かけて淋しいなんて思った事は無かったのに。


「男が出来たんでしょ?付き合い悪くなったよ」
 美恵に言われて「弟みたいなセフレが出来た」と答えるとドン引きされた。

「セフレなんて男にとって都合のいい女じゃないの?」
「それでもいいの・・・可愛いから。私も恋人になりたいとか思ってない」
「いい加減にしておきなさいよ、のめり込んで自爆しなさんな」

 もう瀬戸際までのめり込むほど冬也が好きだ。セフレの一人でもいいから離れたくない。


 冬也は時々高額なスーツで訪れたり、チャラい恰好で香水の匂いをさせて泥酔状態で来る時もあった。

「ホストのバイトやってるの?・・・酒臭いな・・もう」
「あ~似てるかな、女の子と遊んでお酒飲んで・・時給がいいんだ・・・悪友のトシが服も買ってくれて旅行も連れて行ってくれる」

「セレブのヒモか!」
「うん、トシが金持ちなの。部屋もシェアで家賃タダ、最高でしょ?」

 ヒモじゃないか・・・冬也にちょっと幻滅した。

 水を飲ませ服を脱がせてベッドに寝かせた。手のかかる弟を抱き締めて眠れば高級な香水の匂いがして、安物のコロンを付けてる自分が惨めになった。


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