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翌日、商業ギルドのマスターがそろそろ来るかなと待っていると、城の中が騒がしくなる。

何かあったのだろうか……。
まだ商業ギルドには喧嘩を売る前なんだけどな。

騒ぎは城の外で起きているようなので、窓から見ることにする。

そこにいたのはフクロウさんだった。

もしかして、昨日の犯人が僕だと気づいたのか?
それとも、ここで助けた人を保護しているのを知られたか……。

悪事からは手を引くと言っていたけど、お金を稼ぐ方法を考えることが出来なかったのだろうか……。

「何事ですか?」
僕は慌てて走っている人を止めて、理由を聞く。
急いでいるということは、事情を知っている人だろう。

「お騒がせしてすみません。すぐに対処致します」

「それはいいんだけど、何があったの?」

「はっ!失礼しました。スラムに住む者が仕事をさせろと言っています。断ったのですが、ここで働かせろの一点張りですので、ルマンダ様を呼びに行くところです」

「なぜ断ったのですか?」

「スラムの者を雇うなど、ここにいる者が危険だからです」

「……そうですか。僕が対処します。代表者を1名だけ応接室に案内して下さい」

「危険です!あそこのスラムには高ランクの冒険者でも手を焼くほどの者がいるとの噂があります」

「大丈夫だから連れてきて。いや、そろそろ商業ギルドのマスターが来るかもしれないから、やっぱりどこか空いてる部屋で待ってもらっていて。その後に呼びに行くから何か適当にお茶菓子でも出しておいて」

「いや、しかし……」

「……これは命令だよ。代表者を決めさせて、部屋に案内するように。向こうが待てないというなら帰ってもらって」

「承知しました」

とりあえずこれで城内は落ち着くだろう。

「マ王様、スラムの者を城に入れたと聞きましたが?」
部屋に戻り、シンクと戯れているとルマンダさんに聞かれる。

「そうですね。何か問題は起きてますか?」

「いえ、何か企んでいる様子もありません」

「そうですか。それで何のようですか?」

「マ王様はあの者たちを雇うおつもりですか?」

「話を聞いてから考えます。話も聞かずに追い返そうとしていたので、それは違うと思い口を出しました。言ってませんでしたが、僕はスラムもどうにかしたいと思っています。スラムを解体するという意味ではなく、あそこに住んでいる人がまともな生活を出来るようにという意味です」

「承知しました。話し合いには私も同席してもよろしいでしょうか?」

「もちろんだよ」

「ありがとうございます」

「失礼致します!こちらにルマンダ様はおられますでしょうか?」
ノックされて、用件を言われる。

「マ王様、失礼します。何用だ?」

「商業ギルドのギルドマスターが来られました。今日の昼に城まで来るように言われているそうです」

「呼んだ覚えはないが……」

「僕が呼んだんだよ。応接室に通して」

「マ王様!そのような事聞いておりません。もう事を起こすおつもりですか?」
ルマンダさんが慌てて聞いてくる

「商業ギルド側の考えを聞こうと思っているだけだよ。今日何かするつもりはないから安心して」

「……わかりました。こちらも同席してもよろしいですか?」

「僕の方から頼みたいくらいです。お願いします」

僕はオボロを連れて、ルマンダさんと応接室へと向かう。

「何故オボロ様をお連れになるのですか?」

「オボロは相手が嘘を言ったり、こっちを騙そうとしている時に空気でそれがわかるんだよ。連れて行くのはシンクでもいいんだけど、相手を牽制するって意味でもオボロの方がいいかなって」
侵略の時に狐がいたというのは有名になっているので、警戒するだろう。

「そうでしたか。承知しました」

「わざわざお越しいただきありがとうございます」
応接室に入ると、すでに商業ギルドのマスターと思われる恰幅の良いおじさんがいた。
ルマンダさんが挨拶をした後、僕達は椅子に座る。

