上 下
38 / 147
獣人編

逃亡者、家に住む

しおりを挟む
僕は屋敷に戻ってきて、ミア達にミハイル様を紹介する

「お待たせ。ゲルダ様のと話は終わったよ。この人はこの屋敷の主人で領主のミハイル様だよ」

領主の登場に3人は慌てる

「りり、領主様、おお世話になってます」
ミアが緊張しながら挨拶をする

「やあ、ミハイルだよ。よろしくね」
ミハイル様は大分フランクに挨拶をする
領主様がこれでいいのかなぁ

「僕は獣人だからって差別しないから安心してね。……僕が不甲斐ないばかりに苦労をかけてごめんね」
ミハイル様はフィルとフェンを見て申し訳なさそうに言う

「い、いえ。領主様が気にする事ではありません」
フィルが慌てて答える

「いつか普通に暮らせるようにするから待っててほしい」
ミハイル様は自分に言い聞かせるように言う

「……おねがいします」

「あぁ、約束しよう」
ミハイル様は胸に手を当てて約束をする

「家を探しに来たんだよね?僕はこのままここに住んでくれても良いんだけど…」
ミハイル様はそんな事を言う

「そんなにお世話になるのはさすがに悪いですよ。家を紹介してくれるだけでありがたいです」
僕はミハイル様に家の紹介だけお願いする。
ミア達にはここでの生活は気を使いすぎて窮屈だろう

「そうかい?じゃあここの家を使うといいよ。タダでいいから」
ミハイル様が地図に指を差しながらとんでもない事をいう。
地図で見る限りかなり広そうなのに…

「それはいけません。お金はちゃんと払いますよ」

「別にいらないんだけどね。それじゃあ月に銀貨50枚貰おうか。これ以上は受け取らないからね」

「すごく安い気がしますけど、わかりました。お願いします」

「ああ、家賃は月末までに翌月分を私に持ってきてくれ。門兵には話を通しておくから。はい、これが鍵だよ」

定期的に会いに来るようにとのことだろう。
「ありがとうございます。これは今月と来月分です」
僕は鍵を受け取って、代わりに金貨1枚を渡す

「はい、たしかに」

「家を借りれたから行こうか」
僕は緊張したままの3人に声を掛けて屋敷を出る

「あー、緊張した」

「うん、私も」

「僕も」

フェンはずっとフィルの手を掴んでいる

「家はあっちの方だね。干し肉でも齧りながら行こうか」
僕は収納から干し肉を出して3人に配る

「なんかわたしの干し肉だけ食べかけだよ。別にいいけど」
フィルは不思議そうに干し肉を眺める

「フィル覚えてない?朝に寝ながら食べてたでしょ?」

「…そういえば起きた時に肉の味がした気がする」

「その時の干し肉だよ」

「……」
フィルは恥ずかしそうに俯く

「僕のイタズラだから気にしないでね」
僕は笑いながらフィルの頭を撫でる

そんな事をしながら歩いていくと目的の家に辿り着く

「おっき~い!」
フェンが目を輝かせる

「……あれは屋敷だね」
僕は少し顔がひきつる。
そこには20人くらいは軽く住めそうな屋敷があった。

「とりあえず中に入ろうか」
僕達は屋敷の中に入る

中に入るとメイドさんが出迎えてくれる

……?

