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だってウミは王子様だもん!
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「張り込み…するか。」
子どもの頃、テレビの再放送で観た刑事ドラマを思い出したウミは、ミカミの尻尾を掴む為に策を講じた。
「善は急げと言いてぇが、その前に準備が必要だ。」
鮮やかな青い髪が乾ききる前に反動をつけて跳ね起きをやって立ち上がり、アパートを飛び出して近所にあるコンビニへ走り出した。
汗だくになってコンビニから帰宅したウミは牛乳、アンパン、カップ麺等を買いだめしており、それらを買い物袋から手際良く冷蔵庫や戸棚に入れていく。
「やっぱし、張り込みするにはこれがマストアイテムだよな。」
額から流れ落ちる汗を腕で拭いながら、ミカミを捕えるのに一歩前進したと思った。
準備は整ったが問題はミカミがアパートにいつ戻ってくるかだ。
隣に住むミカミの郵便受けはハガキやチラシがそのままで、ざっと見ても3日か4日は不在にしている。
今日は木曜日。
土日は休日であるから仕事には支障はない。
じっくりソラの居場所を突きとめる事ができる。
しかし明日の金曜日は平日なので仕事を休まなければならない。
「仮に今日(木曜日)変態野郎がアパートに帰宅しても、ソラの所から戻ってきたわけだからな…。
次にいつ、ソラがいる場所に行くかわからねぇ。
力ずくで居場所を吐かせるって方法もあるが、最悪な場合、変態野郎が被害者づらして俺が警察に捕まっちまう事もあるから下手なまねはできねえしな…。」
これは根気のいる作業になりそうだ。
ウミは冷蔵庫にソラが張り付けたクマのマグネットを見ながら思った。
「ったく、ソラが居場所を教えてくれればすぐに助け出せるのによぉ。
ミカミなんざ、俺がいれば速攻で御用だ。」
ウミは意味もなく冷蔵庫の扉を開けたり閉めたりを繰り返している。
「女ってみんなこんなもんなのか?
ソラしか女を知らねぇから俺にゃわかんね!」
ツチャチャチャチャララ、ツチャチャチャチャララ
「おぅ!?」
無料通話ができるアプリから着信があり、スマホをポケットから取り出した。
「マジかよソラからだ!」
「もしもしウミィ?ウミを愛するソラだよ…。」
「お、おぉ!どうした?もしかすっと居場所を教える気になったのか?」
「ごめんね、それはできないのぉ。ただね私は妻として愛する旦那様の声が聴きたくなっちゃって。」
ウミは呆れて笑ってしまった。
ソラの心が変わり、居場所を伝える電話なのではと思った自分自身を恥じた。
「ハ、ハハ…。そうなんだ。」
「ウミは私と離れて暮らして寂しくない?」
「…最初はバンドの事で頭がいっぱいだったけどさ、おまえがいなくなってからなんちゅうか、物事が上手く回らなくなっちまった。
やっぱソラが隣にいねえと俺はダメみてえだ。」
頬をポリポリ掻きながら素直な気持ちをソラに伝えた。
「ウミィ…ありがとう。ウッウッ、私は愛するウミの妻でいられて幸せだわ。
お願いだから絶対に私の事を捨てないでね…。
じゃってウミィがいないどぉわだしはいんぎでゆけないきゃら…。(だってウミィがいないと私は生きていけないから。)
「あぁ…。」
鼻を啜りながら泣きじゃくるソラの声を聴いたウミは、照れつつもそんなに俺を愛しているならとっとと居場所を教えてくれと思うのであった。
子どもの頃、テレビの再放送で観た刑事ドラマを思い出したウミは、ミカミの尻尾を掴む為に策を講じた。
「善は急げと言いてぇが、その前に準備が必要だ。」
鮮やかな青い髪が乾ききる前に反動をつけて跳ね起きをやって立ち上がり、アパートを飛び出して近所にあるコンビニへ走り出した。
汗だくになってコンビニから帰宅したウミは牛乳、アンパン、カップ麺等を買いだめしており、それらを買い物袋から手際良く冷蔵庫や戸棚に入れていく。
「やっぱし、張り込みするにはこれがマストアイテムだよな。」
額から流れ落ちる汗を腕で拭いながら、ミカミを捕えるのに一歩前進したと思った。
準備は整ったが問題はミカミがアパートにいつ戻ってくるかだ。
隣に住むミカミの郵便受けはハガキやチラシがそのままで、ざっと見ても3日か4日は不在にしている。
今日は木曜日。
土日は休日であるから仕事には支障はない。
じっくりソラの居場所を突きとめる事ができる。
しかし明日の金曜日は平日なので仕事を休まなければならない。
「仮に今日(木曜日)変態野郎がアパートに帰宅しても、ソラの所から戻ってきたわけだからな…。
次にいつ、ソラがいる場所に行くかわからねぇ。
力ずくで居場所を吐かせるって方法もあるが、最悪な場合、変態野郎が被害者づらして俺が警察に捕まっちまう事もあるから下手なまねはできねえしな…。」
これは根気のいる作業になりそうだ。
ウミは冷蔵庫にソラが張り付けたクマのマグネットを見ながら思った。
「ったく、ソラが居場所を教えてくれればすぐに助け出せるのによぉ。
ミカミなんざ、俺がいれば速攻で御用だ。」
ウミは意味もなく冷蔵庫の扉を開けたり閉めたりを繰り返している。
「女ってみんなこんなもんなのか?
ソラしか女を知らねぇから俺にゃわかんね!」
ツチャチャチャチャララ、ツチャチャチャチャララ
「おぅ!?」
無料通話ができるアプリから着信があり、スマホをポケットから取り出した。
「マジかよソラからだ!」
「もしもしウミィ?ウミを愛するソラだよ…。」
「お、おぉ!どうした?もしかすっと居場所を教える気になったのか?」
「ごめんね、それはできないのぉ。ただね私は妻として愛する旦那様の声が聴きたくなっちゃって。」
ウミは呆れて笑ってしまった。
ソラの心が変わり、居場所を伝える電話なのではと思った自分自身を恥じた。
「ハ、ハハ…。そうなんだ。」
「ウミは私と離れて暮らして寂しくない?」
「…最初はバンドの事で頭がいっぱいだったけどさ、おまえがいなくなってからなんちゅうか、物事が上手く回らなくなっちまった。
やっぱソラが隣にいねえと俺はダメみてえだ。」
頬をポリポリ掻きながら素直な気持ちをソラに伝えた。
「ウミィ…ありがとう。ウッウッ、私は愛するウミの妻でいられて幸せだわ。
お願いだから絶対に私の事を捨てないでね…。
じゃってウミィがいないどぉわだしはいんぎでゆけないきゃら…。(だってウミィがいないと私は生きていけないから。)
「あぁ…。」
鼻を啜りながら泣きじゃくるソラの声を聴いたウミは、照れつつもそんなに俺を愛しているならとっとと居場所を教えてくれと思うのであった。
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