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6 大聖女選定会
しおりを挟む震災から10日経つと司祭様が公爵家に訪れた。
「アヴィオール神殿に戻りなさい。これは大司祭様のご命令です」
「司祭様、聖女認定の取り消しをお願いします」
「いいえ、大聖女の選定を行います。貴方も参加しなさい」
「私は王太子殿下の婚約者候補から外れましたので・・・」
「大聖女が必ず王太子妃の候補になるという決まりは有りません。辞退すればいいのですよ」
選定会なら参加するだけでいいかな。どうせ選ばれないわ、ユーミナがいるもの。
なんだかまた恥の上塗りになる気がするけど、聖女認定を取り消して貰いたいし。
「承知致しました。参加だけします、どうか期待はなさらないで下さい」
「選定会は2週間後です」
「え? 早くないですか」
「震災で世間は暗いですからね、明るい話題を提供したいのです。それに貴方の為でもあるんですよ。奇跡を起こして悪い噂を払拭しなさい」
悪評は神殿と公爵家のメンツに関わるものね。
「でも奇跡は起きないと思います」
選定会だから、誰かの命を救うわけではないもの。大聖女に私は選ばれないし。
「どんな手を使っても大聖女に選ばれなさい。それが神殿の希望です。平民を大聖女とする訳にはいきません」
「それって聖石を「奇跡を起こしなさい!貴方の為ですよ!」
まさか神殿は【聖石】の使用を黙認していたの?司祭様は選民主義なのね。
ダメだ私は悪事から足を洗ったのよ!
でも大聖女に選ばれたら処罰を免れるかも、だって準王族扱いよ。オマケに私は公爵令嬢。
ユーミナはまだ聖力に目覚めて日も浅いから、もしかしたら勝てるかもしれない?
どうする?あああどうしよう~神様、こんな時こそ≪声≫で助けてよ!
***
翌日父が戻ってきた。
「領地では橋が崩れかけていた。その修理だけで済みそうだ」
父は善良な領主だ、闇オークションに参加したのだって、うちの家宝の宝石を盗まれ探していたからだ。
うちの家宝は見つからなかったが【聖石】がオークションに出された。
私の為を思って【聖石】を買ってくれた。二人ともその行為がどんな恐ろしい結末を迎えるか全然考えていなかった。
それは物語の強制力だったのかしら。
「ハーレン国には書簡を出しておいた。返事を受け取り次第返却に向かうつもりなんだが、返事がまだ来ない」
「お父様、まさかハーレン国で犯罪者にされませんよね?」
「上手く説明したつもりだが、アヴィは心配しなくていい。父に任せなさい」
【聖石】はハーレン国に返す。私はもう間違えないわ。
神殿には戻らなかった。何度も催促されたけど選定会には参加するとだけ返事した。物語の強制力で私はユーミナを虐める恐れがある。元々苛烈なアヴィオールの性格だ、何をするか分からないもの。
「帰ってくれ!煩く言うともう寄付はしないぞ!」
神殿からの迎えは父が追い払ってくれて選定会まで私は屋敷に籠っていた。
待ちに待ったハーレン国から返事が来た。
「災害で混乱しているだろうから【聖石】はこっちまで取りに来てくれるそうだ」
「そう、ハーレン国は怒ってない?2年も前の話なのに」
「それが、見つけ出してくれて感謝するとある」
「良かった・・・私、ちゃんとお詫びをするわ」
「私も家督を譲ってケジメをつけるつもりだ」
母と弟には何やってるんだと怒りを越えて呆れられた。
「馬鹿親子!」と弟に詰られても仕方ないわ、その通りなのだから。
***
大聖女の選定会の日が来た。僅かな日数で頭角を現したユーミナの下馬評が高い。
選定は王子が18歳になる年に行われる、毎年やるわけじゃない。王子はまだエドワーズ殿下の下に3人いるからこの後も3回行われるだろう。
大聖女とは聖女の中で最も優秀で神に選ばれた者。
大聖女候補が女神の水晶玉に祈りを捧げると大司祭様が神託を受けるのだ。
きっとユーミナが女神の水晶玉を最も輝かせ、誰もが認める大聖女になるわ。小説では【聖石】ですらユーミナには勝てなかった。それを認められなくてアヴィオールは凶行に出たのだ。
大丈夫、ナイフは持ってないし、今日はハーレンの使者が【聖石】を受け取りに来るから大切にお父様が保管してくれたわ。
何度も懺悔した、もう神様も許してくれるわよね?
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