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国盗り編

宰相を任命する

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「ここに残っている皆さんには、国の体制が変わったこれからも貴族として国の為に働いていただきます。但し、爵位に関してはこちらで勝手に決めさせてもらいます。しかしながら、この爵位に関しては先程皆さんに質問した答えを元に仮に決めましたので、これから1年間の働きも加味して最終的に決定とします。何か意見のある方はいらっしゃいますか?」

「ご発言お許しください。爵位を急に変更されますと、資金面で領地を治めるのに無理が出てくる場合があると思われます」
ブライアさんが言った。
この人は先程も誓約書をどのように使うつもりなのか聞いた人である。

「以前の体制を知らないので、詳しくお願いします」

「爵位によって国に納める税が異なっております。全く同じ領地を治めた場合、例えば男爵は伯爵の倍近い税を国に納める必要がありました。爵位が上がった者は問題無いでしょうが、爵位が下がった者では領民から得る税だけでは足りなくなり、私財を出すことになるでしょう。私財を使わなかったり、そもそも蓄えがない場合には足りない分を領民から追加で徴収するしかありません。そうなると領民に飢えるものが出てきます。これは陛下の願うところでは無いのではと愚考します」
確かにそれは僕の願うところではない。

「では、これから1年間は国に納める税は各自に任せます。当然多い程評価しますが、納めなかったからといって罰を与えることはしませんし、理由がはっきりとしていれば悪い評価にもしません。それから先に言っておきます。評価されようと税を多く納めても、その結果領民が苦しむのであれば全く評価に値しません。むしろマイナス評価です。領民が問題なく生活出来る範囲で税を徴収した上で、国に納める税を各自決めてください。また、領地を運営するには、領民が苦しまなければいけないほど税を徴収しないといけない場合、国から援助金を出します。援助金を出させたからと言って悪い評価にはしませんので、遠慮なく言ってください」
宝物庫に貴金属類などお宝がいっぱいあったので、当分の資金には困らないはずだ。

「ご配慮感謝致します。もう一点ご聞かせ願います。ここから連れていかれた者が治めていた領地はどのようにお考えでしょうか?」

「平民だった者から領主を選定します。あなた達にはこれから各自の領地に戻って頂くわけですが、分担して自分の領地以外にもお触令を出してもらいます。お触令を出す際に自分の領地でなくても困っている人が入れば援助してください。必要な資金や物資に関しては、国の方で支払いますので、後日で構わないので教えてください。自分の治める領地でないから関係ないとはならないようにして下さい。領民でなくても、同じ国で生活する人達です」

僕はお触令の内容を説明する。
それからここに来ていない貴族に関しても城に速やかに来るように伝えるようにさせる。

「ブライアさんは城に残って下さい。ブライアさんには以前の王政のことを他にも教えてもらいます。また、これからの王政の敷き方について意見をもらい、他の貴族の方をまとめてもらいたいと思っています」

「……私に宰相の代わりををやれと申されておりますか?」

「はい。ただ、先程も言いましたが1年間は仮です。相応しくないと判断した場合や他により適している人が見つかれば代わってもらうことになります」

「それはいけません。私は子爵です。伯爵様や侯爵様がいる中で私が宰相の座についてはいけません」

「ここには伯爵も侯爵もいません。現状で決まっているのは王である僕だけです。以前の爵位など関係ありません。一刻も早く国を正常な姿にする為には、以前の国のことを知っている者の中から適している人を選ぶのが良いと考えています。荷が重いのはわかりますが、今この場にいる中であなたが1番適任だと僕は思います。必要に応じて人を雇ってもらっても構いません」

「……わかりました。お受けいたします」

「ブライアさんに早速仕事を任せますが、これに皆さんの爵位が書いてあります。ここでも構いませんし、他に適した部屋があるならそこででも構いません。各自の爵位を確認してもらい、どのルートで帰還してもらうか決めて下さい。準備が出来た方から行動に移してもらって下さい。他の皆さんはブライアさんの指示に従うようにして下さい。ここに残っている方はあの国の中でも人の心を捨てなかった方達だと思います。期待しています」

少しした後、ブライアさんの指示で皆、王の間から退出していく。

「ふぅ。なんとかなったのかな?」
僕は体の力を抜く。

「これでよかったのか?」
篠塚くんが聞いてくる

「王になったことなんてないから、合ってるのかなんてわからないよ。とりあえず膿を出すことは出来たんじゃないかな?思ったよりは残った方だとは思ってはいるけど……。僕に領地の運営なんて出来ないし、国を良くしよう!豊かにしよう!って考えの平民が見つかっても、いきなり領地の運営なんて出来ないから、経験のある人達にある程度やらせるしかない。そう思うとやっぱり少ないね」
まともな人なんて残っていないかもと思ってもいた。

「ブライアという人で大丈夫なのか?」

「僕の見る目が確かなら上手くやってくれると思うけど……。僕に見る目があるかどうかは怪しいからね」

「影宮くんは今後この国をどうしたいの?影宮くんが王になったって言った時から、ずっと引っ掛かってたんだけど、ずっと王であり続ける気があるの?」
委員長に言われる

「良い国にしたいよ。もっと心にゆとりのある人たちが暮らす国にしたい。それから僕はこの世界を良くしたいのであって王になりたいわけではないんだ。だから代わりにもっと国をよくしてくれる人がいるなら任せてもいいと思っているよ。だから委員長が女王になりたいなら言ってね」

「遠慮しておくわ」
僕よりは委員長の方が人の上に立つことに向いているだろうから残念だ。

「とりあえず集まっていた貴族の方達にはやる事を与えたわけだけど、影宮くんはこの後どうするの?帝国との戦もあるわよね?それからみんなのことも……」
桜先生に聞かれるけど、みんなのことはまだ決めかねている。

「当分は経過観察かな。騎士団もふるいにかけた後、ここにいなかった貴族を城に集めさせるつもりだから、結果が目に見えて集まってくるまで結構時間は掛かるかもしれない。帝国の方はフィルをリーダーにして動いてもらっているから問題はないと思う。今のところは順調だって聞いているよ。それからクラスのみんなについては細かいことはまだ決めてないよ。牢屋に入れている人達をいつまでも特別扱いするわけにもいかないとはわかってはいるんだけどね……。それから城にいた人達も働きもせずに引き籠らせ続けるわけにはいかないと思っているよ。援助はするとしても、ちゃんと自立させないといけないとは思ってる。働いてもらわないといけないと思ってはいるけど、何をやってもらえばいいのかわからないんだ」
準備不足のまま王になったのは自分でも分かっている。
覚悟も足りていなかったと思う。

でもやらないといけないとは思っているし、なったことに後悔はしていない。
王の座を誰かと代わってもいいと思っているのは本当だけど、誰でもいいと思っているわけではない。
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