上 下
6 / 75

告白する

しおりを挟む
「ギルマス、慌てた様子でしたけどどうかしたんですか?」
隣の受付のお姉さんがギルマスに聞く。

「なんでもない」
ギルマスが答えるけど、なんでもない人の様子ではなかった。

「次はシンクだよ」
僕は気にせずに登録の為に魔道具を触ってもらう作業を再開する。

「わかったワン」

シンクが魔道具に触れる。

バンッ!

ギルマスが急に机を叩いた。

「だ、大丈夫ですか?」
隣のお姉さんが聞く。

「大丈夫だ。なんでもない」
明らかに大丈夫では無さそうだけど……。
シンクもランクの高い種族だったんだろうなぁと勝手に予想する。

「つ、続けてもいいですか?」
僕は確認する。

「ああ、全部見せてくれ」

「わかりました……。オボロの番だよ」

「妾の番じゃな」
オボロが魔道具に触る。

ギルマスは顔をピクピクとさせている。
オボロも普通じゃない種族のようだ。

「シロ、おいで」

シロが魔道具の上に乗る。

ギルマスは何かを諦めたような顔をしている。

ここまでくると流石にヤバいことになってると僕でもわかる。

「最後はクロの番だよ」

クロが魔道具の上に乗る。

「ひ、ひぃぃぃぃ」

ギルマスが悲鳴を上げながら腰を抜かす。

「ギルマス!ギルマス、大丈夫ですか?誰か手伝って」

ギルマスがお姉さん達に運ばれていってしまった。

「君!何したの?」
隣の受付にいたお姉さんが僕の前に立って詰め寄ってくる。

「ギルマスに言われた通りに仲間を魔道具に触らせただけです。僕はどうしたらいいですか?」

「……とりあえず、ギルマスが落ち着くまで待っててくれる?」

「わかりました」
僕は応接室のような所に通される。

「取り乱してすまなかった。詳しく話を聞かせてもらえるか?」
しばらくしてギルマスが入ってきた。

「詳しい話もなにも、ギルマスが取り乱した理由が僕にはわかりません」

「……あの魔物達の種族はわかっているのか?」
やっぱりみんな魔物だったようだ。

「シンクがフレアウルフでオボロがアサシン・フォックス、シロがホーリー・クリアスライムでクロがカース・ダークスライムですよ。みんな可愛いですよね?」

「可愛いかどうかは置いておいて、それらのランクは知ってるか?」

「知らないです」

「はぁ。いいかよく聞けよ。そこのウルフとフォックスはBランクだ。白いスライムがAランク、黒いスライムがSランクだ」
クロのランクが1番高いのはなんとなく予想がついた。

「みんなスゴイね」
僕は素直な感想を漏らす。

「もっと褒めて欲しいワン」
「当然じゃ」

「そんな呑気に言わないでくれ。何をしたらこうも高ランクの魔物ばかりをテイム出来るんだ?」

「人攫いに逢いまして、逃げ出す時にこの子達も捕まっていたので助けました」
セブンソードの人達に話した嘘をギルマスにも話す。

「……こんな高ランクの魔物ばかりを攫える賊がどこにいる!?いたとして、なんでそんな連中が坊主みたいなガキを攫う!」
ギルマスは信じてくれなかった。

「すみません。嘘を言いました」
流石に嘘を突き通すのは無理そうだったので、早めに認めることにした。

「嘘をついていたのはまあいい。それで実際はどこでこの魔物達をテイムしたんだ?」

「樹海で……」

「今なんて言った?」

「この街から少し行った所にある樹海で仲間にしました」

「いやいやいや、深淵の樹海に入って生きて出られるはずがないだろ?それにどうやったらあそこの魔物をテイム出来るっていうんだよ」 
深淵の樹海ってところだったんだ……

「盗むってスキルが成功すると、どれを盗むか選択肢が出ますよね?」

「いや、そんな話は聞いたことがないな」
あれ……?

「3つ選択肢が出るんです。それで心を盗むとテイムしたことになって僕に懐くんです。それでクロが初めに仲間になって、樹海にいる生き物はみんなクロを見ると逃げていったのでまだ生きています。クロを見て逃げなかったのは闇のように黒いドラゴンだけでした」
僕はギルマスを無視して話を進める。

「もしかしてカタストロフィ・ドラゴンか?」

「わかりません。何か絵でもあればわかるかもしれません」
種族なんて見てもわからない。

「伝説とされる魔物だから目撃された例はない。言い伝えがあるたけだ。そもそも見たとしても生きて帰れない。坊主が生きている時点でカタストロフィ・ドラゴンではないのだろう」

「そのドラゴンのことは置いておいて、僕がこの子達を仲間にしたのはそんな感じです」

「簡単には信じられないが、信じるとして一つ疑問がある。なんで樹海に入った?樹海といっても奥に行かなければここまでの魔物は現れないだろ?」

「実は天職が盗賊だという理由で王国で追放されたんです。転移陣に無理矢理乗せられて、気づいたら樹海の中にいました」

「……もしかして最近王国が禁忌を犯したと聞いたが、坊主は異世界の勇者か?」
異世界人であることは隠さないといけないと思っていたけど、噂は既に他の国にまで広がっているようだ。

