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不機嫌なレスポール
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ウミはドラマーのカズとスタジオ入りしていた。
「ちょっと休憩しようぜ。」
「おい、またかよ。さっきの休憩から10分も経ってねえんだぞ。
スタジオ代がもったいねえじゃんよ。」
「すぐ戻るよ。」
カズの話を適当に受け流しウミはギターを置いてドアを開けて外へ出て行った。
「サボったらお前のバカたけぇレスポールをパクっちゃうぞ!」
ゴトン
自販機でコーラを買ったウミは夜風にあたろうとスタジオを出た。
「おかしいな。どうしても集中できねぇ…。」
俯いたウミは半分以上飲んだコーラの缶を口で咥えて自身の指を見ながら心の中で呟いた。
夜風が心地良く、ちょっとした気分転換にはもってこいの気候だった。
パッパー!
至近距離から車のヘッドライトがウミを照らす。
たまらずウミは目を背けた。
「あらあらあら、誰かと思えばそこにいるのはウミ君じゃねーかよ。
いまだにこんなショボイスタジオで練習かい?
ざまねえなあ!」
「…てめえだったか。」
ウミはまるで汚いものを見るかのような目でボソッと呟いた。
「スター候補の俺様にてめえって言葉遣いはねえだろうが。
あの頃とは違って、おまえみたいな一般人が気安く口を利いていい存在じゃねえんだぞ。」
ウミを挑発した男はかつてのバンドメンバーでギタリストだった。
男はフェラーリ812スーパーファストに乗っている。
「こいつ(フェラーリ)はニシ先生のお下がりだけどよ、この娘は俺の新品だ。
彼女の前でこんな言い方はよくないが、この娘で6人目なんだぜ。
ウミと違って1人の女とだけヤるなんざ、退屈でよ。」
助手席に乗った女はグラマーな美人だった。
ギタリストに髪を撫でられている。
ウミは車や女より、ニシを先生と言っているかつてのメンバーに呆れてしまった。
「ニシセンセイだぁ?お前はロックを捨てたんだな。」
「これがロックだろ?なにをとち狂った事を言いやがる。
俺はおまえのように作曲はできねえし、テクもない。
だが一点だけお前が持ち合わせていない能力がある。
それは金を稼ぐ能力だよ。
おまえはいつまで経っても貧乏なままじゃねえか。
軽トラに乗ってんだっけ?しかもボロいんだよな。」
隣に座る女の肩を抱きながらウミに言った。
「確かに俺は金はねえが、お前と違ってロックのアティテュードはあるんだ。
おめえにはそれが一切ねえな。
過去にお前なんぞとバンドを組んでいたテメェが恥ずかしいぜ。
今のお前はニシの支配下に置かれて粋がっているだけのただのガキバンドの一員に過ぎねえ。
情けねえ話だ。」
長く伸ばした髪を撫でつけたあと、ウミを見下しながら言った。
「勝ち組の生き方はルーザーのお前にはわからんだろうよ。」
「ねぇ、もう車出してよ。」
体格とは裏腹にグラマーな女が幼稚な口調でダダをこねて呟いている。
「あぁ、そうだな。いつまでもこんな所に居たんじゃ"貧乏ウィルス"に感染しちゃうもんな。
夜は色々とお楽しみが盛りだくさんだ!
こんなバカに構っている場合じゃねえ!」
かつてのバンドメンバーは高級車を走らせ夜の帳へ走り抜けて行った。
「ちょっと休憩しようぜ。」
「おい、またかよ。さっきの休憩から10分も経ってねえんだぞ。
スタジオ代がもったいねえじゃんよ。」
「すぐ戻るよ。」
カズの話を適当に受け流しウミはギターを置いてドアを開けて外へ出て行った。
「サボったらお前のバカたけぇレスポールをパクっちゃうぞ!」
ゴトン
自販機でコーラを買ったウミは夜風にあたろうとスタジオを出た。
「おかしいな。どうしても集中できねぇ…。」
俯いたウミは半分以上飲んだコーラの缶を口で咥えて自身の指を見ながら心の中で呟いた。
夜風が心地良く、ちょっとした気分転換にはもってこいの気候だった。
パッパー!
至近距離から車のヘッドライトがウミを照らす。
たまらずウミは目を背けた。
「あらあらあら、誰かと思えばそこにいるのはウミ君じゃねーかよ。
いまだにこんなショボイスタジオで練習かい?
ざまねえなあ!」
「…てめえだったか。」
ウミはまるで汚いものを見るかのような目でボソッと呟いた。
「スター候補の俺様にてめえって言葉遣いはねえだろうが。
あの頃とは違って、おまえみたいな一般人が気安く口を利いていい存在じゃねえんだぞ。」
ウミを挑発した男はかつてのバンドメンバーでギタリストだった。
男はフェラーリ812スーパーファストに乗っている。
「こいつ(フェラーリ)はニシ先生のお下がりだけどよ、この娘は俺の新品だ。
彼女の前でこんな言い方はよくないが、この娘で6人目なんだぜ。
ウミと違って1人の女とだけヤるなんざ、退屈でよ。」
助手席に乗った女はグラマーな美人だった。
ギタリストに髪を撫でられている。
ウミは車や女より、ニシを先生と言っているかつてのメンバーに呆れてしまった。
「ニシセンセイだぁ?お前はロックを捨てたんだな。」
「これがロックだろ?なにをとち狂った事を言いやがる。
俺はおまえのように作曲はできねえし、テクもない。
だが一点だけお前が持ち合わせていない能力がある。
それは金を稼ぐ能力だよ。
おまえはいつまで経っても貧乏なままじゃねえか。
軽トラに乗ってんだっけ?しかもボロいんだよな。」
隣に座る女の肩を抱きながらウミに言った。
「確かに俺は金はねえが、お前と違ってロックのアティテュードはあるんだ。
おめえにはそれが一切ねえな。
過去にお前なんぞとバンドを組んでいたテメェが恥ずかしいぜ。
今のお前はニシの支配下に置かれて粋がっているだけのただのガキバンドの一員に過ぎねえ。
情けねえ話だ。」
長く伸ばした髪を撫でつけたあと、ウミを見下しながら言った。
「勝ち組の生き方はルーザーのお前にはわからんだろうよ。」
「ねぇ、もう車出してよ。」
体格とは裏腹にグラマーな女が幼稚な口調でダダをこねて呟いている。
「あぁ、そうだな。いつまでもこんな所に居たんじゃ"貧乏ウィルス"に感染しちゃうもんな。
夜は色々とお楽しみが盛りだくさんだ!
こんなバカに構っている場合じゃねえ!」
かつてのバンドメンバーは高級車を走らせ夜の帳へ走り抜けて行った。
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