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悪行止まらず
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「ほら、その子を解放しな。アンタも手伝うんだよ。もう立てるだろ。」
サナエは常連客であるサッチーのTバックを履いた尻にポンと軽く蹴りを入れた。
3人はサナエに言われた通り、鼻をすすり涙ながらにウミの手足を括り付けていたロープを外してゆく。
「可哀想に。食い込んで痕が残ってんじゃんよ…。なんて事をしてんのさ。」
「んん…。いってぇ。」
「あ、お兄さん気がついたかい!?」
*****
「いいかい?アンタら。
アンタらがやった事は最低な犯罪だよ。」
床に倒れたままのチグサ以外は、みんな正座をさせられてサナエの説教を聞かされている。
「ねぇ、ウミくんだっけ?
これからの事を聞いていい?
ウミくんはコイツらに暴力を振るわれ強制的に監禁された。
決定権は被害者であるウミくんにあるの。
単刀直入に聞くけど、コイツらを警察に突き出す?」
「あぁ、はなからそのつもりだ。」
痛みこそないがウミは目眩でフワフワしている頭を少しでもシャキッとさせようと、手首でこめかみを叩きながら言った。
「特にあのヤクザの女、俺に嘘をついてこんな事をしやがったんだぜ。
絶対に許しやしねえ。」
「…やっぱそうだよね。そうなるよね。」
ベッド付近に置いてある小さな丸椅子に座るサナエは脚を組み直した後、複雑な表情でモモを見た。
「ごめんなさい。」
3人の中でいち早く土下座をしたのはモモだった。
「おまえ、本当にソラがどこにいるか知らねえんだな?」
「はい。モモは何にも知りません。
偶然、アナタとホテルでバッタリあっただけで、話を合わせていただけなの。」
「おまえはその前にも大嵐家に乗り込み、ソラのお母さんを襲撃したよな。
あれは脅されてやったと俺に話していたが、それは本当なのか?」
モモは横に首を振った。
「嘘です。誰かに頼まれたわけでもなくモモが自分で考えて大嵐家を襲ったの。
一緒に同行した人はいたけど、なにもせず途中で帰った。」
「確かに家にはおまえしかいなかったし、かつらの方で寄こしたボディガードの話にも、もう1人の人物について話はなかったもんな。
他にも嘘や隠し事はないか。
俺が聞かんでもどっちにしろオマワリに聞かれるんだろうがよ。」
独り言を呟くようにウミは言った。
「被害者はウミくんだからね。
もし私が同じ立場なら、やっぱ警察に突き出すよ。
ただ、その…。」
ウミは奥歯にものが挟まったような言い方のサナエに言った。
「ただなんだ?まさかコイツらを許せって言うのか?」
「ウミくん。私からのお願いだよ。他のアバズレはともかくモモを許してあげてくれないかな?」
サナエは土下座をした。
「助けてくれた恩人に言いたかねぇが、これに目を瞑るわけにゃいかない。
俺は酷い目に遭わされたんだぜ?許せるわきゃねえだろうが。」
「ウミくんが怒るのはもっともだよ。
私もこんな最低なお願いを辛い思いをしたウミくんに頼んで自分がアホタレだと思ってんだ。
でも、もう一度、このアホを…このアホを更生させるチャンスを恵んでくんないかな?」
サナエは床にグリグリ頭を擦り付けた。
「ふざけんな!更生は逮捕後もできるだろうよ!」
サナエは必死でウミに頼んだ。
「必ずコイツを正しい道に戻すから。私が必ず!だからお願い。」
土下座の姿勢から顔を上げると目から大粒の涙が溢れ床に落ちた。
モモはサナエとウミに言った。
「サナエ先輩…ありがとう。でもモモを許さないで。
モモは悪い事をいっぱいしてきたし、今回もほんとにほんとにやってはいけない事だった。
自分がやった事から逃げちゃいけないと思う。
だからモモを許さないで。警察に通報してほしい。
でないとね、また同じ事を繰り返すよ。
モモは救いようのないアホだから。」
サナエは常連客であるサッチーのTバックを履いた尻にポンと軽く蹴りを入れた。
3人はサナエに言われた通り、鼻をすすり涙ながらにウミの手足を括り付けていたロープを外してゆく。
「可哀想に。食い込んで痕が残ってんじゃんよ…。なんて事をしてんのさ。」
「んん…。いってぇ。」
「あ、お兄さん気がついたかい!?」
*****
「いいかい?アンタら。
アンタらがやった事は最低な犯罪だよ。」
床に倒れたままのチグサ以外は、みんな正座をさせられてサナエの説教を聞かされている。
「ねぇ、ウミくんだっけ?
