上 下
83 / 147
奔走編

逃亡者、密かに近寄る

しおりを挟む
また10日掛けて帝都に帰る。

また暇な時間が続くと思っていたけど、途中立ち寄った村で思いがけない人を見つけた

僕のことには気づいてないし、隠れてるみたいだから声を掛けるかどうか迷う

「お兄ちゃん、どうしたの?」

「知り合いを見つけたんだけど、なぜか隠れてるみたいだし声を掛けようか迷ってたんだよ」

「どの人?」

「あそこの木の側にいる人」

「わかんない、木の近くに人なんていないよ?」

「木の右側だよ。黒いフード被ってる男の人」

「……そんな人いないよ?」
僕にだけ見えるようだ。まさか幽霊?
…………そっか、スキルだ。
僕は鑑定をして気づく

だとしても、ミアから見つからないのはすごいな。
僕からははっきり見えるのに……

僕が同じスキル使ってる時も周りからは同じように見えているのだろうか?であれば隠れる必要もないな

「隠密のスキル使ってるんだと思う。ミアもスキル使えば見えると思うよ」

「いいの?こんなことで使って」

「いいよ。どうせ少ししたら回復するから」

「うん、じゃあ使うね」
僕の体から魔力が持ってかれる

「本当だ、全然気づかなかった」

「ミア、そろそろいいかな?」
ミアが感心している間もどんどんと僕の魔力は持っていかれる

「あ、ごめん。解除したよ」

「ありがとう。で、どう思う?話しかけてもいいと思う?そもそも覚えてる?」

「覚えてない。話しかけたらまずそうな空気はあるけど、隠密のスキル使ってるんだよね?だったら話しかけてもいいんじゃない?お兄ちゃんも隠密使えば周りには何も見えないよ」

やっぱりミアは覚えていないようだ。
僕も城で見た記憶がほとんどないからしょうがない。

「ミアの言う通りだと思うから行ってくるよ。何かあったら念話で教えて」

僕は隠密を使って彼に近づく

「久しぶりだね。今まで何してたの?」
僕は無視される

「……ねえ、僕も隠密使ってるから大丈夫だよ。何から隠れてるかは知らないけど……」
まだ無視される。

「無視しないでよ」
僕は彼の肩を揺らしながら言う

「うおっ!」
彼はすごく驚きながら振り返った

「……久しぶりだね、篠塚くん」

「影宮か…ん、影宮?え?亡霊か?」

「いや、生きてるよ。それにさっきから声掛けてたのにずっと無視するし。一応、死んだと思ってたクラスメイトとの感動の再会だよ」

「何言ってるんだよ、急に肩を揺らされて俺は驚いたんだぞ」
……篠塚くんには隠密を使った僕が見えてなかったようだ。
隠密は一度認識すれば、その後は見失うまでは視認できる

肩を揺らすまでは認識されなかったと

「ごめんごめん。僕も隠密使ってたからさ」

「なんで俺が隠密使えるって知ってるんだ?てか、そもそもなんで俺に気づいたんだよ?隠密中の俺に気づいたやつなんて今までいなかったぞ?」

「僕も聞きたかったんだけど、篠塚くんって武道家じゃないよね?姫野さんからそう聞いたんだけど」

「いや、だからなんで知ってるんだよ」

「それは今は言えない。篠塚くんが敵か味方かわからないから。敵なら捕まえる。味方なら助ける。中立なら……手助けくらいはするよ」

「影宮の敵ってのは誰のことだ?俺は影宮と敵対するつもりはないけど、結果的に敵かもしれない。俺はこの世界で恩人が出来た。その人達をお前が害するつもりなら俺は容赦しない」

「篠塚くんってそんなキャラだったっけ?もっと……クールだったよね?」

「気を使わなくていいよ。あの頃の俺はどこか冷めてたんだよ。誰とも関わろうとしてなかった」

「うん、そんな感じだったね。雰囲気が違いすぎてビックリしたよ」

「……それで、影宮の敵は誰だ?」

うーん、話してる感じ篠塚くんに悪い印象は受けない。
僕は敵対しない事を願いつつ篠塚くんに質問する

「篠塚くんは王国についてどう思う?」

「……クソだな。だから逃げた。お前の処刑を見て踏ん切りがついたっていうのに生きてたなんてな。結果オーライだったがな」

「クラスメイトのことはどう思う?」

「なんとも思ってない。……いや、違うな。助かればいいとは思うけど、助けたいとは思っていない」

「帝国のことは?」

「思うところはあるが、王国よりは良いと思う。だが、帝国の一部は俺の敵だ」

「魔族は?」

「よく知らん。イメージと違って悪い噂は聞かないな」

「獣人は?」

「……いい奴だ」

篠塚くんは嘘がつけない人なのだろう。

「篠塚くんの恩人ってもしかして獣人なの?」

「だったらなんだ?お前もそっち側か?」
空気が変わった気がする

「いや、篠塚くんとは敵対しなくて良さそうで安心したよ。僕もこの世界の獣人の待遇には思うところがあってね。なんとかしたいと思ってるんだよ」

「ほんとか?嘘だったら許さねぇからな」

「本当だよ。篠塚くんは王国に一番近い帝国領の街には行った?ミハイル様が領主の街」

「ああ、行った。あそこはクソだったな」

「最近は行ってない?」

「ああ、行ってないな。なんとかしてやりてぇとは思うけど、俺が大事なのは俺の恩人の獣人の人であって、獣人全員じゃねぇからな。まあ、獣人の差別を無くすことで恩を返せると思っているから無関係ではねぇけどな」

