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29 ナタリーとクロード
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+++他者視点(ナタリー)
クレアが公爵令嬢なんて、どうしてこうなったのかしら。
クレアは店が命の、馬鹿な義妹達に振り回されていた惨めな子、私の引き立て役だったのに。
お茶会でもクレアの事を話題にすれば他の令嬢たちは面白がって楽しんでくれた。
そんなクレアとクロードを結び付ければミモザがどんなに悔しがるか、想像しただけで笑えたわ。
私はクロードが好きだった。
クレアに預けておけば、いつか返してもらえると思っていたわ。
女好きのヘンリーがセシリーと深い仲なのも知っていた。
クレアに興味があったのもね。
別に構わない、私が欲しかったのは伯爵夫人という地位だけよ。
なのにあの馬鹿たちは罪を犯し、私の計画は崩れたわ。
婚約は破棄になった。
私は関係なかったのに取り調べまで受けたのよ。
クレアもいつからか私の思い通りに動かなくなった。
私は店のお得意様で子爵令嬢。
クレアは私のいう事を聞いていれば良かったのよ。
なんで生意気になったのかしら平民だったくせに、公爵令嬢なんて認めないわ。
襲撃されて隠し部屋に隠れていただなんて嘘に決まってるわ。
傷物になったのを誤魔化しているのよ。
噂では義妹を虐めていた事になってるから復讐されたんだと言いふらしてやったわ。
侯爵夫人候補ですって?平民に戻ればいいのよ。
週末の今日はカフェにクロードを呼び出したの。
ヘンリーの事で相談したいって手紙を出せば、すぐに返事をくれて会えることになった。
遠目でも彼だとわかるわ。素敵だもの。会いたかったクロードが来てくれた。
クロードは優しい人だもの、きっと傷ついた私を慰めてくれるわ。
「ナタリー嬢、久しぶりだね」
「ええ、お会いできて嬉しいわ」
「今日はどうしたの?ヘンリーとは婚約破棄したんだよね」
「・・・ええ、あんな人だとは思わなかったわ。私ショックで」
「会ったばかりの頃は女好きだったけど悪いヤツじゃなかった。クレア嬢と会った時からヘンリーは俺を避けだしたんだ」
「ええ、セシリーのせいだと思うわ」
「ナタリー嬢は婚約者だったのに止められなかったのか? 彼の愚行を」
「そうね、私が悪かったわ。そのせいでクレアが傷物になってしまって」
クロードの目がスッと細められた。不機嫌にさせたわ、まずい。
「本当よ、クレアって嘘つきなのよ。侯爵家のアスラン様の事だって、自分は嫌われてるなんて嘘を言ったのよ」
「なんで彼女が嫌われるんだ。傷物なんてひどい言い草だな」
「え、あの、悪い噂で嫌われてるって」
「くだらない噂なんて君が訂正してあげればいいじゃないか。親友なんだろう?」
「もう会ってもくれないのよ。公爵家の養女になったからって傲慢だわ」
「君の婚約者に酷い目にあったんだ。家まで燃やされて、今の君には会いたく無いだろうね」
「クロード様、クレアなんかを庇うの?」
「俺の初恋の人だった。君から彼女が店を継ぐと聞いて、もしかしたら結婚できるかもしれない・・・と期待した自分が恥ずかしいよ。クレア嬢には幸せになって欲しい。もちろんナタリー嬢もね。二人で会うのはこれっきりにしよう。噂が立ったらお互い困るだろうから」
クロードは立ち上がりお茶も飲まずに外に出てしまった。
何か誤解させたかもしれないと慌てて私も外に出た。
通りのずっと先でクロードが女性と歩いているのが見えた。
その後ろ姿は黒髪の、どこかクレアに似た女性だった。
屋敷に戻ると怖い顔をした父が「お前は何をやってるんだ」と迫ってきた。
「何もしないわ。いきなり何よ」
「サウザー公爵家から抗議が来てるぞ。クレア様を傷物だと言ったそうだな」
「だってその通りでしょう! クレア様? 元平民に媚びてるの?」
パァ────ン と頬を打たれた。
「愚か者め、公爵家に睨まれるなんて、お前は当分修道院に隠れておれ」
「そんな、お母様助けて!」
「傷物だなんて同じ女性に何故そんな事いえるのよ。信じられないわ」
「だって、許せないわ・・・クレアばっかり幸せになって!」
「お友達の幸せを何故祝福できないの? ・・・情けないわ」
「公爵家のご令嬢と友達になれたのに馬鹿な娘だ。全く、なんと謝罪すればいいやら」と父は頭を抱えた。
女子学園は退学になった。クレアが婚姻を終えるまで修道院で謹慎。
『除籍されないだけマシだと思え』と父に言われた。
私はそんなに悪いことをしたの? ちょっと噂しただけじゃないの!