これからの事を聞いていい?
ウミくんはコイツらに暴力を振るわれ強制的に監禁された。
決定権は被害者であるウミくんにあるの。
単刀直入に聞くけど、コイツらを警察に突き出す?」
「あぁ、はなからそのつもりだ。」
痛みこそないがウミは目眩でフワフワしている頭を少しでもシャキッとさせようと、手首でこめかみを叩きながら言った。
「特にあのヤクザの女、俺に嘘をついてこんな事をしやがったんだぜ。
絶対に許しやしねえ。」
「…やっぱそうだよね。そうなるよね。」
ベッド付近に置いてある小さな丸椅子に座るサナエは脚を組み直した後、複雑な表情でモモを見た。
「ごめんなさい。」
3人の中でいち早く土下座をしたのはモモだった。
「おまえ、本当にソラがどこにいるか知らねえんだな?」
「はい。モモは何にも知りません。
偶然、アナタとホテルでバッタリあっただけで、話を合わせていただけなの。」
「おまえはその前にも大嵐家に乗り込み、ソラのお母さんを襲撃したよな。
あれは脅されてやったと俺に話していたが、それは本当なのか?」
モモは横に首を振った。
「嘘です。誰かに頼まれたわけでもなくモモが自分で考えて大嵐家を襲ったの。
一緒に同行した人はいたけど、なにもせず途中で帰った。」
「確かに家にはおまえしかいなかったし、かつらの方で寄こしたボディガードの話にも、もう1人の人物について話はなかったもんな。
他にも嘘や隠し事はないか。
俺が聞かんでもどっちにしろオマワリに聞かれるんだろうがよ。」
独り言を呟くようにウミは言った。
「被害者はウミくんだからね。
もし私が同じ立場なら、やっぱ警察に突き出すよ。
ただ、その…。」
ウミは奥歯にものが挟まったような言い方のサナエに言った。
「ただなんだ?まさかコイツらを許せって言うのか?」
「ウミくん。私からのお願いだよ。他のアバズレはともかくモモを許してあげてくれないかな?」
サナエは土下座をした。
「助けてくれた恩人に言いたかねぇが、これに目を瞑るわけにゃいかない。
俺は酷い目に遭わされたんだぜ?許せるわきゃねえだろうが。」
「ウミくんが怒るのはもっともだよ。
私もこんな最低なお願いを辛い思いをしたウミくんに頼んで自分がアホタレだと思ってんだ。
でも、もう一度、このアホを…このアホを更生させるチャンスを恵んでくんないかな?」
サナエは床にグリグリ頭を擦り付けた。
「ふざけんな!更生は逮捕後もできるだろうよ!」
サナエは必死でウミに頼んだ。
「必ずコイツを正しい道に戻すから。私が必ず!だからお願い。」
土下座の姿勢から顔を上げると目から大粒の涙が溢れ床に落ちた。
モモはサナエとウミに言った。
「サナエ先輩…ありがとう。でもモモを許さないで。
モモは悪い事をいっぱいしてきたし、今回もほんとにほんとにやってはいけない事だった。
自分がやった事から逃げちゃいけないと思う。
だからモモを許さないで。警察に通報してほしい。
でないとね、また同じ事を繰り返すよ。
モモは救いようのないアホだから。」
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