私、家出するけどちゃんと探してよね！

砂城院邸は門から屋敷まで徒歩1時間

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「ねぇ、前からオープンカーが近いてきたよ。
女の子が運転しているみたい。」

ヒロコはセラに言った。

「運転しているのは…かつらちゃんだ。」

「あ、あの子がかつらちゃんなの？」

ヒロコはしつこくウミのパンツを降そうとしているソラに、かつらがオープンカーでこちらに向かって来ている事を伝えた。

「本当だ、かつらちゃんだ！オープンカーに乗ってるなんてすごいわ。」

ソラはウミのパンツから手を離し、おーい！と、手を振って呼びかけた。

「かつらちゃん、なんだか様子が変じゃない？」

セラは首を傾げながら姉に言った。

「そうかな？」

かつらは木陰で佇む4人がいる場所ーーーー5メートル付近までやってきたが、明らかに止まる気配がない。

「おいみんな避けろ危ねぇぞ！」

危険を察したウミが怒鳴る。
かつらが運転するオープンカーは止まらず加速していく。

「キャアァァァ！みなさん避けてぇぇ！」

かつらはハンドルから手を離し、顔を両手で覆った。

ソラ、セラ、ヒロコは悲鳴をあげながら、夢中でその場を離れた。

「ウミィ！！！」

愛する夫が車に撥ねられる。
ソラは猛スピードで走り去っていくオープンカーを振り返り、絶叫した。

ウミはオープンカーに飛び乗り、助手席に座ってハンドルを切り、急いでブレーキを踏んだ。

発狂するソラを中心に口々に叫ぶ。
3人は止まったオープンカーにかけていく。

「ウミィ！」

「お、おう。俺なら大丈夫だ。たぶんコイツも。」

フルマラソンを走り終わったかのようにウミは憔悴しょうすいしきっている。

「ごめんなさい。オガタには頼まず、どうしてもワタクシ自身でみなさんを車でお迎えしたかったの。
でも、運転はした事がなくて…。」

かつらは号泣した。

「俺がいなきゃ大惨事だったぜ。ところで、コイツ(オープンカー)はスッゲェな。」

オープンカーから降りると、車体をグルグル見回した。

「ウミィ！本当に大丈夫なの！？」

血相を変えたソラはウミに抱きついた。

「あぁ、大丈夫だっての。高級車を手に入れたらって考えたら、疲れも恐怖も吹っ飛んだ。
それよかよ、ソラ。」

悪意に満ちた表情でウミはソラの耳元でささやく。

「コイツはまさに成功したヤツが乗る車だ。
俺のポンコツの軽トラとはわけが違う。
どうせ、かつらにはコイツを乗りこなせやしねぇ。
後で、大金持ちのかつらからタダで貰っちゃおうぜ！なっなっ！」

発言にムッとしたソラは耳元でささやくウミを突き放し、ソラはかつらの元へ駆け寄った。

「かつらちゃん！大丈夫なの！？」

「…はい。それよりソラちゃんも、みなさんもお怪我はしてませんか？」

座席にもたれ茫然としているかつらだったが、ソラの呼びかけに小さな唇から震えた声で答えた。

強張った顔をしたセラとヒロコは目を丸くして頷く事しかできなかった。