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ステージへ!

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AAパイナップルホールが開場されほぼ満員となった。
オーディエンスから、ヒリヒリとした熱気が肌感覚で伝わってくる。

「みんな、そろそろ俺らの出番がきた。」

ドレッシングルームのドアを開けた。

数時間前に誕生した即席バンドを従えて、ウミは薄暗い通路をコツコツ足音を鳴らして歩く。

ソラはウミから1番離れた最後尾におり、母であるユラがライブに参加する事が納得いかず不貞腐れつつも、ウミを応援する気持ち、ライブが無事成功するか心配する感情が入り混じっている。

少しかったるそうに歩くウミは、隣の部屋で陣取るザ・マイドリーム・スクラッチのドレッシングルーム前で歩みを止めた。

「コイツらなんざ、プロデューサーの操り人形だ。大した事ねえよ。
俺達は自由。好き勝手できるんだぜ。」

真後ろにいるメンバーを見てニヤリと笑う。

「そうなんだ。この子達は傀儡くぐつなわけね。」

「そうそう傀儡。対して俺らはロック!」

ユラの勝ち誇ったような表情にウミは同意した。

やや狭い通路の先ーーーー
騒めく観客が待つステージ袖に、"即席バンド"はついに立った。
照明は暗く互いの顔が見えずらい。

「おい?みんな大丈夫か?緊張しているのか?」

悪名高い砂城院家で世間には公表できない数々の問題を処理してきたオガタでさえも、ベースを持ったまま硬直してしまっている。

ユラは首を全力で振って否定はしているものの、さすがに緊張を隠せない。

非日常の空間に身を置いて口数が少なくなったメンバーの、ピリピリした空気をヒロコはすかさずカメラに収めはじめた。

「大丈夫だって。ここまで来たんだから後はやるだけよ。緊張なんかすんなよ。
いや、緊張するななんて到底無理な話か。
よっし、俺は普段やらないんだけど、いっちょやるか。みんな円陣組むぞ。」

メンバー以外の、セラ、かつら、オオニシも急いで円陣に加わる。

「ちょっと待って!もうそろそろよね?」

「ああ、そうですよ!お義母さん。大丈夫ですか?」

「大丈夫!大丈夫だから!これは武者震いよ!」

一回、大きく深呼吸した後、ユラは呪文のように余裕だと何度も自分に言い聞かせている。

「みんな、今夜は俺のわがままに付き合ってくれてありがとう!
でも謝らないぜ、今夜はみんなも好き勝手暴れ回れる機会に恵まれたんだからよ。
俺達で、ここ(AAパイナップルホール)ブッ壊そうぜ!」

「オー!!」

暗いステージの袖で、ウミはソラを探した。
こういう時は誰よりも側に居て、ソラなりに思いつく限りの100パーセント肯定の言葉を連発するソラを。

「ウミィ…。」

普段なら聞き取れないくらいか細い声だったが、不思議な事にウミは聞き逃す事なくソラの声をキャッチできた。

真後ろにいたソラは、振り返ったウミに間髪入れず両頬に手を当ててキスをした。

「頑張ってね。ウミなら良いライブが出来るよ!」

「おう!ありがとな、ソラ!」

ヒロコのカメラは休む事を知らない。

遂に照明が明るくなりSEが流れてきた。

SEはジョニー・サンダース&ハートブレイカーズの"Chinese Rocks"だ。

ウミ達はオーディエンスの歓声のなか、スポットライトを浴びにステージへ向かった。































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