「まずはご紹介させて頂きます。こちらに座すお方が私が仕える主であるマ王陛下です」
ルマンダさんが僕の紹介をする。

「お初にお目にかかります。私はこの街の商業ギルドの管理をさせていただいておりますモスタブと申します。以後お見知り置きを」
モスタブさんが挨拶する。

「よろしく」

「本日はどのようなご用件でしたでしょうか?昨日、商業ギルドまでわざわざ足を運んで頂いた様でしたが、仰って頂ければ時間をお空けいたしましたのに……」
モスタブさんが申し訳なさそうに言う。

「面倒だと思ってるのじゃ」
オボロが教えてくれるけど、お偉いさんに呼ばれたら、大体の人はそう思うだろう。

「身分を隠していましたので気にしないで下さい。用件という程の用件はありません。挨拶に伺っただけです」

「そうでしたか。わざわざお手数をお掛けしました」

「一つ聞きたいことがあるんですがいいですか?」

「なんでしょうか?」

「商業ギルドを訪ねた時に、商品も見ずに、同業者がもういるからという理由で出店の許可を出してもらえなかったという方に会いました。何故そのようにしているのでしょうか?」

「職員が判断したことですので私にはなんとも言えませんが、他にも何か理由があったのではないでしょうか?それから、商業ギルドは出店の許可は出しておりません。登録をしているだけです」

「嘘を言ってるのじゃ」
教えてくれるオボロを撫でる。
これは僕もわかる。
流石にトップが知らないということはあり得ない。
本当に知らないなら、下の人間がこの人を意図的に蚊帳の外にしているということだ。

「出店の許可ではなく、登録をしているだけなんですね。どう違うんですか?」

「商人が店を出すのは自由です。商業ギルドが口を出すことがあるとすれば、それは商業ギルドが貸している土地を使っている場合だけでしょうか。登録をすることで、商業ギルドに売り上げの一部……これは登録時に交わす契約によって異なりますが、一部を頂く代わりに、何かトラブルが発生した時に相談に乗り、解決するお手伝いを致します。経営が傾きそうになった時の融資も登録している方は優遇致します」

「なるほど。そうなんですね。では、商業ギルドを通さずに店を出すのは何も問題無いわけですね?ただ、商業ギルドから融資を受けるなどの援助を得られないというだけで」

「その通りです。誰でも登録していたら、商業ギルドが損を被ります。ですから成功が難しいと思われる方の登録をお断りしているだけです」
オボロが鳴く。これも当然嘘のようだ。

「では、似た商品を売る店がないのは偶然だということですか?ライバルがいないからか、利益を取りすぎて販売価格が高い気がしますが……」

「新規に出店を考えている方が、今出店している方のライバルになる力がないのが原因かもしれません」
鳴くオボロを僕は撫でる。

「商業ギルドを通さずに店を出すと、商業ギルドが手配した輩に嫌がらせをされて店を潰されるという話を聞きましたが本当ですか?」

「そのようなことはありません。商業ギルドと登録している店を襲うと商業ギルドを敵に回すことになりますので、賊は登録していない店を狙うのでしょう。商業ギルドが主導はしていません」
オボロが鳴く。
やっぱり商業ギルドが主導で潰させているんだね。

「安心しました。僕が聞きたいことは以上です。本日はお越しいただきありがとうございました」

「それでは失礼致します」
モスタブさんが応接室から出て行く。

「ルマンダさん、オボロが鳴いた前にモスタブさんが言ったことは全て嘘みたいだよ。これが証拠になるわけではないけど、やっぱり商業ギルドを放置は出来ないね」

「そのようです。何かお考えはありますか?」
放置していただけで、ルマンダさんは知っていたことなので驚きはしない。

「考えていることはあります。それは後ほど相談します。その前にフクロウさんと話をしましょうか?ずっと待たせてしまっています」

「かしこまりました。呼んでまいります」

商業ギルドをこのまま放置は出来ないな。
でも今はフクロウさんだね。
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