53 / 92
53
しおりを挟む
渡辺太郎は目をキョロキョロさせて、しきりに鼻を掻いている。
俺の質問が直球過ぎて答える気が失せたか。
「あのですね、失礼を承知でお伺いしますが本当にですね、その、恵子とは肉体関係はなかったのですか?」
もし、飲み物を口にしていたら吐き出していたかもしれない。
この期に及んで、まだそのような下世話な事を言うのか!
渡辺太郎の異常なほどの性欲とメデューサへの歪んだ愛情に辟易した。
「山田恵子とはそのような関係は一切ありません!」
渡辺の目を見ながら、少し強い口調でそう言い放った後、わざとらしく渡辺の乱れた頭頂部に目線を移しマジマジと見てやった。
渡辺は目線に気づき、バーコードを手で撫で付けている。
「わかりました…最後に念の為にもお聞きしますが、恵子から肉体関係を求められてませんよね?」
一瞬だけ間が開いてしまったが、それは目の前にいる渡辺には悟られていないはずだ。
「ない、、です。ないですって!」
渡辺は安堵した表情を浮かべ息を吐いた。
「はぁ~良かった。ええ、ええ。もうこのような質問はこれっきりにいたしますよ。
私は今の発言を信じる事にしましたからね。」
「それなら良かったです。」
もし事実を伝えたらーーーー山田"メデューサ"恵子は俺の前で上着を脱ぎ胸を見せようとした事、俺のズボンを脱がそうとした話をしてしまったら…。
きっと感情の起伏が激しく、恵子の事になると自身をコントロール出来ない渡辺は発狂したはずだ。
俺は安堵している渡辺から寒々としたキッチンを見た。
いくら生活感のない部屋とはいえ包丁くらいはあるはずだ。
渡辺に刺殺されたらテレビや新聞で連日、お茶の間を賑わすだろう。
俺は額からじわっと冷たい汗が滲んでいるのに気づいた。
メデューサのバカが俺にしようとした事は絶対に黙っていよう。
奇跡といっていいくらい渡辺とメデューサの部屋で話している間は、故障していた事も忘れるほど電気が俺達を明るく照らしてくれていたのだが、この話題になった途端明かりは消え失せ渡辺の顔が見えなくなってしまった。
俺の質問が直球過ぎて答える気が失せたか。
「あのですね、失礼を承知でお伺いしますが本当にですね、その、恵子とは肉体関係はなかったのですか?」
もし、飲み物を口にしていたら吐き出していたかもしれない。
この期に及んで、まだそのような下世話な事を言うのか!
渡辺太郎の異常なほどの性欲とメデューサへの歪んだ愛情に辟易した。
「山田恵子とはそのような関係は一切ありません!」
渡辺の目を見ながら、少し強い口調でそう言い放った後、わざとらしく渡辺の乱れた頭頂部に目線を移しマジマジと見てやった。
渡辺は目線に気づき、バーコードを手で撫で付けている。
「わかりました…最後に念の為にもお聞きしますが、恵子から肉体関係を求められてませんよね?」
一瞬だけ間が開いてしまったが、それは目の前にいる渡辺には悟られていないはずだ。
「ない、、です。ないですって!」
渡辺は安堵した表情を浮かべ息を吐いた。
「はぁ~良かった。ええ、ええ。もうこのような質問はこれっきりにいたしますよ。
私は今の発言を信じる事にしましたからね。」
「それなら良かったです。」
もし事実を伝えたらーーーー山田"メデューサ"恵子は俺の前で上着を脱ぎ胸を見せようとした事、俺のズボンを脱がそうとした話をしてしまったら…。
きっと感情の起伏が激しく、恵子の事になると自身をコントロール出来ない渡辺は発狂したはずだ。
俺は安堵している渡辺から寒々としたキッチンを見た。
いくら生活感のない部屋とはいえ包丁くらいはあるはずだ。
渡辺に刺殺されたらテレビや新聞で連日、お茶の間を賑わすだろう。
俺は額からじわっと冷たい汗が滲んでいるのに気づいた。
メデューサのバカが俺にしようとした事は絶対に黙っていよう。
奇跡といっていいくらい渡辺とメデューサの部屋で話している間は、故障していた事も忘れるほど電気が俺達を明るく照らしてくれていたのだが、この話題になった途端明かりは消え失せ渡辺の顔が見えなくなってしまった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
アマツバメ
明野空
青春
「もし叶うなら、私は夜になりたいな」
お天道様とケンカし、日傘で陽をさえぎりながら歩き、
雨粒を降らせながら生きる少女の秘密――。
雨が降る日のみ登校する小山内乙鳥(おさないつばめ)、
謎の多い彼女の秘密に迫る物語。
縦読みオススメです。
※本小説は2014年に制作したものの改訂版となります。
イラスト:雨季朋美様
三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!
