2 / 8
2 セフレの一人でいい★
しおりを挟む冬也と再会したのは銀行の窓口に冬也が預金の申し込みに来た時だった。
茶髪の物凄いイケメンが目の前に現れて私は見惚れてしまった。申込用紙に冬也の名前を見て「冬也君?」と声を掛けると「ケイちゃん、久しぶり」と返事した。可愛い弟は誰もが見惚れる美形になって帰ってきた。
その日仕事が終わると銀行の裏口近くで冬也は私を待っていた。
「ケイちゃんにはお世話になったから、いつかお返ししたいと思ってたんだ」
可愛い事を言ってくれる。夕飯を奢ってくれると言うので私は喜んで付いて行った。
お洒落なイタリアンレストランに誘われ、冬也は女の子慣れしている感じがした。
「19歳だとお酒はまだ飲めないね。二十歳になったら乾杯しようね」
「来月だよ。お祝いしてくれるの?」
「いいよ、ご馳走するよ」
「ケイちゃんはさ、いつも『いいよ』って俺のお願いを聞いてくれたよね」
「そうだっけ?可愛い弟だったから何でもお願いを叶えてあげたかったかな」
「俺に同情してた?」
「冬也が可愛いとしか思ってなかった。ウチに連れて帰るのが嬉しくて」
「そっか、俺も優しいお姉さんが出来て嬉しかったよ。小母さんも親切にしてくれた」
昔の思い出話をして今の近況も話し合った。
冬也は九州の進学高校からこっちの有名大学に入ったと教えてくれた。話が尽きず、その後カフェに寄って気づけば22時になっていた。
「遅くなったから送るよ」
「近いから大丈夫。バスで直ぐだから」
でも冬也はタクシーに私を乗せてマンションまで送ってくれた。連絡先を交換してその後は何度か週末にデートした。
この頃は次の約束をしていたのに、今では気が向けば私を抱きに来るだけだ。
初めて冬也と結ばれたのは彼の二十歳の誕生日。
「ケーキとフライドチキンが食べたい」と言うのでウチに招いてビールで乾杯した。冬也は未成年の時からお酒を飲んでいたようで、チキンを頬張って苦いビールをグイグイ飲んだ。
「真面目に学校に行ってる?単位は大丈夫?」
ホールケーキを皿に分けて、母親のようなセリフを言えば「へへ、今年は危ないかも」とケーキに乗った苺を口に入れた。
「クリスマスになったら嫌でもケイちゃんを思い出すんだ」
「え~嫌でもって何よ・・・」
「あの日はパパの帰りを待ってたんだ。でもいつの間にかケイちゃんを待ってた。そしたら来てくれて俺メッチャ嬉しかった」
「結局あの日もウチに泊ったんだっけ」
「今日も泊っていい?」
「・・・いいよ」
その夜、冬也は私を抱いた。
二人とも酔っていたせいだ。
初めてだと言うと「優しくするよ。俺に任せて」と深く口づけて舌を差し込んできた。
裸にされると指と舌を使った愛撫で何度も私を絶頂に導いて、冬也のペニスが潤んだ膣の中に入って来ると裂くような激痛に体が仰け反った。
「痛‼」
「ごめんね、今だけ我慢して」
その後はゆっくりと熱い肉棒が私の中を上下し少しづつ快感を与えられた。
私は冬也にしがみ付き、甘い声で喘いで淫乱な女にされてしまった。
「ねぇ、俺の事すき?」
「うん・・・大好き」
「ケイちゃん今まで彼氏いなかったの?」
「いたけど、キスまでかな」
「キスはしたんだ・・・」
「冬也だってあるでしょう、慣れていたじゃない」
「ああ、俺の初体験は17の時、綺麗なお姉さんと」
「そっか。恋人は?」
「まだ特定の彼女はいないよ」
冬也は私とは違う世界で生きている。私を抱いたのも深い意味は無いだろう。それでも初めてが冬也だったのが嬉しい。うっかり避妊を忘れたが翌月に生理がきてホッとした。
それからは外で会わなくなり、冬也とは部屋デートになった。
週末に食事の用意をして冬也を待つ。スマホに連絡が無いとガッカリして一人で食べる。
私から連絡はしない。いつもスルーされるし、一度電話を掛けたら即切りされて二度としないと決めた。
冬也と再会するまでは一人で過ごすのも苦にならなかった。好きなアイドルのDVDや雑誌テレビを見て夜を過ごせたし、週末には友人の美恵とコンサートや映画に出かけて淋しいなんて思った事は無かったのに。
「男が出来たんでしょ?付き合い悪くなったよ」
美恵に言われて「弟みたいなセフレが出来た」と答えるとドン引きされた。
「セフレなんて男にとって都合のいい女じゃないの?」
「それでもいいの・・・可愛いから。私も恋人になりたいとか思ってない」
「いい加減にしておきなさいよ、のめり込んで自爆しなさんな」
もう瀬戸際までのめり込むほど冬也が好きだ。セフレの一人でもいいから離れたくない。
冬也は時々高額なスーツで訪れたり、チャラい恰好で香水の匂いをさせて泥酔状態で来る時もあった。
「ホストのバイトやってるの?・・・酒臭いな・・もう」
「あ~似てるかな、女の子と遊んでお酒飲んで・・時給がいいんだ・・・悪友のトシが服も買ってくれて旅行も連れて行ってくれる」
「セレブのヒモか!」
「うん、トシが金持ちなの。部屋もシェアで家賃タダ、最高でしょ?」
ヒモじゃないか・・・冬也にちょっと幻滅した。
水を飲ませ服を脱がせてベッドに寝かせた。手のかかる弟を抱き締めて眠れば高級な香水の匂いがして、安物のコロンを付けてる自分が惨めになった。
22
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
「お前はどうしようもない、救いようのない低級女だ」なんて言っていて良いのですか? 貴方とその家を支援しているのは我が家なのですよ?
