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フェレスの研究
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「早速で悪いが一つ頼みがある」
フェレスさんを雇うことに決めて、いきなり頼みがあると言われる。
「なんですか?」
「その纏っているモノを調べさせてほしい。真っ黒なコートのように見えるが、私はそれが衣服ではないのではと思っている。魔法とも違うように感じる。それを解明することでさらに深淵に近づける気がするんだ」
フェレスさんは僕の体に漆黒のコートのような形で纏わりついている邪気を調べたいそうだ。
「フェレスさんの言う通りこれは普通の服ではないです。これが何かというのはお互いが信用出来る間柄になったらにしましょう。それから、これは僕から離れませんので、研究材料にするのは無理です。信頼関係が培われた後、フェレスさんの研究時間で、尚且つ僕の時間が空いているタイミングがあれば付き合います」
「わかった。まずは私がお前さん……いや、これからは雇い主だからな。マオ様のお力になれることを証明させてもらう」
「期待してるね。これが離れの鍵だよ。あと調べて欲しい球には他の色もあるんだ。他の色のも渡しておくね。引っ越しもあると思うから、準備が終わってから調査をお願いします」
僕はフェレスさんに各色一つずつ球を渡す。
青、赤、緑、紫、茶にスキル球の黄を合わせて6色だ。
フェレスさんを雇うことにした翌日には離れが研究室となっており、さらに2日後、フェレスさんからあの球が何かわかったと連絡を受けた。
僕はその連絡を受けて、フェレスさんが思っていた以上に優秀だったと思った。
僕はフェレスさんと離れに行き、説明を受ける。
「6色の球のエネルギーに違いがあることがわかった。まず結果から話すと、緑の球は生命力を、紫の球は魔力を、赤の球は力を、茶の球は守りを、青の球は俊敏さを上昇させることが出来、黄色の球はスキルを使えるようにする」
どうやったかは知らないけど、この短時間でここまで細かく調べることが出来たようだ。
どの色が何かまではわからなかったけど、内容も僕の予想していた通りなので、合っていると思う。
緑がHP、紫がMP、赤がATK、茶がDEF、青がSPDだったんだな。
「マオ様はスキル球について、元々潜在的に使える才能を強制的に開花させて、スキルを発現させているというのはご存知だろうか?」
「聞いたことがあります」
才能がなかったから、あの時にギルドでスキル球が使えなかったということや、収納のスキルを発現させる前から自動的に物が収納されていたということも、これに関係する話だ。
「これらの球も同様に潜在能力を引き出す物だと考えられる。実際には潜在能力ではなく、今後獲得し得る能力かもしれないし、体が耐えられる限界かもしれない。どれだとしても共通して言えるのは、無制限に能力が増す訳ではないということだ」
「わかりました。ありがとうございます。ということは、これを使っても問題はないですか?体が耐えきれなくて破裂するみたいなこともないということですよね?」
フェレスさんの話だと、体の許容量を超えて能力が増すと言うことはなさそうだ。
「問題ない」
フェレスさんは断言した。
「断言しましたけど、何か確証でもあるんですか?」
「実際に私が使ってみた。赤の球を使った時には私の力が増した。ある一定を超えると、繰り返し使おうとしてもそれ以上の変化は見られなくなった。その事から赤の球を使うと力が増す事、それからある一定までしか上昇させられないことがわかった。他の球も同様の理由で結論付けた。そして、球から感じられたエネルギーが減少したことから、潜在的に隠された力を引き出すのに内包されていたエネルギーが使われたと私は推測している」
「…………。」
僕はフェレスさんの言葉を聞いて言葉が出なくなった。
「ちゃんと昨晩に試したいことがあるから、結果的に球が壊れたり無くなったりするかもしれない。それでも構わないか?と聞いただろう?マオ様は問題ないと言ったのだから、私が責められるいわれはない。元に戻せと言われてもやり方がわからないから無理だ」
フェレスさんは僕が声を発しないことを怒っているのだと勘違いしたようだが、僕は呆気に取られていただけだ。
僕はこれらを使うと力が増したり頑丈になったりする可能性が高いだろうとは思っていた。
