上 下
91 / 147
奔走編

逃亡者、女王の秘密を聞く

しおりを挟む
僕はエミルを死んだことになっていたことについて1つ心当たりがあった。

犯人の心当たりではなく、死んだことにした方法をだ。

昔に僕もやったことなので、同じことをしたのであれば女王様がエミルが死んだと思い込んでいてもおかしくはない。

もしかしたら他の方法だったのかもしれないけど。

僕が知っているスキルで同じ事が出来るのは、偽装と変装だ。
僕はミハイル様に念話で変装のスキルで出来る事を確認する。
その結果、変装では無理に近い事がわかった。

変装は使用者が思い浮かべた姿に変えるスキルらしい。
偽装のスキルとはスキルの本質が違う。偽装スキルは使用者が思い浮かべた姿に認識させるスキルだ。

結果は同じと思うかもしれないが、実は違う。
例えエミル本人を見ながら、別の何かに変装を施してエミルもどきを作ったとしても何かしらのズレで母親にはエミル本人でない事がバレるだろう。
例えばスキル使用者がホクロを見落とせば、ホクロは再現されないのだ。そう言った細かい認識のズレはエミルをよく知る母親なら無視できない程の違和感となるだろう。

偽装の場合は主観が使用者からそれを見る人へと変わる為、自分の記憶のエミルと同じに見えるのだ。例え使用者がホクロを見落としていようが、そもそもエミルの事をよく知らなくても、これはエミルだと偽装を掛ければエミルを知っている人にはエミル本人に見えてしまうのだ。

ちなみにエミルを知らない人が偽装で作ったエミルを見るとどうなるのか。それはその人が勝手に想像するエミルに見えるのだ。
でも見た人は本当のエミルを知らないので違和感は感じない。
そして、本当のエミルを知った後に、偽装したエミルを見た記憶を思い出そうとすると、エミルを見たという記憶だけが思い出される。

まあ、偽装にも欠点はあるので変装より優れているかというとそうでもないんだけどね。

でもこの推測には1つ大きな問題がある。長老の存在である。
僕は長老に確認する

「犯人ではないんですが、エミルフル様を死んだ事にした方法には心当たりがあります。長老は里のエルフの全員に鑑定は使った事がありますか?」
長老のステータスは見かけたエルフに比べて大分高い。

ステータスを偽装していたとしても、ある程度ステータスが高くないと長老の鑑定をごまかす事は出来ないだろう

「全員一度は観た気がするが、最近は観てないな」

「ちなみにエミルフル様の遺体には鑑定しましたか?」

「いや、していない。今となっては後悔しておるが、疑っておらんかったでな」

「そうですか、里のエルフの誰かのスキルで死体に見せかけたなら鑑定で里の全員をもう一度見れば犯人がわかるのではないかと思います」

「それがいいかの。エミルフル様が生きていた以上、何者かが画策したのは間違い無いからな。女王様、全員を集めてもらえますか?」

「集めたらこの里が良くなるのかしら?」
僕は女王様の言葉に驚く

立場的なこともあるのだろうが、犯人を見つけることよりも里のことを優先した

「僕にはわかりません」
僕は答えることが出来ない。それは1つ懸念があったからだ。

「思うところがあるのでしょう。私のことは気にせずに言ってはもらえませんか?」
僕は表情を隠すのが苦手のようだ

「僕はエルフのことをよく知らないので憶測というか、可能性の話ですが犯人が1人ではなくて複数いるのかもしれません。複数というのが何人いるかはわかりません。女王様は里の中では異端者のようですし……」
女王様の言う事を信じるならば、エルフは基本帝国で聞いた通りなのだろう。異端なのが女王様なので最悪の場合、里のほとんどが共犯かもしれない。

「あなたもそう思いますか?」

「あなたもということは女王様もそう思ってるんですね?」

「はい。私は今回の話を聞いて確信しました。この里のエルフ達の大多数は私の思想には共感したくないのだと。皆がエミルの件に関わったとは思いたくはありませんが」

「……女王様は真実を知るのが怖いんですか?」
僕は思ったことを口にする

「そうかもしれません。皆は私が女王だから言う事を聞いているだけだということを信じたくないだけですね」

「女王様はなんで他の種族と交流していきたいんですか?」
僕はそれが気になった。なんで女王様は他のエルフと思想が違うのだろう

「実は他の種族と交流をしたいわけではないのです」

「……え?」
僕はまた驚く。さっき交流をしていくべきって自分で言ってたよね

「本当は外の世界を見てみたいだけなのです。しかし女王は里の外には出る事が出来ないので、他の種族の方々と交流して外の世界に行った気になりたいだけなのです」
なんか聞いてはいけない事を知ってしまった気がする。

「なんで外に出れないんですか?」

「エルフの里の結界の核は女王なのです。私がここを離れると結界は消えてしまいます」

「女王はどうやって決まるんですか?先代がいるって事はずっとあなたってわけではないですよね?」

「女王が死んだ時に、エルフの中から女王が選ばれます。誰が選ばれるのかはわかりません。何か基準があるのか、それとも適当に決められているのか……」
僕は1つ試してみたいことを思いついた。
でもそれをする前にやっぱり問題はスッキリした方がいいと僕は思う。
スッキリした方がいいというか、そこをスッキリしてくれないと試す事が出来ない

「女王様の願望を僕は叶える事が出来るかもしれません。可能性の話ですが……。でもそれを試す前に今回のエミルフル様の件にケリをつけてもらう必要があります」
僕の推測が正しければ、このエルフを死なせずに女王を他の人に移す事が出来るはずだ。
ただ、それを今した場合にエミルの誘拐の件が都合よく利用される可能性がある。それは困る

「それは本当か?」

「可能性の話ですが、僕は出来ると思ってます。女王をやめてでも外の世界に行きたいんですよね?」

「行けるなら行きたい。元々私は女王になんてなりたくなかった」

「あなたが女王をやめた後に女王になったエルフが、人に害を成す可能性があることだけが僕の気がかりです。そうならない為にも皆を集めて犯人を探しましょう」

「わかりました。里の広場に全員を集めます」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【創造魔法】を覚えて、万能で最強になりました。 クラスから追放した奴らは、そこらへんの草でも食ってろ!

久乃川あずき(桑野和明)
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ『面白スキル賞』受賞しました。 2022年9月20日より、コミカライズ連載開始です(アルファポリスのサイトで読めます) 単行本は現在2巻まで出ています。 高校二年の水沢優樹は、不思議な地震に巻き込まれ、クラスメイト三十五人といっしょに異世界に転移してしまう。 三ヶ月後、ケガをした優樹は、クラスメイトから役立たずと言われて追放される。 絶望的な状況だったが、ふとしたきっかけで、【創造魔法】が使えるようになる。 【創造魔法】は素材さえあれば、どんなものでも作ることができる究極の魔法で、優樹は幼馴染みの由那と快適な暮らしを始める。 一方、優樹を追放したクラスメイトたちは、木の実や野草を食べて、ぎりぎりの生活をしていた。優樹が元の世界の食べ物を魔法で作れることを知り、追放を撤回しようとするが、その判断は遅かった。 優樹は自分を追放したクラスメイトたちを助ける気などなくなっていた。 あいつらは、そこらへんの草でも食ってればいいんだ。 異世界で活躍する優樹と悲惨な展開になるクラスメイトたちの物語です。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。 その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。 

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

処理中です...