「あそこの街の獣人への差別はかなり無くなったよ。完全にでは無いけどね。あそこの街の領主のミハイル様は獣人に対して差別しない良い人だよ」

「信じられないな。あそこの街は特にヤバかった。良くなった想像が出来ねぇ」

「あそこの街は商業ギルドが差別を増福させてたんだよ。知ってた?だから、僕が潰した。……物理的に」

「何言ってるんだ?」
篠塚くんは理解が追いついていないようだ

「今度行くことがあったら見てみればわかるよ」

「あ、ああ」

「それで、なんで隠れてるの?」

「今更かよ、俺は要人の護衛中だ。要人は良いやつではないけど報酬がいいからな。そいつのせいで誰かが不幸になるのをわかってて俺は護衛している。幻滅するか?」

「篠塚くんがそれで後悔しないなら良いと思うよ。それでこれからなにをするの?」

「はぁ。普通はそんな情報は言わないんだぞ。まあ、隠したところでお前にはバレそうだし教えてやるよ。他のやつには言うなよ。俺から漏れたってバレるとマズイからな」

「わかった。誰にも言わない」

「ここからずっと東に行くと大陸の端に村がある。そこに変わったスキルを持った女がいるらしい。そいつに仕事の協力を頼みにいくそうだ。まあ、断られたら無理矢理にでも連れていくみたいだから最低な仕事だな。」

「その村ってエド村だよな?」

「知ってるのか?」

「今、そこの村から帝都に帰る所だよ。篠塚くんの為に言っておくよ。今回の仕事からは降りるべきだ」

「それは出来ない。俺には金がいるんだ。」

「そこの村には僕の知り合いもいる。僕と敵対してでも続けるつもり?」

「ああ」

「なんでそんなにお金がいるの?」

「恩人の子供が病気なんだ。金があれば治療が受けれて、長くはなくてもまだ生きれるかもしれない。俺はその人がいなければ死んでた。だから俺はお前とも戦う覚悟はある」

「その子供はどこにいるの?」

「どうするつもりだ?」
篠塚くんに睨まれる

「病気を治すんだよ」

「影宮が治療できるのか?」

「いや、僕じゃない。僕のいも…仲間が治癒魔法を使えるよ。絶対じゃないけど良くなると思う。」

「急には信じられないな」

「それなら、お金だね。いくら必要なの?」

「あればあるだけだ。金貨10枚でも100枚でも、いくら掛かるかわからないからな。診療所で診てもらって治らなかったら、次の診療所に行くしかないから」

「わかった、これあげるよ。足りなかったら帝都の冒険者ギルドを訪ねれば貰えるようにしておくから。」

僕は金貨500枚を渡す

「これ、本物か?なんでこんなに持ってるんだよ?」

「色々やってたらいつの間にか手に入ってたよ。遠慮せずに使ってほしい。でも、そこらの診療所に連れていくなら僕のい…仲間に治癒魔法掛けてもらった方が絶対にいい。これは断言するよ」

「ありがたいけど、借りは作らない。金は自分で稼ぐ。今回もお前が邪魔しなければ問題ないはずだ」
金貨は返されてしまった

「篠塚くんは勘違いしているよ。僕の知り合いがいるとは言ったけど、止める理由は違うよ。害そうとしている女の子に手を出したら多分死ぬよ?返り討ちにあって」

「何言ってるんだ?俺も自分の力は把握しているつもりだ。同じクラスメイトならまだしも女の子に負けるわけないだろう」

「僕は忠告したからね。気が変わったらさっきも言った通り帝都のギルドに顔を出して欲しい。僕に話が通るから」

僕はそう言って篠塚くんと別れた
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【創造魔法】を覚えて、万能で最強になりました。 クラスから追放した奴らは、そこらへんの草でも食ってろ!

久乃川あずき(桑野和明)
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ『面白スキル賞』受賞しました。 2022年9月20日より、コミカライズ連載開始です(アルファポリスのサイトで読めます) 単行本は現在2巻まで出ています。 高校二年の水沢優樹は、不思議な地震に巻き込まれ、クラスメイト三十五人といっしょに異世界に転移してしまう。 三ヶ月後、ケガをした優樹は、クラスメイトから役立たずと言われて追放される。 絶望的な状況だったが、ふとしたきっかけで、【創造魔法】が使えるようになる。 【創造魔法】は素材さえあれば、どんなものでも作ることができる究極の魔法で、優樹は幼馴染みの由那と快適な暮らしを始める。 一方、優樹を追放したクラスメイトたちは、木の実や野草を食べて、ぎりぎりの生活をしていた。優樹が元の世界の食べ物を魔法で作れることを知り、追放を撤回しようとするが、その判断は遅かった。 優樹は自分を追放したクラスメイトたちを助ける気などなくなっていた。 あいつらは、そこらへんの草でも食ってればいいんだ。 異世界で活躍する優樹と悲惨な展開になるクラスメイトたちの物語です。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。 その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。 

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...