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王国 脱出編

逃亡者、盗賊と戦う

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乗り合い馬車に乗って城下町を出てから6時間程経つ。

「暗くなってきましたのでここで休息にしましょう。」
御者の男性が馬車を止めて声を掛ける。

テントが張られて、焚き火を起こす。
食事や設営も料金に含まれている。

僕とミアそれと10歳くらいの姉弟が同じテントになる。
姉がルカで弟がルイとのこと。
話を聞くと城下町に2人で出稼ぎに来てて村に帰る所だそうだ。僕が同じ頃は部屋に篭ってゲームしてたな。
話をしてるとテントに食事が運ばれてくる。

硬いパンに干し肉と具の無いスープ。
僕は微妙だなと正直に思う。
でも「やった!ご馳走だ」と姉弟にはご馳走に見えるらしい。
僕は小声でミアに「これってご馳走なの?」と聞く
「肉は貴重ですからね。干し肉だってご馳走ですよ。私もうれしいです。それに辺境の村だと何も食べれない日もあると聞いたことがありますので…」
悪い事を聞いてしまったな

ただ、僕がこれで満足できるかは別問題だ。
僕は姉弟に僕の分の食事をあげる。
「僕は自分の食事用意してるから食べていいよ、育ち盛りだし足りないでしょ?」
「えっ、いいの!ありがとう。」

収納から城から盗んだ料理を出す。朝食の調理済みのやつだ。うん。まあ美味しいな。だけどすごい罪悪感。
ミアの分も出すつもりだったけど僕は多めに出して姉弟におすそ分けする。
「いっぱいあるから食べていいよ。他の人には内緒ね」

「えっ、こんな豪華な料理見たこともないよ。本当に食べていいの?」

「ああ、もらい物だから気にしないで食べていいよ。食べないと腐っちゃうしね」
本当は収納の中では腐らないけどね。
姉弟は興奮気味で食べていく。

こうゆうのも悪くないな

ワイワイと騒ぎながら夜が更けていく。


朝にミアに起こされるのはもう慣れた。
慣れてしまったというべきか

身支度をして馬車に乗り込む。今日も順調に進むと思われたけど、事件に巻き込まれてしまった。
正確には当事者は僕ではなくテントで一緒だった姉弟の弟ルイだ。
街道の途中で盗賊に襲われた。護衛の冒険者が健闘するが隙を突かれて弟くんが人質に取られてしまった。
しかも護衛の冒険者は勝てないと判断して撤退の指示を出す。
どうする?助ける方法はないのか?悩んでいるうちに残ってるのは僕とミアと姉の3人になってしまった

盗賊は5人かな。ステータスは僕の倍くらいか。こう思うとよくロンドに勝てたな。覚えてないけど…

あの時と違って逃走しても逃げれるのは僕だけだよな。
可能性があるのは改変スキルかな。前に改変スキルでステータスあげようとしたけど何も起きなかったんだよね。ワインの毒は消せたけど、何か使用のルールがあるのかな?確かに無限にステータス上げれたら強すぎるけど…何か方法はないのか?LUKだけ高くても戦闘には役に立たないよ…

もしかして……ダメ元でやってみるか。

「ヨシ!これで助けられる。」
僕は盗賊に向かって走っていく。そしてルイを捕まえてる男を殴ってルイを離したところで手を引き離れる。
殴られた男は何が起きたかよくわかっていないようだ。

「ミア、ルカ。ルイをつれて逃げて!うしろは僕を信じて走って!」

僕は2人にルイを連れて逃げるように伝える。そして僕は殿を務める。

「てめぇ、なんでいきなり強くなってやがる。何をした?」

「答える必要はないな。死にたいなら相手になるからかかってこい」
僕は啖呵をきる。
正直今の僕なら負けないだろう。でもそもそも戦いは好きじゃないから逃げてってくれないかなぁ。

盗賊達はオロオロとしている。統率が取れてないな。チャンスだな

「かかってこないのか?じゃあこっちからいくか。5秒だけ待ってやる。残ったやつは生きて帰れると思うなよ」

うん。これ完全に僕が悪役だ。

「はい、いーち、にー、さーん、よー」

盗賊達は我先にと逃げ出した。

自分のヒールっぷりに辟易するがおとなしく逃げてくれてよかった。

さてミア達はどこにいるのかな。

「おーい。ミアー、どこにいるの?」

僕は大声を出しながらミア達を探す。

「お兄ちゃん、ごめんなさい…」

振り返るとミアが盗賊に捕まっていた

「動いたらこいつを殺す」

僕はその光景を見た瞬間に頭に血がのぼる

そして走って近づき顔を思いっきり殴りつける。

盗賊は僕の動きに反応出来ずに殴られて吹っ飛ぶ。
僕はミアを抱える。

フー!フー!フー!……

少しづつ冷静になる。

「ミア、大丈夫!?」

「うん。ごめ…んなさい…。…お兄ちゃんが心配で戻ってきちゃったの。私は大丈夫だから…」

「…いいんだよ。心配してくれて僕はうれしいよ。でもあまり心配をかけないでね」

「うん…気をつける。……お兄ちゃんが私のために怒ってくれてうれしかった。ありがとう」
ミアは照れながら言った。


盗賊は…死んではないな。どうなるかわからないけどこのまま放置でいいか。

「姉弟はどこにいるか知ってる?」

「うん。あっちの方にいるよ」

僕はミアに案内されて姉弟と合流する

「ハイトさん。ルイを助けてくれて本当にありがとうございました」
ルカが頭を下げる

「ありがとう」
ルイも姉に続く

「いいよ。昨日会ったばかりだけど、仲良くなった人が目の前でひどい目にあうのに僕が耐えられなかっただけだから」

「何ができるかわからないけど私に出来ることがあったら何でも言ってください。」
ルカがそんな事を言う

「うん。何かあったらお願いするね」
僕は気持ちとして受け取っておく

「ミア、歩きだと次の街か村までどのくらいかわかる?」
馬車が無いため、移動手段を確保するまでは歩かないといけない

「街道沿いに歩いていけばいつかはたどり着くと思うけど…どのくらいかかるかはわからない。運良く馬車が通ったりして乗せてもらえればいいんだけど…」

「頑張って歩くか…」

僕達4人は街道を休憩を挟みながら歩く。
歩きながらミアが聞いてくる

「お兄ちゃん、いきなり強くなったよね?なんで?」

「誰にも秘密だよ。前に僕のステータス見せた事があるよね?今のステータスも見せてあげるよ」

影宮 灰人
Lv:1
職業
[逃亡者]
称号 
[運命から逃げたもの 神]
[最高神の加護]
[女神アステリナの加護]
[妹属性]
スキル
[逃走][生活魔法Lv:3][偽装][鑑定][収納][改変]

HP:1100
MP:110

ATK:110
DEF:110
INT:110
RES:110
SPD:120
LUK:110


「あれ、ステータスのバランスが良くなったね。前はLUKだけが突出してたのに…前にステータスは改変出来ないって言ってたよね?」

「いや改変スキルを使ったんだよ。前はATKとかのパラメータ値を上げようとしてたんだけど、さっきは称号を改変したんだ。LUK +補正(極大)を各種ステータス +補正(特大)にしたんだよ。まだあるかもだけど、改変スキルは称号には使えるみたい。あと能力自体を上げるには制限があるのかな。極大補正が特大補正になってるし。」

「凄いね!こんなスキル聞いた事ないよ」

「これで僕も多少は戦えるようになったかな」

「……お兄ちゃん、レベル1でステータス100超えは前代未聞だと思うよ」

ミアは呆れたようにそんな事を言った
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