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来客

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「アンジェが良ければだけど、……僕の家に来ない?」
僕はアンジェに提案する。

「エルク君の家に?何か用があるの?」
少し緊張したこともあり、言葉が足りていなかったようだ。

「ずっと訓練室で寝泊まりするのは気疲れするでしょ?部屋は余ってるから、嫌じゃなければ遠慮はいらないから、うちで暮らしたらどうかなって」

「え?……でもいいの?迷惑じゃない?それにそんなこと勝手に決めたら家族の人が困るでしょ?」

「お母さんとお父さんには確認したから大丈夫だよ。お姉ちゃんには確認出来てないけど、お姉ちゃんも駄目とは言わないはずだよ」
ルフを通してお母さん達には確認済みだ。
エルクが建てた家なんだから、好きにしていいと言われた。
それから、僕の友達に会いたいから連れてきてとも言われている。

「…………それなら、お願いしてもいいかな」
アンジェは迷いながらも、うちに来ることに決める。

家に帰る前に、アンジェの布団を買いに行く。

「申し訳ありません。布団は売り切れとなっています」
家具屋に入るが売り切れだった。
布団だけでなく、生活に必要な物はほとんど売れてしまったようだ。

「私なら布団無しでも大丈夫だよ」

「アイテムボックスに外で使う用のやつがあるから、それを出すよ」
本当はアイテムボックスに布団は入っていないので、帰ったら創造で創ることにしよう。

「ただいま!」
「おじゃまします」
家に帰ってくる。

「おかえり。アンジェちゃんね」

「お世話になります」

「自分の家だと思ってね」

「ありがとうございます」

「アンジェちゃんの部屋はこっちね」
お母さんがアンジェを部屋に案内する。
部屋にはお母さんにプレゼントした布団が敷いてあった。

「あれ?お布団はないって聞いたけど……」
布団がないから買いに行ったアンジェは疑問を浮かべている。

「新しい物じゃなくてごめんなさいね。洗ってはあるから」

「いえ、とんでもないです。ありがとうございます」

「エレナが帰ってきたらご飯にしましょう。お風呂の準備してあるから、お先にどうぞ」

「先にいただくわけにはいかないです。私は最後で結構です」

「遠慮しなくていいわよ。エルクから瓦礫の片付けをしていたのは聞いてるわ。顔に土埃も付いてるし入ってきて」

「でも、一番風呂を私がいただくわけには……」

「うちの家はルフが魔法でお湯を張ってるから、気にしなくていいよ。お湯が汚れてもすぐに張りかえられるから」

「では、お先に失礼します」
アンジェがお風呂にいく。

「お母さんの布団はどうするの?」
お母さんの布団をアンジェに渡したということは、代わりにお母さんの布団が無いということだ。

「お母さんはお父さんの布団を使うわ。お父さんが、自分は昔の布団でいいから、エルクの友達に良い布団を使わせてやれって言ってたわ。それで、おじさんが使った布団は嫌だろうからって自分の布団を私に寄越したのよ」

「そうだったんだ。布団なら僕が創ろうと思ってたんだけど、それならお父さんに創ったやつを渡しておくね」

「そうしてくれるとお父さんも喜ぶわ。糸も作ってもらっていいかしら。アンジェちゃんの服を作るわ。寮に入れないなら着替えもあまりないでしょうから」

「わかった」
アンジェは小さいカバンを1つ持っているだけだ。
アイテムボックスの事を知らなければ、生活に必要な物はほとんど持っていないように見えるだろう。

着替えが入っているかはわからないけど、後で足りない物がないか聞いておこう。

「アンジェに布団を譲ってくれてありがとうね。ぺたんこな布団だけど重ねればふかふかに感じると思うからこれを使って」
僕は創造で布団を創ってからお父さんの部屋に行き、敷布団を2枚と掛け布団を渡す。
創造で創った敷布団は、中の綿が少ないのかプレゼントした布団に比べて少しぺたんこだ。
それでも、ずっと村で使っていた布団よりはいい物だと思う。
僕の部屋の布団も同じ布団だ。

「ありがとう。エルクが布団も作れるなら、要らぬお節介だったな」

「そんなことないよ。アンジェは嬉しかったと思うよ。今はお風呂に入ってるから、後でお父さんにもちゃんと紹介するね」

「ああ」


「ただいま」
お風呂から出た後、お父さんにアンジェを紹介していたらお姉ちゃんが帰ってきた。

「アンジェちゃんいらっしゃい。久しぶりね」

「お久しぶりです。聖女様。お世話になります」

「アンジェは村から1人で出てきて寮で寝泊まりしてたんだけど、女子寮で寝れなくなったからうちに呼んだんだよ。部屋も余ってるしいいよね?」
僕は事情を知らないお姉ちゃんに説明する。

「もちろんいいわよ。でも、それなら一つアンジェちゃんにお願いがあるわ」

「なんでしょうか?」

「聖女様っていうのはやめてね。家の中くらいは勝手に付けられた肩書きを脱ぎたいわ。それに、途中で中止になってしまったけど、一緒に旅行もいったんだから友達として接してくれると嬉しい」
お姉ちゃんが少し照れながら言った。

「はい、え、エレナちゃん」

「うん。よろしくね」

「ご飯出来てるわよ。食べましょう」

「はーい」
アンジェがお母さんから質問責めに遭いつつ、食事を食べた後、僕は持ち物について確認するためにアンジェの部屋へと行く。

コンコン!
「はい。どうぞ」

「お母さん達はアンジェがアイテムボックスのスキルを使えることを知らないから、ほとんど何も持ってない状態で放り出されたと思ってるんだ。持ってる物と足りてないものを教えてもらえない?着替えとか」

「着替えなら半分くらいはアイテムボックスに入れてたから大丈夫よ。他は……最低限生活するのに必要な物は足りてると思うわ」

「何か足りない物があったら遠慮なく言ってね。それから、お母さんがアンジェが着替えをあまり持ってないと思って服を作るって言ってたから、それは受け取ってあげてね」

「うん、ありがとう。エルク君がアイテムボックスを使えるってことは家族のみんなは知ってるの?」

「知ってるよ」

「私もアイテムボックスを使える事を言うわ。私が隠している事で余計な迷惑を掛けたくないから」

「無理しなくてもいいけど、アンジェが言いたいなら止めはしないよ」

「無理はしてないから大丈夫よ。エルクのご家族が言いふらすことは無いと思うし、アイテムボックスみたいなスキルを持ってる人は増えたから、もし広まったとしても前ほど危険に巻き込まれる心配もないわ」

「そうなの?」

「スキル屋が収納ってスキルを結構な人に売ったらしいわよ。入る量はそんなに多くはなくて、時間停止はしないみたいだから、アイテムボックスの下位互換みたいな感じだけどね」
スキル屋でスキルを買った人の数は着々と増えているようだ。

「いいことを聞いたよ。今度からバレそうになったらスキル屋で買った収納だって言うことにしよう」

「それじゃあ私はエルク君のお母さんに話をしてくるわ。また明日ね。おやすみなさい」

「おやすみなさい」
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