偽聖女様は≪懺悔≫して破滅フラグを回避する

2 処刑回避よ！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　神殿の中は地震で祭壇や壁、物が壊れ、神官や修道女達が走り回って片付けていた。

「アヴィオール様、お怪我はありませんでしたか？」
　声を掛けてきたのは神官のシリウス。彼が平民聖女の恋人で私に殺される不運な人。

「ええ、大丈夫よ」

　またグラグラと大地が揺れて神殿内に悲鳴が上がり、シリウス様は咄嗟に私を支えてくれた。

「有難うございます」
「いえ、片付けが終わったらケレソーム様のお怒りを鎮める祈りがあるそうです。用意しておいて下さい」

　シリウス様に部屋まで送られて、ドアを開けると地震で散らばった部屋の中を侍女が片付け終わったところだった。

「お嬢様ご無事でしたか」
「ええ、お祈りの準備をしたら仮眠をとるわ」
「畏まりました」
　本当は神殿に侍女同伴はNGだけど、寄付をいっぱいして我儘を通したの。

　一番罪深いのは、私が偽聖女だという事。
　私は＜ハーレンの魔石＞を使って聖女を演じている。

　子どもの時は聖力を持っていたのよ？でも今では【聖石】に頼らなければ何もできなくなった。
　悪事がバレたら家が潰される。

　アヴィオールって本当にバカよね。公爵令嬢なんだからそれだけで贅沢に楽しく暮らせるじゃないの。

　そりゃ王太子はイケメンだけどメッチャ嫌われてるし、そんな男と結婚してもねぇ。

　こうなったらケレソーム様のお怒りで私の聖力が消えたことにしょう。

　平民聖女が神殿に来る前に逃げよう。

　処刑回避よ！




　夜明け近くにケレソーム様へのお祈りが始まった、今日だけは懸命に祈って懺悔するわ。
（もう悪いことはしません、御免なさい。死亡フラグは解除して下さい。いい子になります、神様許して！）


　お祈りタイムは終わり地震も止まったし、私は今日神殿からオサラバしようと決心した。

「シリウス様、私は神殿を去ろうと思います」
「はぁ、理由を聞かせて下さい。一応あなたのお世話係ですから」

「夜会で倒れて、頭を打ったショックで聖力が消えたのよ」
「では聖力の再鑑定を行いましょう」

　女神の水晶玉で再鑑定を受けた。光るわけない・・・・あれ？

「光りましたね。ごく普通に」
「そんなはずは・・・」

「確かに聖力は弱まっています。頭を強打したんですか？」
「そうなんですの！ほほほ」

「もう聖女ごっこに飽きたんですね？神殿は遊ぶ場所では無いのですよ。司祭様に報告しておきます」

「遊んでないです。真面目にやっています」
「なら早速、奉仕活動を始めて下さい」
　辞めたいって言ってるのに・・・家に帰りたいのにぃ！

「シリウス様、私はもう聖力が無いんです！」

「我儘言ってないで行きますよ。昨夜の大地の揺れで早朝から怪我人が大勢神殿に訪れているんです」

　シリウス様の言う通り神殿には大勢ケガ人が集まっていた。聖女や聖人と呼ばれる治癒能力者が治療している。

「あれ？あの子は・・・」
「ああユーミナさん、昨夜突然聖女の力に目覚めたと言って神殿を訪れ、奉仕活動に参加しているんです。」

　そうそうユーミナって名前だった。でもおかしいな、平民聖女ユーミナはまだ神殿に来ないはずなのに。地震でケガして動けない人を街中で治療して回って、その功績で神殿にスカウトされるって話だったわ。

「聖女様、お願いします」
　ユーミナを見ていると私の前に頭を怪我したお爺さんを先頭に何人もの列が出来た。まだ女神の水晶玉が光ったんだから治療くらい出来そうね。

　私はすました顔で治療を始めたのだけども・・・
　昨日までなら楽勝だったのに【聖石】が無いから２人治療したら、無様にも私はぶっ倒れてしまった。



「ユーミナさんが来てくれたから良かったですけど・・・本当に聖力も魔力も失ったんですね」

「シリウス様、私ね・・もう聖女じゃないのよ。いえ最初から違ったんだわ」
「司祭様に話してきましょう。休んでいて下さい」

　これで私は神殿を追い出され、ユーミナとシリウス様が恋仲になって結ばれる。【聖石】はハーレンに戻して、王太子殿下の婚約者候補を下りたら処刑フラグは回収よ！完璧！