ただ、実際に使うとどうなるかが分からなくて躊躇していたから、フェレスさんにこれがどういったものなのかを調べてもらうように頼んだ。
僕が躊躇していたものをあっさりと使ったから呆気にとられた。
「そういう理由で言葉を失っていたわけではないです。よくわからないものを躊躇なく使ったことに驚いていたんです。よく使えましたね?」
「私もいきなり使ったわけではない。それぞれのエネルギーに差があるところまではわかった。しかしその後何をすれば解明できるのかの検討もつかなかった。だから使ったのだ。マオ様も使ってみると分かるが、急激に力が増したりするわけではない。少しずつ体に変化を感じて、ある一定から変化がなくなるのだ。私は徐々に使っていき限界を見つけた。だからマオ様が思っている程危ないことはしていない」
「使った瞬間に体の中に莫大なエネルギーが入ってきて死ぬ可能性も考えられましたよね?」
僕が考えつくようなことを思いつきもしていなかったとは考えにくい。
「もちろんその可能性もあった。まあ、そうなったらそうなった時だ。進歩には犠牲がつきものだ。その時は運がなかったと思うしかないな。思うもなにも死んでいるがな。はっはっは!」
フェレスさんは当たり前のことかのように恐ろしい事を言った後、笑えない冗談を言って、自分で笑っていた。
コロネさんがフェレスさんのことを変人だと言っていたけど、その理由がよくわかった。
よく今まで生きてこれたなと思ってしまう。
爆発とか中毒で死んでいてもおかしくなかったのではなかろうか。
「フェレスさんは能力が限界まで上がっているんですよね?」
「ああ、そうだ。試しに私を殴ってみるといい」
僕はお言葉に甘えて少し加減はしてフェレスさんのお腹を殴る。
「っうあ!」
鉄でも殴ったかのような感触だった。
殴った僕は痛がっているが、フェレスさんはなんともなさそうだ。
それからフェレスさんは僕の目でギリギリ追えるレベルで動いた。
「このような感じだ。感覚ではあるが、A級冒険者を凌駕しているのではないかと思っている。もちろんこういった基礎能力だけ高くなっても、A級冒険者の代わりが務まるわけではないがな。それから私の場合は魔力がまだ限界に来ていない。研究が止まる可能性があったから、紫の球のエネルギーが無くなる前に止めているだけだ。マオ様が問題ないのなら、紫の球がなくなるまでエネルギーを使わせてもらえないだろうか?魔力が高まればより強大な魔法を発動させることも可能だと思っている。そうなると魔法の深淵にまた一歩近づけるかもしれない」
この言い方だと、魔力以外は限界まで上げたようだ。
「まだ持っているから使ってしまってもいいよ。それから、僕も使うことにするよ。フェレスさんが問題ないことを身をもって教えてくれたわけだからね」
僕は黄色を除いた5色の球を取り出して、祝福と同じ要領で使っていく。
フェレスさんの言う通り徐々に体が変化していく感覚がある。
一つを一気に上げるのはなんだか怖かったので、順番にゆっくりと少しずつ上げていき、全ての色の球で変化を感じなくなるまで能力を上げ切った。
別人になったかと錯覚するくらいに体が別物のように感じる。
「マオ様、お願いがあります」
僕が自分の体の調子を確認していると、フェレスさんに頼みがあると言われる。
「なんですか?」
「紫の球をまだお持ちでしたら私に譲ってはくれないでしょうか?先程の球は消えてなくなってしまいました。まだ私には伸び代があるようなのです」
元々球に込められていたエネルギーに差があったとは思うけど、フェレスさんは全てを使い切っても限界を迎えなかったようだ。
「……構わないけど、悪いことに力を使わないでね」
「もちろんです。これも全て魔法の研究の為です。それ以外にはマオ様のお力になること以外に使わないとお約束します」
嘘を言っている様子はないし、この数日でフェレスさんが魔法の研究のことしか考えていない人だということはわかった。
「はい。どうぞ」
なので僕はフェレスさんに新しい紫の球を渡した。
「ありがとうございます。これは最初に頂いた球よりも内包されたエネルギーが多いですね。感謝します」
僕は内包されているエネルギーを感じ取ることは出来ないので、実際にどれだけのエネルギーを使ってフェレスさんが魔力を上昇させたのかはわからないけど、最終的にフェレスさんは5個目の紫の球を使ったところで限界を迎えた。
