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歪んだまま

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「本当にソラがいるんだろうな?」

モモは何も言わず頷いた。

2人は建物に着いて巨大な蜘蛛の巣が張る玄関前に立っている。
門灯は半透明のプラスティックの蓋が半分割れていて電球が剥き出しになっていた。

ウミは警戒し中を確認しようとしたが、分厚いドアに阻まれ仄暗ほのくらい明かりが見える程度だった。

「どうぞ中へ入って。ここにはモモが信用している人達しかいないよ。
みんなで危ない奴らからやっとの思いでソラちゃんを匿ってるんだ。
さあ中へ入って。」

モモはウミの腰に手を当てて扉の向こうへ進むよう促した。

「触るんじゃねぇ!」

モモが腰に添えた手を払いウミはギロッと睨んだ。

「おいヤクザの女、もし嘘だったらどうなるかわかってるか?」

「煮るなり焼くなり好きにしたら?」

「クソっタレめ。」

ウミは吐き捨てるように言い、躊躇いもせずドアを開けた。

カチャ

部屋はカウンター席が5つあり、テーブル席が3席ある。
照明はあるもののドア越しに見た時と変わらず部屋は薄暗い。

「ソラァ!!」

威勢のいい夫は妻を探した。

「誰よこの子?」

体格の良い30代半ばくらいの女が隣にいる左側頭部のみ刈り上げたアバンギャルドな女に言った。

アバンギャルドなヘアースタイルの女は首を横に振って知らないよと話している。

カウンター席に座る金髪を逆立てた女がお客さんでしょ?と2人に答えた。

「ここは一見禁止だよ。悪いけど出て行ってくれない?」

体格の良い女がジョッキ片手に言った。

「うっせえやぁ!ソラはどこにいる?」

「この子なんなのよ?」

突然の事で体格の良い女は動揺している。
ウミの背後にいたモモがカウンターの中へ入って体格の良い女に近づき耳打ちをした。

「おいクソアマども!ヒソヒソ話してんじゃねぇよ!ソラはどこだって聞いてんだ!」

「クソアマなんてひどーい!
ちゃんとネームがあるのよ、ネームが。」

咳払いした後、体格の良い女が言った。

「私はチグサでぇす。よろしくわんこそば!」

名前を告げた後、チグサはジョッキをグイッと豪快に口に運んだ。

「何度も言わせんじゃねぇぞ。
ソラはどこにいるんだって聞いてんだ。早く答えろよ。」

ウミは凄んだ。
声のボリュームが下がった分、かえって殺気を感じさせる。

「ソラちゃんなら奥の部屋にいるよ。」

モモは親指を向けてウミに言った。

「嘘だったらぶっ殺すからな!ヤクザの女!」

狭い空間のなか、ウミは走って部屋へ向かい乱暴にドアノブを回した。

6畳半程度しかない部屋は真っ暗で何も見えなかった。

「…どこにソラがいるんだ?騙したのか?てめえらぁぁぁ!!!」

激怒したウミはまるで雷を操る雷獣らいじゅうと化し、振り返ってモモ達を見た時だった。

バチン

とてつもない衝撃にウミは足がもつれ立っていられなくなり倒れ込んだ。

薄れゆく意識のなか仰向けで見上げるとモモとチグサがニタニタ笑みを浮かべていた。




















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