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ソラが女子高校生だった頃。大嵐家へようこそ!
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「お話をしていたらあっという間に着いたわ。ここが私んちだよ。」
「ええ、ここ?」
ソラの指差した家はグレーの三角屋根が目立つ二階建てのモダンな北欧風の家だった。
「そうだよ。変かな?」
「まさか!すごく立派だなって思ってさ。」
ウミは立ち止まった。
「どうしたの?早く入ろうよ。」
「やっぱ俺、帰るよ。泊まらせてもらおうなんて図々しいぜ。
しかもなんの連絡もなしにいきなり家に上がろうなんざ失礼だ。」
「大丈夫!ウチはそういう堅苦しい家じゃないから。」
「俺には無理だ。」
ウミはソラに背を向けた。
「あの、オシッコ臭くてメチャクチャ荒らされた小屋へ戻るの?
勝手に住んでたんだから、そのうち学校にバレて警察に捕まるんじゃない?」
雨はいっそう強くなり、けたたましい雨音が家の屋根や道路から鳴り響く。
「ウミにはもう帰る場所はないの…。私のそばにいるしかないんだよぉ。」
ソラは少し意地悪な発言だったと自覚している。
無言のウミはソラが住む家の玄関や窓を見る。
ラップサイティングされた外壁に暖かみのある白い壁、大きな窓から灯りが見えて安らぎの空間になっている。
「早くウチに入ろうよ。」
手を引っ張ってウミを玄関前まで連れて行った。
ウミは気まずい気持ちが無くなる事はなかったが、優しそうな家庭に惹かれて根負けした形だ。
淡いグリーンのドアの前に立ち、鍵を開けてなかへ入った。
「ただいま!」
奥から「お帰りなさい。」と母の声がスリッパを履いた足音とともに聞こえてきた。
「ママ!」
「遅かったから心配、あら、どなた?」
「あの、こんばんは。神園ウミです…。」
「私のね…」
一瞬、ソラは友達と言うべきか彼氏と言うべきか迷ったが、願望を優先した。
「彼氏だよ。」
「あらま彼氏だったのね!どおりで仲良しオーラが出てたもの。」
ソラの母は娘の彼氏を見た。
「雨でびしょ濡れじゃない!そのままだと風邪を引くわ!早く上がってちょうだい。さぁさぁ!」
「あっ、すみません、お邪魔致します。」
「ねぇ、大丈夫でしょ?」
ソラはウミの目を見て微笑んだ。
「ウミ君、すぐお風呂に入りなさい。そんな格好をしていたら絶対に風邪を引くに決まってるわ。
お姉ちゃん?アンタもよ。」
母は急いで別室から持ってきたバスタオルを渡して浴室へ向かわせた。
「ありがとうございます。」
暖かい風呂に入れるのは嬉しかったが、ソラ達の優しさに触れて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「あっいけない!」
母は口元に手を当てた。
「ママどうしたの?」
「突然の来訪だったから、なんの準備もしていないの。」
「でも足りないものなんかあったかな?」
ソラは人差し指を頬に当てて考えた。
「あるわよ!」
「なあに?」
「男性の着替えがないわ。ズブ濡れの制服のままでは可哀想よ。身長の高いウミ君ではパパのサイズが合わないし、それに下着もないわよ。」
「あっそうね。」
「ウミ君も、お風呂上がりなのに雨で濡れたパンツなんか気持ち悪くて履きたくないはずだわ。」
「シュゴー、下着をパパから借りる事もできないし。」
ソラが言った。
「私は気にしないけれど、ウミ君はパンツを履かずオチンチンを出したままここに居るのは嫌でしょ?」
「なっ!?ママは気にしてよ!」
武装の下、ソラは母の発言に腹を立てて怖い顔になっている。
「いや~ん。」
母はクスッと笑った。
「シュゴー!!ママ!ふざけないで!私の彼氏だよ!」
「ふふふ。冗談よ。コンビニまで行って男性用の下着とパジャマを買ってきてあげて。」
ソラに現金を渡した。
「気をつけて行くのよ。」
「フン!」
「ええ、ここ?」
ソラの指差した家はグレーの三角屋根が目立つ二階建てのモダンな北欧風の家だった。
「そうだよ。変かな?」
「まさか!すごく立派だなって思ってさ。」
ウミは立ち止まった。
「どうしたの?早く入ろうよ。」
「やっぱ俺、帰るよ。泊まらせてもらおうなんて図々しいぜ。
しかもなんの連絡もなしにいきなり家に上がろうなんざ失礼だ。」
「大丈夫!ウチはそういう堅苦しい家じゃないから。」
「俺には無理だ。」
ウミはソラに背を向けた。
「あの、オシッコ臭くてメチャクチャ荒らされた小屋へ戻るの?
