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事情聴取

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翌日の朝、ギルドに顔を出すと凄い混みようだった。

理由は僕と同じで、昨日達成報告しようとした人が今日に持ち越しているからだ。それに加えて、朝に依頼が貼り出される為、依頼を受ける人も集中して来ている。

急いでないし、また後で来ようかな…

そう思って踵を返すとクラリスさんに呼び止められた。

「エルク君、ちょっと待って!ギルマスから頼まれたことがあるから来てくれないかな?」

「でも、みんな並んでますよ」

「すぐに終わるから。みんなも1人くらい先にやっても良いわよね?」
クラリスさんが並んでいる人に確認する

混み合ってても、わざわざクラリスさんの所に並んでいる人達なので、クラリスさんの頼みを断るはずはなかった

良いのかなぁと思いながら僕は列に割り込む
うー、視線が痛い

「なんでしょうか?」

「ちょっと奥の部屋まで付いてきて」
なんだろうか?何かやらかしたのかな

「…わかりました」

僕はクラリスさんと奥の部屋に連れてかれる
「昨日、オーガに襲われたって言ってたでしょ?」

「はい」

「その時の事、詳しく教えてもらってもいいかな?」
なんでそんなこと聞くんだろう

「えっと…何かあったんですか?」

「なにもないわよ。ギルマスに確認するように言われただけよ」

なんでギルマスはそんな事を知りたいんだろう?昼寝してたとか、不意打ち食らったとか言いたく無いなぁ
「…襲われたので逃げただけです」

「本当に?」

疑われているらしい。なんでかはわからないけど
「はい、言われた通り逃げました」
嘘は言ってないよ。

「逃げたことを責めてるんじゃないのよ。勘違いしないでね。……オーガの特徴教えてもらえる?」

……もしかしてオーガじゃなかったのかな。
それで現場を混乱させたからギルマスが怒ってるのかも
「ごめんなさい」
僕は頭を下げる

「え、なんで謝るの?」
クラリスさんは混乱している

「昨日、オーガに襲われたって言ったけど、僕はオーガがどんな魔物か良く知らずに言ってました。鬼みたいだったのと、オーガが出るって聞いてたから、勝手にオーガって勘違いしてました」

「鬼みたいな魔物ならオーガで合ってると思うけど、もう少し詳しく教えて」

あれ?オーガで合ってたのかな?じゃあなんで特徴なんて聞くんだろう。個体差はあっても大体同じじゃないの?
「……青色でお「えっ!」」

クラリスさんが声を上げたので僕は話を中断する

「どうしましたか?」

「いえ、なんでもないわ。続けて」
なんか怪しいな

「青色で鬼みたいな顔をしてました。体長は4mくらいかな。大きな棍棒みたいな武器を持ってました」

クラリスさんは信じられないものを見る目で僕を見ていた。

「オーガね……。それで逃げたのよね?どうやって逃げたの?」

わかった。そのオーガが誰かを襲ったんだ。僕が自分だけ逃げたから

「ごめんなさい」

「だからなんで謝るのよ!?」

「僕がうまく逃げれなかったから、他の誰かが襲われたんでしょ?隠さなくてもいいよ」

僕が子供だから気を遣ってくれたのだろう
「違うわよ」

クラリスさんはキョトンとしている。恥ずかしい。
「エルク君、深く考えすぎよ。本当に何も悪い事はしてないから。状況を教えて欲しいだけよ」

それにしてはクラリスさんが必死過ぎると思うんだよね。やっぱり昼寝してたのがバレたのかな。でも昼寝してたからってギルマスが気にすることじゃ無いと思うけど。

「えっと、どこから説明すればいいですか?」

「最初からよ。オーガに見つかったところから」

やっぱりバレているようだ。クラリスさんは僕の口から正直に言って欲しいのだろう

「森で昼寝してたら、体に衝撃を受けたので起きました。そしたら目の前にオーガがいました」

「……」
クラリスさんの顔から感情が抜けている気がする

「続けて良いですか?」

「……え、えぇ」

「クラリスさんにオーガに会ったら逃げるように言われてたので逃げる事にしました。逃げる時間を稼ぐために、土魔法でオーガの足を土で固めました。後は、オーガが追って来る前に街に逃げ込もうと身体強化魔法を使って全力で走りました。門の辺りで振り向いたら、オーガは追って来ていなかったので、薬草採取の報告の為にギルドに行きました」

「……聞いてもいいかしら?」

「何でしょうか?」

「昼寝中にオーガに攻撃されたってことよね?なんで生きてるの?ピンピンしてるし。もしかして……死んで…る?」

怖い事を言わないで欲しい
「生きてますよ!シールドを張ってただけです」

「シールド?盾持ってたの?」

シールドは僕がそう呼んでるだけだった。

「防護魔法です。僕がシールドって呼んでるだけです。」

「そう……わかったわ。ギルマスにはそのまま伝えておくわ。…………私にはもう無理よ」

最後の方がよく聞き取れなかった

「…お願いします」

「聞きたかったのはこれだけよ。薬草採取の完了処理するから出してちょうだい。昨日の毒草もね」

何で毒草も?と思いながらも僕は薬草と毒草を20本ずつ取り出す。

「今度はちゃんと全部薬草ね。毒草も20本あるんだし、毒草採取の依頼も達成にしておくわ」

「毒草でも依頼あるんですね」

「薬草の方が価値は高いけど、毒草も需要はあるのよ」

「怖いね…」

「勘違いしているようだから説明するけど、毒草から解毒薬が作れるのよ。後は狩りに使う矢に塗ったりするのよ」

「そうなんだ。怖い想像してたよ」

「冒険者ギルドはそんな悪いことには協力してないからね。はい、報酬の銀貨15枚ね」

クラリスさんから報酬をもらう。転生してから、初めて自分で稼いだお金だ。
何か記念になるものを買おう。
前世では初給料でケーキを買ったな。1人で1ホール食べた。……思い出しただけで胸焼けしてくる

「ありがとうございます」

「今日も依頼を受けていきますか?」

「今日は初報酬を散財しに行ってきます」

「程々にして下さいね」

笑いながらクラリスさんとの話を終えて部屋から出る。
周りからの視線がやっぱり痛かったのでそそくさとギルドから出ることにした。

――――――――――――――――――
クラリス視点

「ギルマス、エルク君が犯人でした」
私はマスター室にノックもせずに入って伝える

「っ!びっくりさせるな!」
ギルマスは驚いているが私は無視して続ける

「しかも、オーガの攻撃を受けてたみたいです。昼寝中に…」

「……。」
頭が追いついてないようだ。さっきの私もこうだったのだろうか…

「シールドって防護魔法が使えるそうです」

「……。」

「身体強化魔法も使えるって」

「……。」

「そんななのに初報酬だってはしゃいでました」

「……!それはいいだろう。ほっといてやれ」
やっと復活したようだ

「すまないが、もう一度最初から、わかるように説明してくれ」

私はエルク君が昼寝してる所から門に着くまでを順に説明した。

「エルクは本当に人間か?実は魔王が人間の子供に化けてるとかじゃないのか?」

わからないでもないけど…
「流石に酷いですよ。それに今の魔王様は、厳つい見た目ですけど良い人みたいですよ」

「冗談だ。事実がわかってよかったよ。この事は誰にも言わないように。カッシュには私から伝えておく」

「かしこまりました」

「引き続き、エルクの担当はクラリスくんに任せる事にするから、頼んだぞ」

エルク君の担当になっていたようだ。いつの間に……
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