その結果、初めて会った時点で他の人とは既にかけ離れた魔力を持っていたフェレスさんがかわいく思える程の魔力を、今のフェレスさんは扱えるようになった。
フェレスさんを雇うことに決めて、いきなり頼みがあると言われる。
「なんですか?」
「その纏っているモノを調べさせてほしい。真っ黒なコートのように見えるが、私はそれが衣服ではないのではと思っている。魔法とも違うように感じる。それを解明することでさらに深淵に近づける気がするんだ」
フェレスさんは僕の体に漆黒のコートのような形で纏わりついている邪気を調べたいそうだ。
「フェレスさんの言う通りこれは普通の服ではないです。これが何かというのはお互いが信用出来る間柄になったらにしましょう。それから、これは僕から離れませんので、研究材料にするのは無理です。信頼関係が培われた後、フェレスさんの研究時間で、尚且つ僕の時間が空いているタイミングがあれば付き合います」
「わかった。まずは私がお前さん……いや、これからは雇い主だからな。マオ様のお力になれることを証明させてもらう」
「期待してるね。これが離れの鍵だよ。あと調べて欲しい球には他の色もあるんだ。他の色のも渡しておくね。引っ越しもあると思うから、準備が終わってから調査をお願いします」
僕はフェレスさんに各色一つずつ球を渡す。
青、赤、緑、紫、茶にスキル球の黄を合わせて6色だ。
フェレスさんを雇うことにした翌日には離れが研究室となっており、さらに2日後、フェレスさんからあの球が何かわかったと連絡を受けた。
僕はその連絡を受けて、フェレスさんが思っていた以上に優秀だったと思った。
僕はフェレスさんと離れに行き、説明を受ける。
「6色の球のエネルギーに違いがあることがわかった。まず結果から話すと、緑の球は生命力を、紫の球は魔力を、赤の球は力を、茶の球は守りを、青の球は俊敏さを上昇させることが出来、黄色の球はスキルを使えるようにする」
どうやったかは知らないけど、この短時間でここまで細かく調べることが出来たようだ。
どの色が何かまではわからなかったけど、内容も僕の予想していた通りなので、合っていると思う。
緑がHP、紫がMP、赤がATK、茶がDEF、青がSPDだったんだな。
「マオ様はスキル球について、元々潜在的に使える才能を強制的に開花させて、スキルを発現させているというのはご存知だろうか?」
「聞いたことがあります」
才能がなかったから、あの時にギルドでスキル球が使えなかったということや、収納のスキルを発現させる前から自動的に物が収納されていたということも、これに関係する話だ。
「これらの球も同様に潜在能力を引き出す物だと考えられる。実際には潜在能力ではなく、今後獲得し得る能力かもしれないし、体が耐えられる限界かもしれない。どれだとしても共通して言えるのは、無制限に能力が増す訳ではないということだ」
「わかりました。ありがとうございます。ということは、これを使っても問題はないですか?体が耐えきれなくて破裂するみたいなこともないということですよね?」
フェレスさんの話だと、体の許容量を超えて能力が増すと言うことはなさそうだ。
「問題ない」
フェレスさんは断言した。
「断言しましたけど、何か確証でもあるんですか?」
「実際に私が使ってみた。赤の球を使った時には私の力が増した。ある一定を超えると、繰り返し使おうとしてもそれ以上の変化は見られなくなった。その事から赤の球を使うと力が増す事、それからある一定までしか上昇させられないことがわかった。他の球も同様の理由で結論付けた。そして、球から感じられたエネルギーが減少したことから、潜在的に隠された力を引き出すのに内包されていたエネルギーが使われたと私は推測している」
「…………。」
僕はフェレスさんの言葉を聞いて言葉が出なくなった。
「ちゃんと昨晩に試したいことがあるから、結果的に球が壊れたり無くなったりするかもしれない。それでも構わないか?と聞いただろう?マオ様は問題ないと言ったのだから、私が責められるいわれはない。元に戻せと言われてもやり方がわからないから無理だ」
フェレスさんは僕が声を発しないことを怒っているのだと勘違いしたようだが、僕は呆気に取られていただけだ。
僕はこれらを使うと力が増したり頑丈になったりする可能性が高いだろうとは思っていた。
ただ、実際に使うとどうなるかが分からなくて躊躇していたから、フェレスさんにこれがどういったものなのかを調べてもらうように頼んだ。
僕が躊躇していたものをあっさりと使ったから呆気にとられた。