佐々木雄太
青春
四月——
新たに高校生になった有村敦也。
二つ隣町の高校に通う事になったのだが、
そこでは、予想外の出来事が起こった。
本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。
長女・唯【ゆい】
次女・里菜【りな】
三女・咲弥【さや】
この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、
高校デビューするはずだった、初日。
敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。
カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!
天ヶ崎高校二年男子バレーボール部員本田稔、幼馴染に告白する。
山法師
青春
四月も半ばの日の放課後のこと。
高校二年になったばかりの本田稔(ほんだみのる)は、幼馴染である中野晶(なかのあきら)を、空き教室に呼び出した。
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
Cutie Skip ★
月琴そう🌱*
青春
少年期の友情が破綻してしまった小学生も最後の年。瑞月と恵風はそれぞれに原因を察しながら、自分たちの元を離れた結日を呼び戻すことをしなかった。それまでの男、男、女の三人から男女一対一となり、思春期の繊細な障害を乗り越えて、ふたりは腹心の友という間柄になる。それは一方的に離れて行った結日を、再び振り向かせるほどだった。
自分が置き去りにした後悔を掘り起こし、結日は瑞月とよりを戻そうと企むが、想いが強いあまりそれは少し怪しげな方向へ。
高校生になり、瑞月は恵風に友情とは別の想いを打ち明けるが、それに対して慎重な恵風。学校生活での様々な出会いや出来事が、煮え切らない恵風の気付きとなり瑞月の想いが実る。
学校では瑞月と恵風の微笑ましい関係に嫉妬を膨らます、瑞月のクラスメイトの虹生と旺汰。虹生と旺汰は結日の想いを知り、”自分たちのやり方”で協力を図る。
どんな荒波が自分にぶち当たろうとも、瑞月はへこたれやしない。恵風のそばを離れない。離れてはいけないのだ。なぜなら恵風は人間以外をも恋に落とす強力なフェロモンの持ち主であると、自身が身を持って気付いてしまったからである。恵風の幸せ、そして自分のためにもその引力には誰も巻き込んではいけない。
一方、恵風の片割れである結日にも、得体の知れないものが備わっているようだ。瑞月との友情を二度と手放そうとしないその執念は、周りが翻弄するほどだ。一度は手放したがそれは幼い頃から育てもの。自分たちの友情を将来の義兄弟関係と位置付け遠慮を知らない。
こどもの頃の風景を練り込んだ、幼なじみの男女、同性の友情と恋愛の風景。
表紙:むにさん
夏休み、隣の席の可愛いオバケと恋をしました。
みっちゃん
青春
『俺の隣の席はいつも空いている。』
俺、九重大地の左隣の席は本格的に夏休みが始まる今日この日まで埋まることは無かった。
しかしある日、授業中に居眠りして目を覚ますと隣の席に女の子が座っていた。
「私、、オバケだもん!」
出会って直ぐにそんなことを言っている彼女の勢いに乗せられて友達となってしまった俺の夏休みは色濃いものとなっていく。
信じること、友達の大切さ、昔の事で出来なかったことが彼女の影響で出来るようになるのか。
ちょっぴり早い夏の思い出を一緒に作っていく。
【完結】ぽっちゃり好きの望まない青春
mazecco
青春
◆◆◆第6回ライト文芸大賞 奨励賞受賞作◆◆◆
人ってさ、テンプレから外れた人を仕分けるのが好きだよね。
イケメンとか、金持ちとか、デブとか、なんとかかんとか。
そんなものに俺はもう振り回されたくないから、友だちなんかいらないって思ってる。
俺じゃなくて俺の顔と財布ばっかり見て喋るヤツらと話してると虚しくなってくるんだもん。
誰もほんとの俺のことなんか見てないんだから。
どうせみんな、俺がぽっちゃり好きの陰キャだって知ったら離れていくに決まってる。
そう思ってたのに……
どうしてみんな俺を放っておいてくれないんだよ!
※ラブコメ風ですがこの小説は友情物語です※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる