上 下
138 / 201

契約

しおりを挟む
「エルク、何言ってるの!エルクがそんなことする必要はないよ」
悪魔と契約することをお姉ちゃんに反対される。

「お姉ちゃん、ずっと手が震えてるよ。それに、僕がお姉ちゃんに手を汚して欲しくないんだ。お姉ちゃんが僕にやらせたくないのと一緒だよ」
これは僕のわがままでもある。

「本当に我と契約するのか?」
悪魔に聞かれる。

「うん。どうすればいいの?」

「我と契約する意思があると強く念じろ。さすれば我と魂の繋がりが出来る。その後、対価を提示しろ。我が対価を受け取れば契約成立だ」

僕はこの悪魔と契約すると強く念じる。

少しして魂の繋がりが出来たのか、悪魔の体が光り手の甲に紋様が浮かぶ。

「……た、対価を提示してくれ」
なんだか悪魔の様子がおかしい気がする。
動揺している?

「どうかしたの?」

「な、なんでもない。これで死なずに済むと安心しただけだ」

「そう。対価はこれね。なんでもいいんでしょ?」
僕は悪魔にクッキーを渡す。
殺さないということが実際の対価なので、渡すものはなんでもいい。形だけだ。

魂は流石に対価には出来ない。
死んだ後に魂がどうなるかはわからないけど……

「これで我との契約成立だ」
お姉ちゃんに水の牢獄を解いてもらい悪魔がクッキーを受け取る。

「僕の命令は聞かないといけないんだよね?」

「ああ、そうだ」

「どうやって生活してるの?食事とか」

「趣向品として食べることはあるが、本来悪魔は食事を必要としていない」

「見た目って変えられないの?ツノを隠したりして人間の見た目にはなれない?」

「可能だ。……これでどうだ?」
悪魔が人の姿に化ける。
見た目は執事だ。

「それじゃあ、命令するね。人に危害を加えたり、悪いことをしないこと。自衛する為なら認めるけど、相手を無闇に殺さないこと。悪いことっていうのは衛兵に捕まったり、叱られたりするようなことね。その辺りは自分でよく考えて動いてね。後は基本的には好きにしていいけど……僕の執事ってことにしようか。ちょうど格好もそんな感じだし。何かお願いしたいことがあったらその時に頼むけど、嫌なら嫌って言っていいからね」
悪いことをしないならこの悪魔をガチガチに縛る気はない。

「それでいいのか?我が言うことではないが、今まで我を召喚した者達はもっとドス黒い要求をしてきた。それが魂に深みを出すわけだが……」
悪い人の魂の方がおいしいのかな?

「殺さないのが目的だからこれでいいんだよ。名前はなんていうの?」

「我に名前はない」

「なら付けてあげる。名前が無いと呼びにくいからね。なにがいいかな……ルフにしよう。どうかな?」

「異論はない。今から我はルフと名乗り、エルク様の執事として仕えます」
ルフが僕に頭を下げる

「エルク、本当に大丈夫なの?」
お姉ちゃんに聞かれる。

「大丈夫だよ。契約したからか知らないけど、ルフが命令を聞かないといけないっていうことはわかるよ」

「……エルクを信じるけど、もしエルクに危害を加えたら許さないからね」
お姉ちゃんは半信半疑のようだ。

「そのようなことは致しません」
ルフがお姉ちゃんに答える。

「この凍らせた魔物達とヘドロみたいなやつの処理をしたら村に帰ろうか」
このまま放置は出来ないので、処理しないといけない。

「これが無くなれば動物達も村を荒らしに来なくなるかな?でもどうやって処理するの?」

「この辺りには木の実とか沢山あるから、少しずつ元に戻るんじゃないかな?処理は……どうしよう?」

「我にお任せ下さい。元々は我の贄なのだから取り込みます」

「力が増すの?」

「その通りです。しかし契約が反故になったりはしません。また、力が増したところでエルク様達に敵うとも思えません。力が増すことで力になれることが増えるとお考えください」
嘘を言っている感じはしないので任せることにする。
僕が火魔法で溶かし、ルフが体に取り込んだ。

