上 下
108 / 275
ソラが女子高校生だった頃。宗成の凶行

107

しおりを挟む
「アイツの親はとんでもねぇ権力者だったわけか。だとしてもそんなもん俺には関係ねえけどな。」

「なんだ君は?」

「この子は宗成に怪我を負わされていたので手当をした子です。」

養護教諭が校長に答えた。

「虚勢を張ったところで君に何ができる?」

校長は冷たく言い放った。

「うるせえんだよ。老ぼれは黙ってろ!俺はソラを助けに行く。権力に屈したおまえらヘタレはブルブル震えてクソでもたれてやがれ!」

ウミは保健室のドアを乱暴に開けて出て行った。

「待たんか!この命知らずめ!」

校長は「もう私は知らん」と皆の前で語気を強めた。

廊下を走っていると、後ろからマキが追いかけてくる。

「待ちな!待ちなよって!アンタ、彼女がどこに連れて行かれたか知ってんのかい?」

「おまえは知ってるのか?」

「知ってるから呼んだのよ。」

「早く言えよ!ソラはどこにいんだよ!?」

ウミはマキに怒声をあげた。

「あたしと駐輪場にきな!宗成のクソが住む家にアンタを送ってあげる。」

(駐輪場に到着)

「おまえ、カワサキのニンジャに乗ってんのか。」

「兄貴から貰ったお下がりよ。それよりほら、メットだよ。早く彼女んとこ行きたいだろ?乗んな。」

ウミはソラを救出する為、マキの単車で砂城院宗成の屋敷へ向かった。

「おまえよ、宗成側の人間だろ?なんで俺の味方すんだ?」

赤信号で停止している際、タンデムシートに跨るウミはマキに聞いた。

「宗成とは一応はトモダチだよ。だったと言った方がいいか。
あたしはアンタが好きだったから、それを知られた事で宗成から声がかかったんだ。
そんで校門付近で待ち伏せだ。
知らねえゴリラみたいな奴らもいて、いきなりアンタと喧嘩だろ?
あたしゃ、こんな展開になるとは夢にも思わなかったよ。
アンタの事、宗成から紹介してもらうだけだと思ってたんだからさ。」


信号機は青に変わりマキはバイクを発進させた。

「ちゃんとお姉ちゃんに掴まってな!」



****


「オガタさん、これはどういう事なの?」

手錠をかけられたソラを見て不審に思った家政婦は、かつらのお抱えドライバーに聞いた。

「見ての通り…非道な宗成による誘拐事件だ。」

「えぇ、誘拐!?」

若い家政婦は両手を口元に添えて驚きを隠せずにいる。

「あなたはまだ砂城院家に住み込みで働き始めたばかりでわからないだろうから教えてあげよう。
ここは世間の常識なんぞ通用しない。
世界的な財閥であるにも関わらずね。いや世界的な財閥だからこそかもしれない。
君はまだ若いのだから、見切りをつけて新しい職場を探した方がいい。」


黒いスーツを着たオガタは革靴の音をコツコツ鳴らして運転していたリムジンへ戻った。


「ちょっと?」

「はい?なんですか?かつらさん。」

全裸のかつらは家政婦に話しかけた。

「兄さんがまた何かをやらかしたみたいね?」

「実は宗成さんが同じ姫君学院の後輩に当たる、大嵐ソラという名前の女子生徒を手錠をかけた状態で砂城院家に連れてきたのです。
オガタさんによれば"誘拐事件"だと…。」

「大嵐ソラさんですって!!」



























しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

50代後半で北海道に移住したぜ日記

江戸川ばた散歩
エッセイ・ノンフィクション
まあ結局移住したので、その「生活」の日記です。

ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編の予定&完結まで書いてから投稿予定でしたがコ⚪︎ナで書ききれませんでした。 苦手なのですが出来るだけ端折って(?)早々に決着というか完結の予定です。 ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいですm(_ _)m *・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・* 顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。 周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。 見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。 脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。 「マリーローズ?」 そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。 目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。 だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。 日本で私は社畜だった。 暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。 あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。 「ふざけんな___!!!」 と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

死に役はごめんなので好きにさせてもらいます

橋本彩里(Ayari)
恋愛
フェリシアは幼馴染で婚約者のデュークのことが好きで健気に尽くしてきた。 前世の記憶が蘇り、物語冒頭で死ぬ役目の主人公たちのただの盛り上げ要員であると知ったフェリシアは、死んでたまるかと物語のヒーロー枠であるデュークへの恋心を捨てることを決意する。 愛を返されない、いつか違う人とくっつく予定の婚約者なんてごめんだ。しかも自分は死に役。 フェリシアはデューク中心の生活をやめ、なんなら婚約破棄を目指して自分のために好きなことをしようと決める。 どうせ何をしていても気にしないだろうとデュークと距離を置こうとするが…… まったりいきます。5万~10万文字予定。 お付き合いいただけたら幸いです。 たくさんのいいね、エール、感想、誤字報告をありがとうございます!

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ
ファンタジー
主人公の沖 紫惠琉(おき しえる)は会社からの帰り道、不思議な店を訪れる。 その店でいくつかの品を持たされ、自宅への帰り道、異世界への穴に落ちる。 落ちた先で紫惠琉はいろいろな仲間と穏やかながらも時々刺激的な旅へと旅立つのだった。

処理中です...