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ソラが女子高校生だった頃。宗成の凶行

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「宗成!!!」

突如、ウミが宗成の部屋に雪崩れ込んできて、不意打ちのパンチを顔面に食らわせた。

「ギャァ!!」

宗成が四つん這いになっている時、頭部に強烈な蹴りをお見舞いした。

少し遅れてオガタとマキも宗成の部屋へやってきた。

かつらはベッドサイドに上半身を預けた状態のまま、振り返ってこちらを見ている。

「かつらさんの身体が痣だらけじゃないか!おのれ宗成ぃぃぃ!」

オガタは倒れ込んだ宗成に鉄槌を振り落とすかの如く蹴りを何度も入れている。

「ヒギャァ!助けてぇ!!」


その間にウミはベッドで横たわるソラの元へかけ寄った。

「ソラ!!俺だウミだ!!」

ソラの上半身を両手で抱き起こした。

「シュゴ…ウミィ…硬い棒?でぶたれて痛くない?」

小さな口をすぼませ、ゆっくりと微かな声で話した。

ウミは武装をしたままでは息苦しいと思い武装を全て外した。

「おまえってやつは、俺の心配をしている場合かよ。」

ソラを力いっぱい抱きしめた。

「ウミィ…ありがとう。大好きだよぉ。」

不眠症を患ってはいないソラに投与した睡眠薬が宗成の予想より早く効き目が切れたが、ソラは副作用で意識が朦朧としている。

部屋の外にいた若い家政婦が言った。

「旦那様がお帰りになられました。」

「父さんか。ククク…これで貴様らも終わりだ。」

「まだ生意気な口をききやがるんだな。」

優しくソラを横たわらせて立ち上がり、ウミは脳天に踵落としを繰り出した。

ドスン!

「雑魚が!痙攣してらぁ。」

踵落としを見た若い家政婦は顔面が蒼白している。

大勢が集まり修羅場と化した部屋に宗成とかつらの父親がやってきた。

「お父さん…。」

かつらが声をかけた。

「どうしちまっただぁ?かつらちゃん。
めんこい顔も美しいパイオツも真っ赤になってるっぺ?」

若い家政婦とオガタが丁寧に質問に答えた後、マキ、ムライ、そしてウミが方言を使う父親に今までの事を詳細に説明した。

「おわー。宗成は悪党だべさぁ。オラはあらゆる噂をされてるけどもぉ、悪りぃ事はした事ないっぺよ。
嘘でないっぺ。
なぜだか世界中に渦巻く陰謀の半分がオラがした事になってるから頭にくるっぺさ。
ところで、その宗成が誘拐した娘っ子はどこさいる?」

「兄さんに強制的に連れられてきた大嵐さんならここよ。」

全裸のかつらは乳房と鼠蹊部そけいぶを両手で隠しながら言った。

「この娘が大嵐さんだべがー!めんこい娘っ子だっぺー!
こりゃ天からの贈り物だべさ!
こんな天使のような娘っ子さ、宗成は暴力を振るった事は許されないっぺ!」

「おっさん。コイツは権力者であるアンタの息子だからってやりたい放題なんだぜ?
しっかり責任を取らせてくれよ。」

「宗成には多くの者を傷つけた罪を償わせるっぺよ。
こんだけ酷い事をしたから、オラが最高の科学者と共同開発している装置の実験台になってもらうっぺ。」

「実験?なんの実験だ?」

「刑務所では更生できない凶悪な犯罪者でも、この装置を使えば真人間になる。
ただし、失敗するとどエライ事になるっぺ。」

「エライ事だぁ?」

「んだ!脳細胞が死滅して人格崩壊を起こすど廃人になるだ。廃人になれば、元には戻らないっぺ。
この装置はまんだ実用化に程遠いがら、成功は難しいべな。
オラはけんど、倫理的に大問題だっぺ。なかなか社会は許してくれないべさ。
んでも、宗成みでえなドラ息子なら世のため、人のため、科学の発展のため、役だってもらうべ。」

ウミを含む、かつら、オガタ、マキ、ムライは思った。

「人体実験をしたい」と発言したこのおっさんにまつわる恐ろしい噂は全てが事実なのではと。

一方、ウミに抱かれた事で安心したソラは再び眠りに落ちていた。

「ウミィ…。」


























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