異世界に行った理由

ミカン♬

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10 ユキ

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 少しの間だったけどお姉ちゃんに会えた。怪我を手当てしてくれて、話が出来た。
 魔法が使えるんだ凄い!羨ましいな。

 トレードで家に戻った私を見て、母は悲鳴を上げて混乱していた。 
 タケが失神していた。お姉ちゃんの友達だった時は優しそうだったのに、こんな乱暴な男だとは知らなかった。二股するような男だもん最低だよね。

 自分で救急車を呼んでから110番に電話した。

 病院で手当てを受けて警察に事情を聴かれたので説明をした。
  

 *
 今日の放課後、家に帰ると誰もいなかった。鍵を出して玄関に入ったらタケが来た。

『おい、ミオは帰ってるんだろう?』
 メッチャ偉そうに言われてムカついた。

『行方不明だよ。アンタには関係ないじゃん』 
『そうだよ!俺は関係ないのにレイコに振られるし、俺のせいでミオが自殺したとか噂されていい迷惑なんだよ』 

『振られたのは二股なんかするから自業自得。お姉ちゃんは帰らない。帰ってこれないから』 
『嘘つけ!帰ってるはずだ。駅でのチラシ配りも止めて、お前ら家族も普通に暮らしてるじゃないか』

『はぁ?我が家が普通に暮らすのが悪い事なの?何も知らないくせに、ふざけんな!』
 私が言い返したのが腹立ったんだろう、タケは勝手に家の中に上がり込んだ。

『ちょっと!帰ってよ』
『絶対家の中にいるはずだ、見つけてやる。ミオ!いるんだろ?ミオ!俺の濡れ衣を晴らせよ!』

『警察呼ぶよ!』
『あれだな、ミオは誘拐されて強姦されたんだろう。だから戻っても人前に出られないんだろ?』
『酷い・・・そんな訳無いでしょう!』

 タケは2階に駆け上がり部屋を調べ、1階に下りてくるとあちこちの部屋の押し入れの中まで調べ出した。

『はい、不法侵入、室内物色の泥棒行為決定!』
 私はスマホでタケの行動を録画した。するとタケが『映すな!消せ!』と私のスマホを取り上げようとしたので、私は『110番するからね!お巡りさん~泥棒です!』と電話を掛けようとすると、頭に激痛が走った。

『お前、生意気なんだよ!ミオ出て来いよ!ユキを殺すぞ!』
 床の間に飾ってある壺で頭を殴られていた、手で押さえると血が出ていた。

『ああ、殺人未遂、脅迫罪・・』 
『うるさい!』 
 タケは割れた壺の欠片を握って私の前で振り回したので、防御した腕に切り傷ができた。

 お姉ちゃんを侮辱したタケが許せなかったけど、ちょっと挑発し過ぎた。殺されるかもしれないと思ったら、リシャールさんとトレードされて私は助かった。


 実際タケはリシャールさんに殴られて気絶させられたんだけど、そこは警察に話せなくて『タケに殺されると思って、夢中でお腹を蹴飛ばしたら気絶した』と言っておいた。


 私の怪我は頭も腕も何針も縫って痛い目にあった。

 タケは精神が普通でない状態と判断されて入院した。
『外人の騎士が現れたんだーーー』と言い続け、幻覚を見たことになっている。

 タケが罪に問われないなら魔法で治して貰えばよかったな。


 生リシャールさんを見た母が羨ましい。相当良い男だったらしい、会いたかったな。
 またトレードしてくれないかな。異世界をこの目で見たかったのに。

 いつかお姉ちゃんが異世界に行ったと話せる時がくるだろうか。その時はもうお姉ちゃんから、私達の記憶は消えているんだろうか。淋しいな。


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