上 下
7 / 77

7.言い訳はもっと最低でした

しおりを挟む
いつの間にか静かになっていたエミリの肩が、神宮寺の言葉に反応してピクッと動いた。

「…不満があったのなら言ってくれれば別れ…」
「違うの!」

エミリは、急に顔を上げ俺の足にしがみ付いた。

「譲に不満なんて無いわ!最高のよ!」

(最高の結婚相手…?)

確かに、付き合って2年だし、このままいけば結婚するだろうと思ってはいたが、その言葉に妙な引っ掛かりを感じた。

「そっか~。結婚相手としては最高でも、エミリちゃんの好みではなかったんだね!顔もSEXも!」
「…っ!」

今度は、顔を真っ赤にして神宮寺を睨むエミリ。

「白状しちゃいなよ~。カワイイ系の男との激しいSEXが好きだって!あ、童貞好きも足しとく?」
「…神宮寺、それは本当か?」
「うん!これ見て。エミリちゃんのウ・ラ・ア・カ!」

神宮寺に見せられた画面は、数年前から投稿されているらしく、お持ち帰り自慢と卑猥な写真が日々アップされていた。中でも、童貞とSEXした日は動画が投稿されていた。もうAVだな…。

「もう!何なのよアンタ!!そうよ!私は昔っからカワイイ男が好きなのよ!童貞?大好物よ!私の体で初体験なんて興奮しかないわ!それに初めてだとすぐSEXの虜になって何度でも求めて来るのよ?優越感しかないじゃない。譲と付き合ってSEXするようになってからは自重したのよ?けど、結局物足りなくなって、クラブに行って好みの子を見つけてお持ち帰りしたわ。一度すると、体が疼いて毎日のようにクラブに通っていたわ。まさか、ビッチと思われていたとわ知らなかったけど…」

「いや、めっちゃビッチじゃん!」
「…で、俺の出張の時はここをホテル代わりにしてたのか?」
「ええ。ホテル代もバカにならないじゃない?ここならベッドも大きいし、部屋も綺麗だし。何より、立派なマンション住まいで尊敬の目で見られていい気分になるのよ、ここ」

開き直ったエミリの言い分に、呆れて言葉が出てこない…。俺はこんな女を愛していたのか?今まで気が付かなかった自分の鈍感さを呪いたい…。

「はぁ…。もういい、耳障りだ。さっさと鍵を置いてここから出て行ってくれないか」
「ゆ、譲!ごめんなさい!もうしないから!」
「いや、そういう次元じゃないよ。もう生理的に無理。それに、俺はじゃないんだろ?顔もSEXも」
「あっ……」

今更自分が暴露した話に気が付いたのか、エミリは項垂れたまま動かなくなった。

「羽柴ぁ~鍵ってこれ~?」
「ん?ああ、それだ」
「じゃ、これ外してぇ~っと。あ、エミリちゃん、指貸してね~」

そう言って、神宮寺はエミリの指をスマホに当ててそのスマホを操作する。

「はい、返すね~。羽柴に関する事、全部消したから。もう羽柴に関わらないでね~!(羽柴の前に現れたら、俺何するかわかんないよ?)」
「ひっ…!」

口元は弧を描き、口調は呑気な感じだが、神宮寺の目は全く笑っていなかった。その目を見て、エミリは青を通り越して白い顔をしてスマホを震える手で受け取ると、鞄を掴み這うようにして家から出て行った。

「無事に別れられて良かったね、羽柴!」
「あ、ああ…」

何か、かなり色んなとこ抉られた気がするけどな…。安堵と疲れでソファーにもたれて大きな溜息を一つつくと、神宮寺の顔が目の前に現れた。いや、近いって…。

「俺、役に立った?」
「ああ、ずいぶん助かったよ。ありがとな」
「良かった~!口出しし過ぎて怒られるかと思った」

あ、自覚はあったんだ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

処理中です...