上 下
96 / 275
ソラが女子高校生だった頃。大嵐家へようこそ!

95

しおりを挟む
「お話をしていたらあっという間に着いたわ。ここが私んちだよ。」

「ええ、ここ?」

ソラの指差した家はグレーの三角屋根が目立つ二階建てのモダンな北欧風の家だった。

「そうだよ。変かな?」

「まさか!すごく立派だなって思ってさ。」

ウミは立ち止まった。

「どうしたの?早く入ろうよ。」

「やっぱ俺、帰るよ。泊まらせてもらおうなんて図々しいぜ。
しかもなんの連絡もなしにいきなり家に上がろうなんざ失礼だ。」

「大丈夫!ウチはそういう堅苦しい家じゃないから。」

「俺には無理だ。」

ウミはソラに背を向けた。

「あの、オシッコ臭くてメチャクチャ荒らされた小屋へ戻るの?
勝手に住んでたんだから、そのうち学校にバレて警察に捕まるんじゃない?」

雨はいっそう強くなり、けたたましい雨音が家の屋根や道路から鳴り響く。

「ウミにはもう帰る場所はないの…。私のそばにいるしかないんだよぉ。」

ソラは少し意地悪な発言だったと自覚している。

無言のウミはソラが住む家の玄関や窓を見る。

ラップサイティングされた外壁に暖かみのある白い壁、大きな窓から灯りが見えて安らぎの空間になっている。

「早くウチに入ろうよ。」

手を引っ張ってウミを玄関前まで連れて行った。
ウミは気まずい気持ちが無くなる事はなかったが、優しそうな家庭に惹かれて根負けした形だ。

淡いグリーンのドアの前に立ち、鍵を開けてなかへ入った。

「ただいま!」

奥から「お帰りなさい。」と母の声がスリッパを履いた足音とともに聞こえてきた。

「ママ!」

「遅かったから心配、あら、どなた?」

「あの、こんばんは。神園ウミです…。」

「私のね…」

一瞬、ソラは友達と言うべきか彼氏と言うべきか迷ったが、願望を優先した。

。」

「あらま彼氏だったのね!どおりで仲良しオーラが出てたもの。」

ソラの母はを見た。

「雨でびしょ濡れじゃない!そのままだと風邪を引くわ!早く上がってちょうだい。さぁさぁ!」

「あっ、すみません、お邪魔致します。」

「ねぇ、大丈夫でしょ?」

ソラはウミの目を見て微笑んだ。

「ウミ君、すぐお風呂に入りなさい。そんな格好をしていたら絶対に風邪を引くに決まってるわ。
お姉ちゃん?アンタもよ。」

母は急いで別室から持ってきたバスタオルを渡して浴室へ向かわせた。

「ありがとうございます。」

暖かい風呂に入れるのは嬉しかったが、ソラ達の優しさに触れて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「あっいけない!」

母は口元に手を当てた。

「ママどうしたの?」

「突然の来訪だったから、なんの準備もしていないの。」

「でも足りないものなんかあったかな?」

ソラは人差し指を頬に当てて考えた。

「あるわよ!」

「なあに?」

「男性の着替えがないわ。ズブ濡れの制服のままでは可哀想よ。身長の高いウミ君ではパパのサイズが合わないし、それに下着もないわよ。」

「あっそうね。」

「ウミ君も、お風呂上がりなのに雨で濡れたパンツなんか気持ち悪くて履きたくないはずだわ。」

「シュゴー、下着をパパから借りる事もできないし。」

ソラが言った。

「私は気にしないけれど、ウミ君はパンツを履かずオチンチンを出したままここに居るのは嫌でしょ?」

「なっ!?ママは気にしてよ!」

武装の下、ソラは母の発言に腹を立てて怖い顔になっている。

「いや~ん。」

母はクスッと笑った。

「シュゴー!!ママ!ふざけないで!私の彼氏だよ!」

「ふふふ。冗談よ。コンビニまで行って男性用の下着とパジャマを買ってきてあげて。」

ソラに現金を渡した。

「気をつけて行くのよ。」

「フン!」








































しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

ロザリーの新婚生活

緑谷めい
恋愛
 主人公はアンペール伯爵家長女ロザリー。17歳。   アンペール伯爵家は領地で自然災害が続き、多額の復興費用を必要としていた。ロザリーはその費用を得る為、財力に富むベルクール伯爵家の跡取り息子セストと結婚する。  このお話は、そんな政略結婚をしたロザリーとセストの新婚生活の物語。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...