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歪んだまま

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「あぁ?ソラがどうなってもいいだと!?
てめぇはどういう了見で、んな事言ってんだ?
このスットコドッコイ!」

「だ・か・ら奥さんの身にヤバイ事が起きてるの。」

「俺の調べじゃソラは、そこで宿泊してんだぞ!身にヤバイ事っていってぇなんの事だ?
早く答えやがれ!」

頭にきたウミは早口で捲し立てソラが居るビジネスホテルを指差した。

「教えてあげよっかなあ?どうしよっかな~?」

ギラギラした目つきのモモは金属が擦れるような不快な笑い声をあげた。

「もったいぶってんじゃねえよ!吐けよコラ!
でなきゃ女でも容赦しねえぞ!」

ウミは鬼の形相でモモの襟首を強引に掴み身体を揺さぶっている。

「苦しいよ。離してったら!」

「ヤクザの女!吐かなきゃこのままだぜ?」

「わかった、わかったよ。ゆうよ!だからその手を離してってば。」

ウミが手を離すとモモは前屈みになって咳き込んだ。

「おい女。約束だぞ。ソラの身に何があったか話しやがれ。」

「うん。ゴホッゴホッ。」

首を強く締められて苦しかったが立場的に主導権を握ったとモモは判断し、内心ではほくそ笑んでいた。

「奥さんはね、そこのビジホにはもう居ない。
正式には夕方まで居たって表現が正しいかな。」

サナエから借りたオーバーサイズの白シャツがクシャクシャなってしまったので、手でシワを直そうと伸ばしていた。

モモはソラの居場所なんて知る由もなく、臨機応変にその場に応じて全くのデタラメを述べたにすぎないが、ウミの動きは止まった。

ウミはソラから聞き出した僅かな情報はレストランであるロイヤルホステスの近辺に性風俗店がある事だけだった。

ネットを使いロイヤルホステスがある各店舗をピックアップして見当をつけ、ソラがいる可能性のある店舗へ狙いを定めたにすぎない。

家出人を捜索するうえで100パーセントの確証があるわけでもなく、それどころか地名もない目印もない手書きで殴り書いた粗末な地図を広げて目的地へ旅立つ冒険家になった気分であった。

少ない情報を頼りに探すウミには、妻であるソラが目の前のビジネスホテルにいるかは自身を持ってハッキリとは断言できない弱さがある。

「どういうこった?
まず、てめぇはソラとどんな関係なんだよ。」

「ソラちゃんとモモはね、ネットで知り合った仲なの。
をすれば不安も募るもんでしょ?たっくさん悩んでいたからモモが相談に乗ってあげていたんだ。」

「んじゃあなんだってソラの家まで行って、ソラのお母さんを襲ったんだよ?
相談を持ちかけられるほど、信頼関係がある友人のお母さんを襲うなんざどう考えてもおかしいだろが。」

この時点でモモは話の整合性が取れなくなった。
しかしウミは単純だという事を短い会話の中で確信した。
多少は話が噛み合わなかったとてウミならきっと安っぽい創作でも乗ってくる。モモは思った。

「あれはね、モモが悪かった。でもねモモは怖い人達に脅されていたの…だから仕方なかったのよ!」

質問には瞬時に答えなければさすがに怪しまれる。
頭を猛スピードで回転させたモモは、新たな一手をうってウミを騙しにかかった。
すかさずウミの動揺をさそうべきと思い、"うわぁぁぁ"と声をあげモモは泣いたふりをした。

「モモのした事は許されない。でも、怖かったのよぉ。
モモは大嵐家を襲わなければ殺されたかもしれなかったんだ。」

モモの悪意ある演技でウミは怒りと不安がグチャグチャに入り混じった形相に変わった。

「クソが。ソラに合わせろ!」




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