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奔走編

逃亡者、エルフの情報を得る

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篠塚くんと別れてから数日、帝都に到着した。

とりあえず、前と同じ宿を借りて一呼吸おく

「やっぱり長旅は疲れるね」

「そうだね。それでこれからどうするの?結局、魔王城への情報は得られなかったよ?」
ミアに言われた通り、今回の旅で収穫は色々とあったけど、当初の目的は果たせていない。

「とりあえず皇帝に戻った報告をして、冒険者ギルドに顔を出そうかな。なにか情報が来ているかもしれないし。……あとは、まあアレは引き続きやろうかな」

「アレってお兄ちゃんがコソコソとやってるやつ?」

「コソコソって、確かにバレないようにスキル使って隠れてはいるけど、悪い事はしてないよ。いや、悪いことはしてるかな……」
悪意も害意もないけど、やってる事は犯罪だもんなぁ

「しょうがないとは思うけど、程々にね。」

「うん。多分これ以上はあまり意味ないと思うし、どこかでやめるよ。とりあえず皇帝の所に行ってくるから休んでまってて」

「うん」

僕は皇帝の所に行き、戻ってきた事を伝えて王国との交渉について尋ねる

「それで、王国との交渉はどうなりましたか?」

「大分、怪しまれたが、最終的には概ね狙い通りに進んだわ。向こうは色々と有利になる条件を出して、我が泣く泣くその条件を飲んだと思い込んでいるようだが、大体は予定通り進んでおる。そなたが我を裏切らんことには負けは無かろう」

「皇帝様が僕を害さない限りは敵対しませんよ」

「わかっておるわ。どうしても譲れんことがある時でも、そなたには一言相談することにするつもりだ」

「それで、開戦はいつになりますか?」

「それなんだが、我はすぐにでもやりたかったが向こうが時間を要求してきた。急いで変に思われてもマズイからこれに関しては向こうの要求通りになってしまったわ。5ヶ月後だ」

「結構、先ですね」

「ああ、元々は1年後を要求してきていたから、これでも短縮したほうだ」
そう思うと、皇帝はうまくやってくれたようだ。

その後、細かい話を聞いたが皇帝の言っていた通り概ね狙い通りだった。
これなら、無駄な命を散らす事も無さそうだ。

「ありがとうございます、また何か変わりましたら教えて下さい」

「そうさせてもらう。……お主は最近冒険者ギルドには顔を出しておるか?」

「この後に行く予定ですよ」

「そうか、ならいい」
なんだったんだろうか?

僕は城を出て、宿屋に戻る

「王国の方は大分狙い通りになってたよ。始まるのは5ヶ月後だって」
僕はミアに王国の件を話す

「結構先だね」

「元々は1年先だったらしいから、そう思えば諦めがつくかな。絶対譲れないところは抑えてくれてるし問題ないよ」

「うん、そうだね」

「一旦切り替えて、これから冒険者ギルドに行くけどミアはどうする?」

「私も行くよ。帰りにご飯どこかで食べよ」

「そうしようか」

僕達は冒険者ギルドに向かう

「ハイト様、お待ちしておりました。どうぞ奥の部屋へ」
ギルドに入ってすぐに、ギルドの男性に奥の部屋に行くように言われる。

面倒事の予感しかしない

『逃げようか?』
僕はミアに念話で聞いてみる

『うん、いいと思う』
ミアも賛成のようなので、僕達は男性の言うことが聞こえてなかったかのようにギルドを出ようとする

「ハイト様、お願いします。とりあえず話だけでも聞いてください。ハイト様の依頼にも関係のある事ですので……」
男性は逃すまいとするけど、権力的にも肉体的にも止める事は出来ないので下手に出てお願いするしか無いようだ。
切羽詰まった表情をしている

「…………。」

「お願いします、どうか話だけでも聞いてください」
男性が僕に縋り付いてお願いしてくる。

ギルドにいる人は皆こちらを見ている。
僕が悪者のようだ……

「……とりあえず、話だけですよ」

「はぁ」
ミアはそんな僕をみて溜息を吐いた。

『しょうがないじゃん、僕はあんな空気には耐えられないよ』
僕は念話でミアに抗議する
『いいよ、それがお兄ちゃんのいい所だよ』
これは褒められているのだろうか……?

「ありがとうございます。……ありがとう」
男性は重圧から解放されたようだ。

僕達は奥の部屋に行き、少しするとギルドマスターが入ってきた。

「待っていたよ、ハイトくん。誰か、ハイトくん達にお茶を」
ギルドマスターは大分焦っているようだ。
それほどまでの大事なのだろうか?

「少し落ち着いてください」

「俺は冷静だ」
ギルドマスターはそんな事を言う

「冷静な人は、テーブルにお茶請けまであるのに、お茶を出すようには言いませんよ」
僕達の目の前にはお茶とお茶請けが置いてある。
部屋に入ってすぐに女性の方が用意してくれたからだ。

「……すまない」

「それで、そんなに慌ててどうしたんですか?一応、僕の依頼にも関係していると聞きましたけど……」

「ハイトくんはエルフを探していただろう?」

「はい」

「エルフが今、帝国領にいるんだ」
良いことにしか聞こえないけど、何か問題があるのだろうか?

「それで何が問題なんですか?」

「そのエルフなんだがまだ子供でな、4歳くらいだろうか……。盗賊が誘拐したところを保護したのだ」

……厄介ごとの匂いしかしない事を言い出したよ

「送り届ければいいのでは?」

「保護するのが遅すぎたのだよ。かなり衰弱してしまっていて、身体もだが心が病んでしまっている。送り届けた所で、それで終わりにはならないだろう。対応を誤れば戦争になりかねない」

「…………。それで僕達にどうしろと?エルフに会いたいとは言いましたけど、戦争に巻き込んでくれとは言ってませんよ」

「ハイトくんの方でエルフの里に送り届けてもらえないだろうか?」

この人はなんて事を言い出すのだろうか……。僕には荷が重すぎる。

「いやいやいや、勘弁してください。僕には荷が重すぎます。」

「だが、うまくいけばエルフの女王と話が出来るぞ」

「僕は良い関係で話がしたいんですよ!」

「そうか、ハイトくんならそれで戦争になったとしても被害を最小限に抑えてくれると思ったんだが残念だ」

「何を期待しているかわかりませんけど、今回の話を聞く限りだと、戦争になったら僕はエルフ側に付きますよ。帝国の人を殺して回るつもりはありませんけど」

「だろうな。それでも頼む。皇帝からはハイトくんで無理ならば我の首を差し出して許しを乞うと言われている。送り届けに行ったものは攻撃される可能性が高いが、ハイトくんなら少なくとも自衛は出来るだろ?」
その言い方はズルいと思う。

「ちなみにエルフの子は今どこにいるんですか?」

「ミハイル様の屋敷だ。君もよく知っているのだろう?盗賊が王国に売り飛ばしに行く所を捕まえたのだ。このままだと送り届けるのはミハイル様になるかもな」

こうなるのをわかっていてミハイル様の屋敷に保護しているのではなかろうか?

「はぁ、わかりましたよ。悪い話だけでは無いですし行ってきますよ」

「本当か!ありがとう、助かるよ」
ギルドマスターに手を握られてブンブンと振られる

『いいの?』
ミアに念話で聞かれる

『ここまで聞いちゃったら、無視して帰っても落ち着かないしね。ミアはどっちでもいいよ。一緒に来てくれると嬉しいけど……』

『私も付き合うよ』

『ありがとう』

こうして僕はエルフの子供に会いに行く事になってしまった

はぁ、憂鬱だ
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