「……はい。そうです。――――――ということがありました」
僕はこの世界に来てすぐのことを説明する。

「あの国は本当に碌な事をしないな。事情はわかった。魔物のランクのこととか色々と不自然なくらい無知な理由もな。多分盗むというスキルも俺の知っている盗むというスキルとは仕様が違うのだろう。あの国には坊主みたいなのがうじゃうじゃいるわけか……」

「僕の盗むはレベル3ですけど、友達は火魔法のレベルが6だって言ってました」

「そのスキルも俺の知ってる火魔法の同レベルとかけ離れているのだろう。嫌になるな」

「それで僕は冒険者になれるんですか?」
稼いで食べないといけないので、今大事なのは登録をしてくれるかだ。
話を聞く限り、僕は面倒事の種のようだし……

「それはもちろんだ。魔物達にはこれを付けといてくれ。ギルドで登録済みの証だ」
ギルマスから模様の付いた赤色のスカーフを貰う。

「みんな並んで」
僕は順番に首にスカーフを結ぶ。

「似合ってるかにゃ?」
「似合ってるよ」

「ご主人様との絆だワン」
「信頼してるよ」

「妾には派手すぎじゃなかろうか?」
「そんなことないよ。かわいいよ」

「坊主、やっぱりそいつらと喋ってないか?」
ギルマスにまた突っ込まれる。
ほとんど話してしまったし、これも教えてもいいか。

「実は話が出来ます。クロとシロとは出来ませんけど……」

「俺はもうそんなことでは驚かないからな!」

「別に驚かそうとはしてませんよ。クロとシロは乗せてるだけですけどこれでいいですか?」
プルンとした丸っこいボディにスカーフを巻いてはみたけど、すぐに落ちてしまいそうだ。

「それは仕方ない。出来るだけ離れないようにしてくれ」

「わかりました。早速依頼を受けたいです。依頼書を持ってこればいいんですよね?」

「ああ、そうだ。ここで聞いたことは俺の心の内に仕舞っておくからくれぐれもやり過ぎるなよ」

「……わかりました」
ギルマスは色々と黙っていてくれるそうなので、迷惑が掛からないようにしないといけないな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

【創造魔法】を覚えて、万能で最強になりました。 クラスから追放した奴らは、そこらへんの草でも食ってろ!

久乃川あずき(桑野和明)
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ『面白スキル賞』受賞しました。 2022年9月20日より、コミカライズ連載開始です(アルファポリスのサイトで読めます) 単行本は現在2巻まで出ています。 高校二年の水沢優樹は、不思議な地震に巻き込まれ、クラスメイト三十五人といっしょに異世界に転移してしまう。 三ヶ月後、ケガをした優樹は、クラスメイトから役立たずと言われて追放される。 絶望的な状況だったが、ふとしたきっかけで、【創造魔法】が使えるようになる。 【創造魔法】は素材さえあれば、どんなものでも作ることができる究極の魔法で、優樹は幼馴染みの由那と快適な暮らしを始める。 一方、優樹を追放したクラスメイトたちは、木の実や野草を食べて、ぎりぎりの生活をしていた。優樹が元の世界の食べ物を魔法で作れることを知り、追放を撤回しようとするが、その判断は遅かった。 優樹は自分を追放したクラスメイトたちを助ける気などなくなっていた。 あいつらは、そこらへんの草でも食ってればいいんだ。 異世界で活躍する優樹と悲惨な展開になるクラスメイトたちの物語です。

異世界に転生したので裏社会から支配する

Jaja
ファンタジー
 スラムの路地で、ひもじい思いをしていた一人の少年。  「あれぇ? 俺、転生してるじゃん」  殴られた衝撃で前世の記憶を思い出した少年。  異世界転生だと浮かれていたが、現在の状況は良くなかった。  「王道に従って冒険者からの立身出世を目指すか…。それとも…」  そして何を思ったか、少年は裏社会から異世界でのし上がって行く事を決意する。  「マフィアとかギャングのボスってカッコいいよね!」  これは異世界に転生した少年が唯一無二の能力を授かり、仲間と共に裏社会から異世界を支配していくお話。  ※この作品はカクヨム様にも更新しています。

人間不信の異世界転移者

遊暮
ファンタジー
「俺には……友情も愛情も信じられないんだよ」  両親を殺害した少年は翌日、クラスメイト達と共に異世界へ召喚される。 一人抜け出した少年は、どこか壊れた少女達を仲間に加えながら世界を巡っていく。 異世界で一人の狂人は何を求め、何を成すのか。 それはたとえ、神であろうと分からない―― *感想、アドバイス等大歓迎! *12/26 プロローグを改稿しました 基本一人称 文字数一話あたり約2000~5000文字 ステータス、スキル制 現在は不定期更新です

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...