ああ、人生をやり直せるなら初めからやり直したい。
クレアが公爵令嬢なんて、どうしてこうなったのかしら。
クレアは店が命の、馬鹿な義妹達に振り回されていた惨めな子、私の引き立て役だったのに。
お茶会でもクレアの事を話題にすれば他の令嬢たちは面白がって楽しんでくれた。
そんなクレアとクロードを結び付ければミモザがどんなに悔しがるか、想像しただけで笑えたわ。
私はクロードが好きだった。
クレアに預けておけば、いつか返してもらえると思っていたわ。
女好きのヘンリーがセシリーと深い仲なのも知っていた。
クレアに興味があったのもね。
別に構わない、私が欲しかったのは伯爵夫人という地位だけよ。
なのにあの馬鹿たちは罪を犯し、私の計画は崩れたわ。
婚約は破棄になった。
私は関係なかったのに取り調べまで受けたのよ。
クレアもいつからか私の思い通りに動かなくなった。
私は店のお得意様で子爵令嬢。
クレアは私のいう事を聞いていれば良かったのよ。
なんで生意気になったのかしら平民だったくせに、公爵令嬢なんて認めないわ。
襲撃されて隠し部屋に隠れていただなんて嘘に決まってるわ。
傷物になったのを誤魔化しているのよ。
噂では義妹を虐めていた事になってるから復讐されたんだと言いふらしてやったわ。
侯爵夫人候補ですって?平民に戻ればいいのよ。
週末の今日はカフェにクロードを呼び出したの。
ヘンリーの事で相談したいって手紙を出せば、すぐに返事をくれて会えることになった。
遠目でも彼だとわかるわ。素敵だもの。会いたかったクロードが来てくれた。
クロードは優しい人だもの、きっと傷ついた私を慰めてくれるわ。
「ナタリー嬢、久しぶりだね」
「ええ、お会いできて嬉しいわ」
「今日はどうしたの?ヘンリーとは婚約破棄したんだよね」
「・・・ええ、あんな人だとは思わなかったわ。私ショックで」
「会ったばかりの頃は女好きだったけど悪いヤツじゃなかった。クレア嬢と会った時からヘンリーは俺を避けだしたんだ」
「ええ、セシリーのせいだと思うわ」
「ナタリー嬢は婚約者だったのに止められなかったのか? 彼の愚行を」
「そうね、私が悪かったわ。そのせいでクレアが傷物になってしまって」
クロードの目がスッと細められた。不機嫌にさせたわ、まずい。
「本当よ、クレアって嘘つきなのよ。侯爵家のアスラン様の事だって、自分は嫌われてるなんて嘘を言ったのよ」
「なんで彼女が嫌われるんだ。傷物なんてひどい言い草だな」
「え、あの、悪い噂で嫌われてるって」
「くだらない噂なんて君が訂正してあげればいいじゃないか。親友なんだろう?」
「もう会ってもくれないのよ。公爵家の養女になったからって傲慢だわ」
「君の婚約者に酷い目にあったんだ。家まで燃やされて、今の君には会いたく無いだろうね」
「クロード様、クレアなんかを庇うの?」
「俺の初恋の人だった。君から彼女が店を継ぐと聞いて、もしかしたら結婚できるかもしれない・・・と期待した自分が恥ずかしいよ。クレア嬢には幸せになって欲しい。もちろんナタリー嬢もね。二人で会うのはこれっきりにしよう。噂が立ったらお互い困るだろうから」
クロードは立ち上がりお茶も飲まずに外に出てしまった。
何か誤解させたかもしれないと慌てて私も外に出た。
通りのずっと先でクロードが女性と歩いているのが見えた。
その後ろ姿は黒髪の、どこかクレアに似た女性だった。
屋敷に戻ると怖い顔をした父が「お前は何をやってるんだ」と迫ってきた。
「何もしないわ。いきなり何よ」
「サウザー公爵家から抗議が来てるぞ。クレア様を傷物だと言ったそうだな」
「だってその通りでしょう! クレア様? 元平民に媚びてるの?」
パァ────ン と頬を打たれた。
「愚か者め、公爵家に睨まれるなんて、お前は当分修道院に隠れておれ」
「そんな、お母様助けて!」
「傷物だなんて同じ女性に何故そんな事いえるのよ。信じられないわ」
「だって、許せないわ・・・クレアばっかり幸せになって!」
「お友達の幸せを何故祝福できないの? ・・・情けないわ」
「公爵家のご令嬢と友達になれたのに馬鹿な娘だ。全く、なんと謝罪すればいいやら」と父は頭を抱えた。
女子学園は退学になった。クレアが婚姻を終えるまで修道院で謹慎。
『除籍されないだけマシだと思え』と父に言われた。
私はそんなに悪いことをしたの? ちょっと噂しただけじゃないの!
ああ、人生をやり直せるなら初めからやり直したい。
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