勝手に住んでたんだから、そのうち学校にバレて警察に捕まるんじゃない?」
雨はいっそう強くなり、けたたましい雨音が家の屋根や道路から鳴り響く。
「ウミにはもう帰る場所はないの…。私のそばにいるしかないんだよぉ。」
ソラは少し意地悪な発言だったと自覚している。
無言のウミはソラが住む家の玄関や窓を見る。
ラップサイティングされた外壁に暖かみのある白い壁、大きな窓から灯りが見えて安らぎの空間になっている。
「早くウチに入ろうよ。」
手を引っ張ってウミを玄関前まで連れて行った。
ウミは気まずい気持ちが無くなる事はなかったが、優しそうな家庭に惹かれて根負けした形だ。
淡いグリーンのドアの前に立ち、鍵を開けてなかへ入った。
「ただいま!」
奥から「お帰りなさい。」と母の声がスリッパを履いた足音とともに聞こえてきた。
「ママ!」
「遅かったから心配、あら、どなた?」
「あの、こんばんは。神園ウミです…。」
「私のね…」
一瞬、ソラは友達と言うべきか彼氏と言うべきか迷ったが、願望を優先した。
「彼氏だよ。」
「あらま彼氏だったのね!どおりで仲良しオーラが出てたもの。」
ソラの母は娘の彼氏を見た。
「雨でびしょ濡れじゃない!そのままだと風邪を引くわ!早く上がってちょうだい。さぁさぁ!」
「あっ、すみません、お邪魔致します。」
「ねぇ、大丈夫でしょ?」
ソラはウミの目を見て微笑んだ。
「ウミ君、すぐお風呂に入りなさい。そんな格好をしていたら絶対に風邪を引くに決まってるわ。
お姉ちゃん?アンタもよ。」
母は急いで別室から持ってきたバスタオルを渡して浴室へ向かわせた。
「ありがとうございます。」
暖かい風呂に入れるのは嬉しかったが、ソラ達の優しさに触れて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「あっいけない!」
母は口元に手を当てた。
「ママどうしたの?」
「突然の来訪だったから、なんの準備もしていないの。」
「でも足りないものなんかあったかな?」
ソラは人差し指を頬に当てて考えた。
「あるわよ!」
「なあに?」
「男性の着替えがないわ。ズブ濡れの制服のままでは可哀想よ。身長の高いウミ君ではパパのサイズが合わないし、それに下着もないわよ。」
「あっそうね。」
「ウミ君も、お風呂上がりなのに雨で濡れたパンツなんか気持ち悪くて履きたくないはずだわ。」
「シュゴー、下着をパパから借りる事もできないし。」
ソラが言った。
「私は気にしないけれど、ウミ君はパンツを履かずオチンチンを出したままここに居るのは嫌でしょ?」
「なっ!?ママは気にしてよ!」
武装の下、ソラは母の発言に腹を立てて怖い顔になっている。
「いや~ん。」
母はクスッと笑った。
「シュゴー!!ママ!ふざけないで!私の彼氏だよ!」
「ふふふ。冗談よ。コンビニまで行って男性用の下着とパジャマを買ってきてあげて。」
ソラに現金を渡した。
「気をつけて行くのよ。」
「フン!」
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