「そういう理由で言葉を失っていたわけではないです。よくわからないものを躊躇なく使ったことに驚いていたんです。よく使えましたね?」
「私もいきなり使ったわけではない。それぞれのエネルギーに差があるところまではわかった。しかしその後何をすれば解明できるのかの検討もつかなかった。だから使ったのだ。マオ様も使ってみると分かるが、急激に力が増したりするわけではない。少しずつ体に変化を感じて、ある一定から変化がなくなるのだ。私は徐々に使っていき限界を見つけた。だからマオ様が思っている程危ないことはしていない」
「使った瞬間に体の中に莫大なエネルギーが入ってきて死ぬ可能性も考えられましたよね?」
僕が考えつくようなことを思いつきもしていなかったとは考えにくい。
「もちろんその可能性もあった。まあ、そうなったらそうなった時だ。進歩には犠牲がつきものだ。その時は運がなかったと思うしかないな。思うもなにも死んでいるがな。はっはっは!」
フェレスさんは当たり前のことかのように恐ろしい事を言った後、笑えない冗談を言って、自分で笑っていた。
コロネさんがフェレスさんのことを変人だと言っていたけど、その理由がよくわかった。
よく今まで生きてこれたなと思ってしまう。
爆発とか中毒で死んでいてもおかしくなかったのではなかろうか。
「フェレスさんは能力が限界まで上がっているんですよね?」
「ああ、そうだ。試しに私を殴ってみるといい」
僕はお言葉に甘えて少し加減はしてフェレスさんのお腹を殴る。
「っうあ!」
鉄でも殴ったかのような感触だった。
殴った僕は痛がっているが、フェレスさんはなんともなさそうだ。
それからフェレスさんは僕の目でギリギリ追えるレベルで動いた。
「このような感じだ。感覚ではあるが、A級冒険者を凌駕しているのではないかと思っている。もちろんこういった基礎能力だけ高くなっても、A級冒険者の代わりが務まるわけではないがな。それから私の場合は魔力がまだ限界に来ていない。研究が止まる可能性があったから、紫の球のエネルギーが無くなる前に止めているだけだ。マオ様が問題ないのなら、紫の球がなくなるまでエネルギーを使わせてもらえないだろうか?魔力が高まればより強大な魔法を発動させることも可能だと思っている。そうなると魔法の深淵にまた一歩近づけるかもしれない」
この言い方だと、魔力以外は限界まで上げたようだ。
「まだ持っているから使ってしまってもいいよ。それから、僕も使うことにするよ。フェレスさんが問題ないことを身をもって教えてくれたわけだからね」
僕は黄色を除いた5色の球を取り出して、祝福と同じ要領で使っていく。
フェレスさんの言う通り徐々に体が変化していく感覚がある。
一つを一気に上げるのはなんだか怖かったので、順番にゆっくりと少しずつ上げていき、全ての色の球で変化を感じなくなるまで能力を上げ切った。
別人になったかと錯覚するくらいに体が別物のように感じる。
「マオ様、お願いがあります」
僕が自分の体の調子を確認していると、フェレスさんに頼みがあると言われる。
「なんですか?」
「紫の球をまだお持ちでしたら私に譲ってはくれないでしょうか?先程の球は消えてなくなってしまいました。まだ私には伸び代があるようなのです」
元々球に込められていたエネルギーに差があったとは思うけど、フェレスさんは全てを使い切っても限界を迎えなかったようだ。
「……構わないけど、悪いことに力を使わないでね」
「もちろんです。これも全て魔法の研究の為です。それ以外にはマオ様のお力になること以外に使わないとお約束します」
嘘を言っている様子はないし、この数日でフェレスさんが魔法の研究のことしか考えていない人だということはわかった。
「はい。どうぞ」
なので僕はフェレスさんに新しい紫の球を渡した。
「ありがとうございます。これは最初に頂いた球よりも内包されたエネルギーが多いですね。感謝します」
僕は内包されているエネルギーを感じ取ることは出来ないので、実際にどれだけのエネルギーを使ってフェレスさんが魔力を上昇させたのかはわからないけど、最終的にフェレスさんは5個目の紫の球を使ったところで限界を迎えた。
その結果、初めて会った時点で他の人とは既にかけ離れた魔力を持っていたフェレスさんがかわいく思える程の魔力を、今のフェレスさんは扱えるようになった。
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