「お帰りなさいませ、私はミハイル様よりハイト様達のお世話をする様に申しつけられました、メイドのサラです。これからよろしくお願いします」

「え…?聞いてないんだけど。…自分達の事は自分で出来るので大丈夫ですよ」
本当に聞いてないよ。あの人なに勝手にやってるの

「ミハイル様よりハイト様は遠慮するかもしれないけど、仕事を全うするように申しつかっております」

拒否は受け付けないらしい
「…うん、これからよろしくね。じゃあ、さっそくだけどこの屋敷の中を案内してもらってもいいかな?」

「かしこまりました」

僕達はサラさんの案内で屋敷の中を見て回る

「部屋の割り振りだけしちゃおうか」

僕とミアは1人で1部屋。フィルとフェンは2人で1部屋にした。
ミアが僕と同じ部屋が良いって言ってたけどなんとか説得した。

「そろそろ昼食にしようか」
屋敷を見て回った後、良い時間になってたので昼食にしようとする

とりあえず、収納から何か出せばいいか

「僕が用意するから座って待ってて」
僕がそう言うと

「昼食の準備は整っております」
とサラに言われる。さらに
「フェン様には消化の良いものを準備させていただきました」と

「サラさんは食事も作れるんですか?」

「簡単なものであれば作れます」

ダイニングルームに用意されていた料理はとても簡単に作れそうなものではなかった
この人、出来る人だ…

並べられた料理は4人分だった
「サラさんも一緒に食べましょう」
僕はサラさんも一緒に食べるように勧める

「いえ、私は後でいただきますので大丈夫です」

「僕が一緒に食べたいんです、これから一緒に生活するわけですから色々と話もしたいですし」

僕は有無を言わさずにサラさんを席に座らせてキッチンに向かう。

後で食べるって言ってたからもう1人分残ってると思ったんだけどな…
キッチンにはスープとパンはあったが他に出来てる料理はなかった。

僕はパンとスープそれから王国の朝食で置いてあったサラダやソーセージ、卵などをトレイに乗せて持っていく

「こんなものしか無くてごめんね」

「いえ、ありがとうございます」
サラさんは戸惑いながらお礼をする

「それじゃあ、みんなで食べようか」

サラさんは口をつけてもいいのか悩んでいるようだったので僕は声をかける

「サラさん、ミハイル様からどのように言われているかわかりませんが、僕はただの冒険者です。ここで一緒に生活するのであれば友達や家族に接するように僕達にも接してもらえませんか?もちろん、すぐにとは言いませんが、まずは形からでもお願いします」

「……ハイト様がそうおっしゃるならばそのようにします」
そう言ってサラさんはスープに口をつける

今はこれでいいかなと思いながらも一言だけ伝える
「様付けはしなくていいからね」

「それは……わかりました。……ハイトさんでよろしいですか?」

「もちろんだよ。言葉ももう少し崩してくれていいからね。メイドとしての仕事をお願いする時もあると思うけど、自分の家にいるつもりで過ごしてくれていいからね」

「わかりました。そうさせてもらいます」

まだ固いけど、今はこれで充分かな

「とりあえず、この後は少し休んでから買い物に行くよ。臨時収入もあるしお金の事は心配しないでね」

昨日までの僕とは違うのだ。

「お兄ちゃん、大丈夫なの?」
「え、そんな、悪いです」
「ホント!やったー!」

三者三様の返事が返ってくる

「ミア、これはミアが稼いだお金でもあるからね。遠慮しないように。フィルとフェンも遠慮しないで欲しいものは言うんだよ」

話を聞いてるサラさんに僕は言う
「サラさんも行くんだよ?」

「えっ?」

「欲しいものがあったら遠慮しないでね」

「買ってもらうわけにはいきません」
サラさんは拒否する

「なら街を案内してよ。僕とミアは昨日来たばかりだからね。そのお礼としてって事で欲しいものを買ってあげるよ」

「案内は構いませんが、お給金はミハイル様より頂いていますので大丈夫です。」

強情だな
「いいから、遠慮しないの!」

「……わかりました」
これはわかってないな。顔を見ればわかる。

昼食後少し部屋で休んだ後、僕達は街に繰り出すことにした

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【創造魔法】を覚えて、万能で最強になりました。 クラスから追放した奴らは、そこらへんの草でも食ってろ!

久乃川あずき(桑野和明)
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ『面白スキル賞』受賞しました。 2022年9月20日より、コミカライズ連載開始です(アルファポリスのサイトで読めます) 単行本は現在2巻まで出ています。 高校二年の水沢優樹は、不思議な地震に巻き込まれ、クラスメイト三十五人といっしょに異世界に転移してしまう。 三ヶ月後、ケガをした優樹は、クラスメイトから役立たずと言われて追放される。 絶望的な状況だったが、ふとしたきっかけで、【創造魔法】が使えるようになる。 【創造魔法】は素材さえあれば、どんなものでも作ることができる究極の魔法で、優樹は幼馴染みの由那と快適な暮らしを始める。 一方、優樹を追放したクラスメイトたちは、木の実や野草を食べて、ぎりぎりの生活をしていた。優樹が元の世界の食べ物を魔法で作れることを知り、追放を撤回しようとするが、その判断は遅かった。 優樹は自分を追放したクラスメイトたちを助ける気などなくなっていた。 あいつらは、そこらへんの草でも食ってればいいんだ。 異世界で活躍する優樹と悲惨な展開になるクラスメイトたちの物語です。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。 その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。 

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...