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4 ≪汝の最大の罪を告白し悔い改めよ≫
しおりを挟む「聖女様、最後にこの方をお願いします」
ベルトの声で我に返った。
最後は無精ひげの青年。命に別状は無さそうだが顔に酷い怪我を負って片目が潰れていた。
土埃に塗れて汚い男だがベルトの他にも従者を連れており高貴な男だと推測される。
「神様どうか私に最後の力を!」
≪懺悔せよ≫
「弟の恥ずかしい秘密をお茶会でご令嬢たちに・・・」
≪汝の最大の罪を告白し悔い改めよ≫
「そ、そ、それは」
【聖石】の事ですね!偽聖女を告白せよと仰るのね。さすがに無理・・・
「聖女様?どうされました?」
「ベルト・・聖女様はお疲れになったのだろう・・」
無精ひげ青年は苦しそうだ、だけど・・・ああ・・無理!
≪懺悔せよ≫
うぅぅう神様、懺悔したら許してくれますか?処刑を回避してくれますか?
「聖女様!」
逃げたい、ここから逃げたい──────!!!
だが私は街の人々に囲まれて逃げることは出来なかった。
≪懺悔せよ≫
「ぐぅぅ・・私は偽聖女です!【聖石】の力を借りて昨日まで治療していました。お許し下さい!」
「なんだって!」
「それは誠ですか!」
「聖石?」
「偽聖女???」
「・・・聖女様・・・」
無精ひげ男は光に包まれると奇跡は起こり、怪我は治って目も元通り、水色の瞳を取り戻した。
男は嬉しそうに私の両手を握って自身の額に当てた。
「聖女様有難うございます。おかげで傷がすっかり癒えました」
「良かったですね。きっと貴方に神のご加護があったのでしょう」
「それで俺を治したのも【聖石】を使ったのですか?」
「いいえ、ハーレン国に戻すよう手配してあります」
「そうでしたか、貴方は立派な聖女様です」
「あはは、偽聖女ですわ。ではこれで失礼致します」
「本当に感謝する」
「いえいえ・・私は偽聖女ですから・・・あはは」
ああ私の人生は終わった・・・恥の多い人生だった。
きっと世間で噂になって偽聖女と非難されるだろう。ハーレン国からも抗議が来て修道院送りなら御の字ね。
でも私にも良心があったのね。苦しむ人達を見捨てるなんて出来なかった。
これは前世の記憶が蘇ったからかしら。
「聖女様バンザーイ!」
「有難うございました!」
そんな街の声も今は耳に届かず、私は放心状態で公爵家へ帰ったのだった。
地震の被害は我が国の広範囲に広がっていた。
お父様は地震で受けた領地の被害を確認しに出かけて【聖石】はまだ家にあった。
これを持っておけば恥をかかずに済んだのに。
でもどこか達成感はあった。
今まで感じたことのない清々しい気持ちが胸に沸き起こっていた。
***
神殿を去って五日経つとなぜかエドワーズ王太子殿下が私に会いに来た。
「先ぶれも無く申し訳ない。街の復興の様子を見て回った帰りなんだ」
「そうでしたか。大きな被害が出ましたね」
「幸いなことに死者は出なかったようだ。家を失った者たちに教会や神殿では炊き出しも行っている。君が抜けた後をユーミナという少女が埋めているようだ」
「彼女は本物の聖女ですわ。私は偽物でした」
「君の残した功績は大きい、だが不穏な噂もある」
ドキッとした。
今は何も言えないわ。話題を逸らさなきゃ───
≪懺悔せよ≫
えええええええええ、ここで≪懺悔≫の声?!───なんでよぉ!
「で、で、殿下、不穏な噂とは・・・偽聖女・・【聖石】のことですよね?」
「そうだ、他にも神殿での君の振る舞い。災害で多忙な神殿から態と逃げ出した…などと言われている」
「教会や神殿は地震被害の方々救済で多忙でした。なのに私は断罪から逃げ出そうと自分の事ばかり。我儘な私を許して下さい。申し訳ありませんでした!」
私は土下座して神に懺悔した。終わった、私の悪事はすべて晒され処刑されるんだわ。エドワーズ殿下は正義感が強い方だ。見逃してはくれないでしょうね。
でも家族だけでも守らなくては。
「【聖石】は私が父に無理やり頼んだのです!悪いのは私一人です。家族は関係ありません。殿下、どうか許して下さい」
「残念だが、君には婚約者候補から外れて貰うよ。災害の状況が落ち着いたら、後ほど沙汰を言い渡す」
「はい、承知致しました」
「君は私の初恋だった。いつから変わってしまったんだろうね」
「殿下も私の初恋でした。殿下は変わらずにいて下さいまし」
涙が零れた、悪事は隠し通せない。シリウス様を手に掛けなかった事だけが救いだった。
でもなんで今≪懺悔≫させられたのよ!もっと後でもいいじゃん、最悪じゃん!
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