ルフの力が増したのがわかったけど、本人が言っていた通り、暴れたりはしなかった。

「この人を連れて村に帰ろうか。この人は王都まで連れて行ってナイガルさんって衛兵に引き渡すことにしよう。リリスちゃんの時にお世話になった衛兵の人だよ」
継承権争い関係みたいだし、賄賂とかで買収されることのなさそうなナイガルさんに任せるのがいいと思った。

僕はアイテムボックスからロープを取り出して男の腕を縛る。

「ぐっ……ううう」
森から出ようと歩いていた時、男が急に苦しみ出した。

何が起きたのかわからない。

お姉ちゃんがすぐに回復魔法を掛ける。

「もう死んでるわ」

「僕がやるよ」
ローザの両親の時のようにやればまだ助かるかもしれない。

「やめて!エルクは少し前に暴走させたばかりでしょう?あまり連続で暴走させない方がいいわ。エルクの大事な人だっていうなら止めないけど、そうじゃないならエルクがリスクを負うのはやめて」

「連続で暴走させるとマズイの?」

「魔力が安定しきっていない時に、さらに暴走させて乱れさせると、魔力が正常な状態に戻らなくなる事があるらしいの。前に暴走させた時に治療院の先生に安定するまで魔法を使うなって言われなかった?あれは魔法を使うのがいけないんじゃなくて、暴走させない為に言ってるのよ。暴走させたってことは、また暴走させる子かもしれないってことだから、そもそも使わないように言ってるの」

「……そうだったんだね。わかったよ。なんで急に苦しみ出したんだろう?」

「毒を飲んだようですね。即効性の毒だったのでしょう」
ルフが男の体を見てそう言った。

「なんで毒なんて……」

「どこかに隠し持っていたのでしょう。このまま捕まれば尋問されることがわかっているのだから、自決したと思われます」

「ルフの言う通りかもしれないね。悪いけどその人を運んでもらっていいかな?」

「かしこまりました」
ルフが男を担ぐ。

村に着き、両親に森でのことを説明してルフを紹介する。

村というか、国を救ったので褒めてもらえると思ったけど、そんな危ないことしないでとお母さんに叱られた。

僕達はもう勝手に森には行かないと約束してお母さんに許してもらう。

お母さんは僕達を叱った後、やったことに関しては褒めてくれた。
ただ、危ないことに首を突っ込まないでともう一度言われた。

村長に報告した方がいいと思ったけど、国を乗っ取ろうとしていたとか、悪魔とか、村長の許容できる範囲を明らかに超えているので、話さないことにする。

ナイガルさんにあの人を渡した時に、村長には話をしていないと伝えておけばいいだろう。
男が怪しい儀式をしている時に出会したと説明して、悪魔に関しては家族以外には秘密にしておこう。

翌日、予定通り村を出て王都へと戻る。

お母さんには家の鍵を渡しておいたけど、王都に着いたら学院まで来てほしいと伝えた。
家の中は空っぽなので、住めるように一緒に準備を手伝うつもりだ。

お母さんにはアイテムバッグを2つ渡してある。
どれだけ家の物を持っていくかわからないけど、2つあれば足りるはずだ。

王都に着くのは長期休暇の最終日の予定だ。
旅行に帰省と楽しいことばかりの予定だったはずなのに、ずっとトラブルに巻き込まれていた。

お母さん達は王都に引っ越してくれるって言ってたし、悪いことばかりでは無かったけど、なんだかすごく疲れた気がする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。 ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする. モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする. その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

チートスキルで無自覚無双 ~ゴミスキルばかり入手したと思ってましたが実は最強でした~

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
北野悠人は世界に突如現れたスキルガチャを引いたが、外れスキルしか手に入らなかった……と思っていた。 が、実は彼が引いていたのは世界最強のスキルばかりだった。 災厄級魔物の討伐、その素材を用いてチートアイテムを作る錬金術、アイテムを更に規格外なものに昇華させる付与術。 何でも全て自分でできてしまう彼は、自分でも気づかないうちに圧倒的存在に成り上がってしまう。 ※小説家になろうでも連載してます(最高ジャンル別1位)

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

処理中です...