上 下
214 / 275
悪行止まらず

213

しおりを挟む
「ほら、その子を解放しな。アンタも手伝うんだよ。もう立てるだろ。」

サナエは常連客であるサッチーのTバックを履いた尻にポンと軽く蹴りを入れた。

3人はサナエに言われた通り、鼻をすすり涙ながらにウミの手足を括り付けていたロープを外してゆく。

「可哀想に。食い込んで痕が残ってんじゃんよ…。なんて事をしてんのさ。」

「んん…。いってぇ。」

「あ、お兄さん気がついたかい!?」


*****


「いいかい?アンタら。
アンタらがやった事は最低な犯罪だよ。」

床に倒れたままのチグサ以外は、みんな正座をさせられてサナエの説教を聞かされている。

「ねぇ、ウミくんだっけ?
これからの事を聞いていい?
ウミくんはコイツらに暴力を振るわれ強制的に監禁された。
決定権は被害者であるウミくんにあるの。
単刀直入に聞くけど、コイツらを警察に突き出す?」

「あぁ、はなからそのつもりだ。」

痛みこそないがウミは目眩めまいでフワフワしている頭を少しでもシャキッとさせようと、手首でこめかみを叩きながら言った。

「特にあのヤクザの女、俺に嘘をついてこんな事をしやがったんだぜ。
絶対に許しやしねえ。」

「…やっぱそうだよね。そうなるよね。」

ベッド付近に置いてある小さな丸椅子に座るサナエは脚を組み直した後、複雑な表情でモモを見た。

「ごめんなさい。」

3人の中でいち早く土下座をしたのはモモだった。

「おまえ、本当にソラがどこにいるか知らねえんだな?」

「はい。モモは何にも知りません。
偶然、アナタとホテルでバッタリあっただけで、話を合わせていただけなの。」

「おまえはその前にも大嵐家に乗り込み、ソラのお母さんを襲撃したよな。
あれは脅されてやったと俺に話していたが、それは本当なのか?」

モモは横に首を振った。

「嘘です。誰かに頼まれたわけでもなくモモが自分で考えて大嵐家を襲ったの。
一緒に同行した人はいたけど、なにもせず途中で帰った。」

「確かに家にはおまえしかいなかったし、かつらの方で寄こしたボディガードの話にも、もう1人の人物について話はなかったもんな。
他にも嘘や隠し事はないか。
俺が聞かんでもどっちにしろオマワリに聞かれるんだろうがよ。」

独り言を呟くようにウミは言った。

「被害者はウミくんだからね。
もし私が同じ立場なら、やっぱ警察に突き出すよ。
ただ、その…。」

ウミは奥歯にものが挟まったような言い方のサナエに言った。

「ただなんだ?まさかコイツらを許せって言うのか?」

「ウミくん。私からのお願いだよ。他のアバズレはともかくモモを許してあげてくれないかな?」

サナエは土下座をした。

「助けてくれた恩人に言いたかねぇが、これに目を瞑るわけにゃいかない。
俺は酷い目に遭わされたんだぜ?許せるわきゃねえだろうが。」

「ウミくんが怒るのはもっともだよ。
私もこんな最低なお願いを辛い思いをしたウミくんに頼んで自分がアホタレだと思ってんだ。
でも、もう一度、このアホを…このアホを更生させるチャンスを恵んでくんないかな?」

サナエは床にグリグリ頭を擦り付けた。

「ふざけんな!更生は逮捕後もできるだろうよ!」

サナエは必死でウミに頼んだ。

「必ずコイツを正しい道に戻すから。私が必ず!だからお願い。」

土下座の姿勢から顔を上げると目から大粒の涙が溢れ床に落ちた。

モモはサナエとウミに言った。

「サナエ先輩…ありがとう。でもモモを許さないで。
モモは悪い事をいっぱいしてきたし、今回もほんとにほんとにやってはいけない事だった。
自分がやった事から逃げちゃいけないと思う。
だからモモを許さないで。警察に通報してほしい。
でないとね、また同じ事を繰り返すよ。
モモは救いようのないアホだから。」













































しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

ロザリーの新婚生活

緑谷めい
恋愛
 主人公はアンペール伯爵家長女ロザリー。17歳。   アンペール伯爵家は領地で自然災害が続き、多額の復興費用を必要としていた。ロザリーはその費用を得る為、財力に富むベルクール伯爵家の跡取り息子セストと結婚する。  このお話は、そんな政略結婚をしたロザリーとセストの新婚生活の物語。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...