四季
恋愛
「お前はどうしようもない、救いようのない低級女だ」なんて言っていて良いのですか?
貴方とその家を支援しているのは……我が家なのですよ?
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
私の婚約者には、それはそれは大切な幼馴染がいる
下菊みこと
恋愛
絶対に浮気と言えるかは微妙だけど、他者から見てもこれはないわと断言できる婚約者の態度にいい加減決断をしたお話。もちろんざまぁ有り。
ロザリアの婚約者には大切な大切な幼馴染がいる。その幼馴染ばかりを優先する婚約者に、ロザリアはある決心をして証拠を固めていた。
小説家になろう様でも投稿しています。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。
しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。
オリバーはエミリアを愛していない。
それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。
子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。
それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。
オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。
一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。
奮闘記などと呼ばない (王道外れた異世界転生)
Anastasia
恋愛
”王道”外れた異世界転生物語。
チートもない。ありきたりな、魔法も魔術も魔物もいない。これまたありきたりな公爵令嬢でも、悪役令嬢でもない。ヒロインでもモブでもない。
ついでに言うが、これまた、あまりにありきたりな設定の喪女でもない。
それなのに、なぜ私が異世界転生者……?!
この世界で生きていかなければならない現実に、もう、立ち止まらない、後ろを振り向かない、前を進んで行くだけ!
セシル・ベルバートの異世界サバイバル。絶対に生き抜いて、生き延びてみせます!
(本編概要)セシル・ヘルバートはノーウッド王国ヘルバート伯爵家の長女である。長く――無駄で――それでも必要だった7年をやーっと経て、嫌悪している侯爵家嫡男、ジョーランからの婚約破棄宣言で、待ちに待った婚約解消を勝ちとった。
17歳の最後の年である。
でも、セシルには秘密がある。
セシルは前世の記憶を持つ、異世界転生者、とういことだ。
“異世界転生者”の“王道”外れて、さっぱり理由が当てはまらない謎の状況。
なのに、なぜ、現世の私が異世界転生?!
なにがどう転んで異世界転生者になってしまったのかは知らないが、それでも、セシル・ヘルバートとして生きていかなければならない現実に、もう、立ち止まらない、後ろを振り向かない、前を進んで行くだけ!
それを指針に、セシルの異世界生活が始まる。第2の人生など――なぜ……?! としかいいようのない現状で、それでも、セシルの生きざまを懸けた人生の始まりである。
伯爵家領主に、政治に、戦に、隣国王国覇権争いに、そして、予想もしていなかった第2の人生に、怒涛のようなセシルの生がここに始まっていく!
(今までは外部リンクでしたが、こちらにもアップしてみました。こちらで読めるように、などなど?)
【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。
まりぃべる
恋愛
私は公爵令嬢。
この国の高位貴族であるのだから身分に相応しい振る舞いをしないとね。
ちゃんと立場を理解できていない人には、私が教えて差し上げませんと。
え?口うるさい?婚約破棄!?
そうですか…では私は修道院に行って皆様から離れますからどうぞお幸せに。
☆★
全21話です。
出来上がってますので随時更新していきます。
途中、区切れず長い話もあってすみません。
読んで下さるとうれしいです。
長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる